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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 28

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休ませないと白いの回復しない?

 ユニバンス王国・北部ドラグナイト家別荘



「リグ~」

「ん」

「んふふ」


 ダメだ。もうこの人は僕らの話を真剣に聞いていない。それだけは理解した。


 リグを背後から抱きしめるフレアさんは、リグの言葉に全肯定だ。


「兄さま」

「何かな?」

「人ってひょうたんを前にするとここまでダメになるのね」

「多分違うと思うぞ。マジで」


 ぶっちゃけその理論で行くと、君も十分に終わっている人間の部類だけどね?


 がっちり宝珠を構えてノイエたちを撮影している悪魔も終わっている人間だ。つまりこの場で真面目なのは僕だけだということだ。頑張らねばならん。

 僕だけでも真面目を維持しなければならない。


「リグ」

「ん~」


 話しかけると温泉で蕩けていたリグがこちらを見る。


 良かった。蕩けているけど君はまだ真面目な……寝てないよね? そのトロンとした感じの目に不安を覚えるんだけど?


「ちょっとフレアさんに正気に戻って欲しいんだけど?」

「正気だよ」

「うっそだ~」


 リグの返事に僕の何かが崩壊寸前だ。こんなダメダメなフレアさんなんて僕は知らない。というかキャラ崩壊が発生するから勘弁して欲しい。フレアさんよりも先に僕の方がだけど。


「可愛いモノを前にするとフレアは昔からこんな感じ」

「……」


 言ってて気づいていますか? リグさんや?


「それってつまりリグが可愛いモノ扱いされているってことだけど良いの?」

「うん。楽ができるから」

「……」


 受け入れていやがる。リグがこんな怠惰な人間だったなんて……知ってたよこん畜生っ!


 このひょうたんは基本怠惰だ。やる気を見せるのは重傷者が目の前に居る時だ。ここが重要。重体ではやる気が半減する。重傷がベストだ。他人の傷を見て喜ぶひょうたんだ。Sの意味ではなくてその傷を癒す意味でだ。


 落ち着いて考えるとリグの好みっていろんな意味で紙一重? あぶなっ!


「アイルも優しかったけど、部屋の掃除とかしてあげないとだからフレアの方が楽」


 さらっと追い打ちで毒を含まないで! その言葉は絶対にあとで先生が怒るやつだよ?


「何よりフレアたちはお菓子くれた」


 それはたぶん先生もくれたよね?


「アイルが?」


 あれ? どうしてだろう? 否定ができない僕が居る。


「アイルはフレアたちが持ってきたお菓子を部屋に持って帰って腐らせてた」

「……」

「掃除と臭い取りが大変だった」


 苦労していたんだな。


「だからフレアは良い。楽ができて」


 うんうん。ただこのままだと君がダメ人間になってしまいます。僕はダメ人間ができる過程を見つめていられるほど人間はできていません。できた人間ならむしろこのような場面を逃さないだろう。


「ただ真面目な話がしたかったんだけど」

「こんな場所で?」

「……」


 トロンと蕩けたリグの目を見て気づく。


 僕が間違っていたのか?


 そうか。ここは温泉であった。温泉で真面目なトークをする方が間違っているのか?


「僕が間違っていました」

「うん」


 大きく頷いてリグはフレアさんの胸に後頭部を預けて……本当に温泉を満喫しているな。僕も温泉を満喫するべきである。そろそろ帰宅することになるだろうからな。


「なん」

「ん」

「……」


 狙いすましたかのように改めて左右から柔らかい圧力が。


 君たち聞いてましたか? 僕は温泉を満喫しようと思っているんです。温泉のお湯を楽しむのです。君たちが望んでいるのは温泉じゃなくても良いあれだよね?

 こらこらノイエ。その手を放しなさい。ファナッテがガン見しているからっ!


「分かった」


 分かってくれたかお嫁さん。


「ここでなければ良い」


 そうは言っていない。


 けれど動き出したノイエが止まらない。僕を脇に抱えるとファナッテも脇に抱える。移動する気満々だね? だったらせめて体を拭かせて欲しいです。


 はい? どうせまた戻ってくる? どうせ汚れる?


 否定ができない自分が居るんですけどね!


「金髪の人」

「はい。隊長」


 歩き出そうとしたノイエがフレアさんに話しかけた。

 問いかけられ反射的に返事をしたのであろうフレアさんは、自分の返しに何とも言えない表情を浮かべていた。


 まあフレアさんはずっとノイエの副隊長をしていたしね。それが普通だったんだろうな。


「ごはん。お肉たくさん」

「分かりましたノイエ様。準備するように手配しておきます」


 メイド長として返事をしてくる相手にノイエは軽く頷くと僕らを抱えて歩き出した。


 行先は寝室ですか? さっきまでファナッテと過ごしていたんですが……はい? 仲間外れではありませんよノイエさん。はい? 仲間外れじゃないならファナッテにしたことを全部するの?

