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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 28

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私の娘よ

 ユニバンス王国・北部ドラグナイト家別荘



「あは……あはは……あは……」


 全裸の悪魔が膝を抱え虚ろな目で笑っている。


 傍から見ても精神的に逝ってしまった人にしか見えない。

 時間をかけてたっぷりねっとりと料理した結果、世に不幸をまき散らす悪魔がおとなしくなった。


「穢れちゃったよ……ポーラ穢れちゃったよ……」


 ヤドカリさんたちに対して失礼な?


 見なさい。うちの子たちを。


「これも食べるです?」

「みたい」


 桶の中に餌を入れるチビ姫とコロネが居る。


 餌というか後のことを考えて野菜の皮を刻んだ物だが、空腹状態のヤドカリさんたちはモリモリと食べている様子を観察中だ。


 これこれ君たち? それ以上のエサは厳禁だからね?


『何故?』って顔でこっちを見ない。

 その子たちは最終的に宿を外されて油でこんがりが決定しているからね。具体的に言うと多分今夜辺りのノイエの夕飯前のおやつになると思われます。


 桶の前に立って庇おうとしない。『この子は違うの。大丈夫なの』って感じを漂わせない。


 ある意味で大丈夫だけど、その理由は食料だけだからね? 何よりそれを庇ったところでどうする? 飼うのか? 可愛いのは最初だけだぞ? 途中から色々と反抗して可愛げがなくなるんだからね?

 何よりそれは自然の野生種だから、飼うとなると野外だよ? 池とか作ってそこで飼わないと駄目だけど、こいつらは中途半端な高さだと登って逃げるからね?


 僕の大人の説得に2人の子供が折れた。

 左右に分かれて腰を折って『どうぞ』と言わんばかりに……潔いね。その感じは嫌いじゃない。


 まあ彼らは今夜ノイエのおやつになるとして、最後の晩餐で野菜の皮とか可哀そうだな。だが他の餌などやらん。何故ならお前たちがノイエの餌となり食べられるのだからな。


 ふははははははははは~。


 命の危険を感じたのか桶の中のヤドカリたちが逃げ出そうとするが、また蓋をして閉じ込めておく。


 ユリア? これは後で宿を外して調理する方向でお願いね。


「かしこまりました」


 のんびりと足湯をしていた彼女が返事をよこす。

 変な場面で優雅な元貴族令嬢っぷりを披露する子だな。


 さて。そろそろ話を戻そうか?


「初めては兄さまにって決めてたのに……」

「うん。要らないから大丈夫かな?」

「はは……私、要らない子なんだ……」


 座った状態で横に倒れ、悪魔が暗黒面に行ったままだ。


 うんうん。僕もそんな感じで深く反省している姿を見てやった甲斐を感じる。


 とりあえず全裸状態で膝を抱えて横に倒れるな。全部見えるからな?


 その魅力を感じない体でそんなことをされても僕が獣になったりはしませんので。


「で、この問題児?」

「……」


 猫持ちして馬鹿の顔を見る。


「この馬鹿? お前ドラゴンキラーとかいう魔剣を作ったろう」

「まけん?」


 その初めて聞きました的な空気を漂わせても駄目だぞ? お前ぐらいしかそんなふざけた物を作ったりはしないだろう? その無い胸に手を当てて思い出してごらん?