 あ~。うん。それは勘弁していただけないでしょうか? 僕の体力が持ちません。


「ダメ。頑張れ」

「はい」


 お嫁さんの圧に負け僕は首を垂れた。


「あ~もうっ! 現場を分けないでよっ!」


 などと叫ぶ悪魔に対してマジでイラっとしたよ。マジで。




 頑張った。感動した。ありがとう。


 リビングのソファーで完全脱力した僕の手を取るのは医者のリグだ。怠惰でも医者だ。


「ノイエ」

「はい」

「やりすぎ」


 その通りです。我が主治医! ぶっちゃけ僕の主治医は君の義父ですが、愛娘であれば同じと言ってもいいはずだ。よって問題ない。医学的な見地からノイエを叱ってあげて。


「ちゃんと休ませないとダメ」

「はい」

「ちゃんと眠らせないとダメ」

「はい」

「ごはんもちゃんと食べさせること」

「はい」


 背筋を伸ばしたリグがノイエを叱りつけている。


 その様子がよほど珍しいのかこの場に居るメイドさんたちが……何故だろう? 彼女らの視線に尊敬というか羨望のあれが混ざっている感じに見えるのは?

 確かに身長差からリグは背筋を伸ばして自分よりも背の高いノイエを叱っている。シュンとしたノイエは首を垂れているがそれでも2人の身長差は埋まらない。だからかリグはますます胸を張って……これか。やはりそれか? 君たちは誰のどんなひょうたんを見つめているのかね?


 あれは非売品で特注品のこの世に1つだけのひょうたんだ。何よりどんなに望んでも彼女のひょうたんを手にすることはできない。あの発育はチートのレベルだ。


 ばるんばるんと胸を振るわせ妹を叱るリグの様子に……挫けないのは凄い。流石ハルムントのメイドたちだ。うちのメイドを見なさい。コロネとチビ姫なんて部屋の隅で膝を抱えている。チビ姫はウチのメイドではないけどね。まあある意味ウチの家族だから問題ない。

 そんな2人に対してユリアの慰め効果など皆無だ。何故なら慰めている彼女自身が貧乳だからだ。


 それは良い。それは良いけどフレアさん? 前王妃を魔法で全力拘束している意味は? はい? このまま開放するとリグのひょうたんが危ない?


 あれは人を狂わせるひょうたんか。確かに。狂っている代表例としてうちの馬鹿な悪魔憑きが居るしな。鼻息荒くして僕の隣でリグのことを撮影している。


 はい? 叱られているノイエを撮影しているの? 何で? 確かにレアだけど……はい? あの姿を見てキュンキュンする姉が居る?

 誰よその変態は? 後で僕がクレームを……はい? 大多数?


 クレームは無かった方向で!


「……休ませないと白いの回復しない?」

「そう」


 僕が別方向に視線と思考を向けている隙にリグとノイエの会話が変化していた。


「豚肉とかチーズが良いと聞いた。あと木の実」

「金髪の人」

「はいノイエ様。明日からアルグスタ様のご飯はそのように」

「ちょっと待て! 何の話だ!」


 知らない間に僕のご飯が偏ったメニューに!


「何って」


 リグの視線が僕の股間を見る。いやらしい感じではなくサンプルでも見るかのような冷静さだ。


「ノイエが最近出る量が少ないと」

「違うからね? そもそも毎日たくさん出してたら回復が追い付かないからね?」

「それもそうか」


 おい医者よ? もしかして怪我とかじゃないから結構いい加減な受け答えとかしているんじゃないだろうな?


「そんなことはない」


 僕から顔ごと視界をそらしてはっきり言い切るな。そのひょうたんを揉んで挟んで叩いて遊ぶぞ?


「どうぞ」

「……」


 嬉しそうにファナッテが僕の前にやってきて自分の胸を見せつけてくる。


 これこれファナッテさん? 君の場合、動くと周りがざわっとするからもう少しあっちで大人しくしてようか?


「ぷー」


 拗ねた。

 頬を膨らませてファナッテが拗ねた。


 というか場がカオスすぎゃしないか? マジで?




© 2024 甲斐八雲

 場がカオスになってきたので…次回はちょっと作者が動きますw

 困ったときの刻印さん。お願いします!


 多分真面目な話をしてそろそろ温泉回を閉じる予定です

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