「ないむね?」


 うん。その飾りのようなわずかに膨らんでいるものです。


 手を当てて考え込んだ悪魔がポンと手を叩いた。


「あれね。その昔、始祖の馬鹿が作った奴でしょ?」

「はい?」

「でもあれは対ドラゴンの魔剣じゃなくて……」


 ずっと猫持ちしていると腕が辛くなった来たので、馬鹿を下す。悪魔は膝を抱えてまた座り込んだ。


「あれの正式名はタイタンキラー。自分よりも大きなモノに対して攻撃力が鼠算式に倍増していく魔剣よ」

「はい?」

「だからあれは対ドラゴンの魔剣じゃないの」


 なるほどなるほど。それなら何となく感じていた違和感にも納得だ。


 ドラゴン特化の魔剣が作れるならそもそも僕の祝福にこだわる必要がない。その魔剣を大量生産して騎士に与えれば多分最強のドラゴンスレイヤー国とかが作れる。


「で、オチは?」

「うん。あの魔剣は使い手を選ぶの」

「あ~。なんかそんな話を聞いたな」


 だから持ち主が定まらず死蔵する期間があるとかなんとか。


「で、大剣なの」

「ん?」

「魔剣が使い手を選ぶけど、そもそもの魔剣が大きいから扱える人が少ないの」

「でも剣なんでしょう?」

「うん。でも大剣」

「……」


 その大剣を押してくるあたりに嫌な何かを感じます。


「どれぐらい大きいの?」

「漫画の斬馬刀ぐらい」

「あれって人が扱える武器じゃないでしょう?」


 あれはもう大剣というよりか鈍器だ。斬るではなくて叩き潰す感じです。


「だからその両方の条件をクリアーしないと実力を発揮しないの」

「納得」


 そんなハードルがあったのね。つか始祖とかも魔道具を作ったりするのね。


「最初は作ってたの。でもあれは物作りにそこまで執着しないタイプだったから一通り作ったぐらいかな。それか自分が必要に感じた物を仕方なく作る感じかな。最後は私との仲があれだったからこっちに話を持ってこれなくて泣く泣く作ってる感じだった。それか妹に頼んで私の弟子に話を持って行ってそれに気づいた私が文句を言いに行ってと……まあそんな感じ」


 うん。そっちの話はぶっちゃけどうでもいいかな?


「で、とあるところにおかしな部族がいるらしいんだけど、それに関しての言い訳は?」

「その苦情は召喚の魔女に」


 ですよね? つまり巨人とかもそんな感じかな?


「うん。運よく呼んだ感じだと思う」


 巨人とかは幸運な気もするが、あのクレイジーな部族は絶対に外れだろう?


「それで最後の質問にしよう」


 というかずっと温泉に居るからいい加減お腹も空いてきた。


 ノイエがいる手前一応禁止にしているんですが、ここでの飲食はお酒や飲み物のみとなっています。食べ物を持ち込むと食べかすで湯を汚す可能性があるからね。

 これに関してはノイエはあっさりと納得してくれた。一番文句を言ったのは今回初参加のチビ姫だ。だがチビ姫に関しては人権など存在していないのであっさり却下で終わった。


 そんなこともあってここでの食事は原則禁止だ。ただ別の理由でお湯が汚れるんだけどね。


「旅人って誰よ?」

「たびびと?」


 僕の問いに悪魔が首をかしげる。


 これに関しては言い出したユリアからまず色々と事情聴取をした。


 何でもこの大陸に古くから伝わる都市伝説的な存在らしい。

 貧乏人には無償で施し、金持ちからは大金を巻き上げる。そんな伝説を数多く残す存在らしい。


 どうせその正体はこの馬鹿悪魔だろうと思っていたのに全否定されることが発生した。

 チビ姫が『旅人』に関しての情報を持っていた。なんでも今回不参加だが、彼女についている長身のメイドさんが旅人に出会い命を救われた過去があるとか。


 子供の頃に無償で命を救われた彼女は何でもあの日の被害者らしい。

 補償対象者になるんだけど申請されていますか? という話にもなったが、なんでも彼女は旅人さんとやらに救われたから補償はいらないと辞退したそうだ。


 つまり都市伝説ではなく実在する存在ということになる。


 僕の中でそんな変なことをする人物はただの1人だ。


「お前だろう?」

「違うから」

「違うの?」

「違うから」


 否定の言葉が並びます。なら誰よ?


「マーリンの馬鹿よ」

「お前の知り合いには馬鹿しかいないのか?」

「うん。どうせ向こうも私のことを馬鹿って言ってるだろうけど」


 それで良いのか? まあ良いか?


「で、誰よ?」

「……」


 虚ろな目をますます虚ろにさせて沈黙すれば許されるとでも?


「ユリア~」

「はい」


 僕の声にチビたちと足湯をしている彼女が返事する。


「二度目のヤドカリパーティーを望んでいる子がいるからちょっと準備してもらって」

「ごめんなさい。言います。全部言います。何でもしますから」


 僕の足に抱き着いて悪魔が懇願してくる。

 全裸でこんなことをしているとただの危ない人たちでしかないな。


「で、誰よ?」

「……」

「ちゃんと聞こえる声で」


 チラチラと悪魔が視線を動かしている。

 足湯をしながらジュースを楽しんでいるあの子たちには聞かれたくない話なのか?


「魔法の使用なら許可する」

「うん」


 宙に文字を綴って悪魔が押し出す。相変わらず厨二心をくすぐる魔法だよな。


「コロネのお尻の形がいいです。ユリアは足の形がエロいです。チビ姫は……来世で頑張れ」


 魔法が効いているか確認する。


 大丈夫そうです。あいつ等がこんなことを言われれば何かしらのリアクションを見せるはずだ。それが無反応だから聞こえていない。


「で?」


 諦めた感じで悪魔が息を吐いた。


「私の娘よ」


 はい?




© 2024 甲斐八雲

 刻印さんが旅人さんのことをちゃんと主人公に語っていないはずなんだけど…だいぶ記憶が曖昧だw


 もしやらかしていたらごめんなさい

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