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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 28

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魔女ちゃんの経験則?

「ぜぇ~はぁ~ぜぇ~はぁ~」


 前屈みとなり、両膝に手を置き大きく大きな胸を揺らす。


 逃げ切った。頑張った。感動した。ありがとう!


 全身でガッツポーズからの万歳を敢行した。そしてもう一度のガッツポーズでトドメだ。


「あふっ……」


 畳の上では犠牲となった全裸の弟子が転がっていた。


 ドロドロで大変なことになっている。もうあれだ。とてもじゃないけど世間に公開できない状態だ。

 そして師匠としての情けで薄くモザイクをかけて……うん。部分部分でモザイクを掛けたらエロさが倍増した。どうしてだろう?


 でも全部にモザイクをかけると見にくくなる。背景にポスターを張りまくった楽屋でエロいシーンを撮影する感じだ。ポスターにモザイクをかけるからさらに見にくい。モザイクをかけていた時点で『あっこれダメだ』とか思わなかったのか? もう少し頑張れ業界の人よ。


 で、何の話だ?


 疲労からか思考が脱線する。しすぎている。


 大きく呼吸を整え、今一度弟子にモザイクをかける。

 顔にかけるだけで……まあこれで良い。うん。顔が見えなければ大概のエロはセーフだ。後は大切な部分はナチュラルに隠しておけばいい。完璧だ。


 こんな姿になっても師匠の為に身を挺した弟子のことは決して忘れない。


 強敵を前に使える“もの”は何でも使った。

『大丈夫。今度こそ本当に胸を大きくする方法があるの! その名もシリコン! あれを使えば間違いなく大きくなるから!』と弟子を誘惑し、鬼に立ち向かわせた。まあ足止め程度の妨害だ。


 立ち向かう弟子に鬼は至極冷静なコメントを発した。『シリコンってこの世界で作れるの? 絶対に無理だと思うんだけど?』だ。酷い行為だ。あの鬼は自分の胸のサイズを忘れ、世の貧乳たちの希望を断ち切ったのだ。


 しかし。しかしだ。忘れて貰っては困る。私は刻印の魔女。


 不可能を可能にし、真なる不可能は地中に埋めてひた隠しにしてきた女だ。シリコンの製造など……たぶんできると思う。大丈夫。頑張るからね? 

 その説明で弟子は寝返ろうとしていた鬼の手を払い相手に立ち向かった。何より鬼は君に対して酷いことはしない。何せ姉さまの妹だ。だから安心して妨害すれば良い。


 納得して弟子は鬼に立ち向かった。立ち向かってくれたのだ。

 そして勇敢に鬼の前に立ち……最終的に『また嘘じゃないですかっ!』と吠えて散った。


 ただ嘘は吐いていないぞ弟子よ。鬼は巨乳を求めていた。だから貧乳の君が道を塞いでも鬼が襲い掛かることは無いはずだったのだ。だが予想に反して襲い掛かった。迷わずタックルから入り、押し倒してから……あとはR18禁だ。この鬼は迷いが無い。やはり兄さまの実母だ。ある意味で納得だ。


 結果として暴走する鬼に弟子をけしかける形になったが、ただの事故だ。


「なぁ~」


 身の危険を感じて屋根の上に逃れている猫が可愛らしく鳴いている。あの猫は本当に猫だ。


 もう自分が人であることを忘れていないか?


 一度人であることを思い出させてやる必要がある。


 そして赤毛の魔女は何故か漫画を読んでいる。本当に優雅だ。羨ましい。


「ん~。お芋のアイスが美味しいわ~」


 浴衣を開けさせた鬼は縁側に腰かけアイスを口に運んでいた。


 とても幸せそうに……と、魔女の視線に気づいた鬼が視線を向けて来る。

 スプーンを咥えて首を傾げた。


「魔女ちゃん」

「何でしょう?」

「どうして妹ちゃんがそんな姿で転がっているのかしら?」


 本当に不思議そうな感じでまたスプーンを動かす。


「それは御前が襲って味わったからです」

「あれ?」


 不思議そうに首を傾げてまたアイスを口へと運んだ。


「ん~。どうして妹ちゃんに欲情したのかしら?」

「御前ですから」

「うん。否定が出来ない言葉ね」


 納得してくれたらしい鬼はまたアイスに戻る。


 成功だ。完璧だ。これが勝利と言うものだよ!


 また全身で喜びを表現し、魔女は散らばっている室内に目を向ける。


 主に散らばっているのは弟子のメイド服と下着やらだが……まあ良い。パンパンと手を叩くと池から這い出て来た鯉が歩いて来る。足を生やしてペタペタと中途半端な半魚人だ。


 それが伸びている弟子を抱えて奥の部屋へと運んでいく。事前に移動しておいた幽霊と一緒に布団に寝かせて……あれか。やはり多少は体を拭いてやるくらいの配慮は必要だ。


 何故ならこの弟子の献身的な自己犠牲のおかげで鬼に記憶操作の魔法をかけられたのだ。

 本当に危なかった。もう一度やれと言われたら全力に断る。頑張ったよ私。


 とりあえずゴーレムに弟子の拭き掃除を命じて襖を閉じさせた。


「魔女ちゃん」

「はい?」

「妹ちゃんが居ないとオバサンの世話をしてくれる人が居なくなったわ」

「老けるには早いってことで自分でやってください」

「嫌よ」


 何故か浴衣の懐に手を入れてゴソゴソと漁った鬼がそれを引っ張り出した。メイド服だ。


「はいこれ」

「……」


 うんうんと手を伸ばして鬼がメイド服を渡そうとして来る。


 つまりそれを着ろと言いたいのか? この場所で?


「御前を悩殺するのでお断りします」

「大丈夫よ」

「……」

「あら? 疑うの?」


 笑いながらもう一度メイド服を突き出してくる相手に魔女は息を吐く。


「ならもう一度、オバサンと追いかけっこする?」

「っ!」


 戦慄した。その言葉に魔女は戦慄したのだ。


「まさかこのオバサンに魔女ちゃんの魔法が通じると?」

「……」

「まあ通じてたんだけど」


 クスクスと笑い鬼は残っているアイスを一気に喉へと流し込んだ。


「オバサンはとっても強い鬼だから、あっという間に回復しちゃったのよね」

「……なんて酷いチートな」

「ふふふ」


 不敵に笑う鬼が三度メイド服を突き出してきた。


「は~い。許して欲しかったらこれを着る」

「……分かったわよ」


 諦めてメイド服を受け取り指を鳴らす。

 魔法少女もビックリの一瞬で着替えを済ませた。


「うそっ! ここは恥じらいながらの着替えのシーンでしょう?」

「期待に応じないのが魔女って生き物です」

「嘘よ! アイルローゼちゃんは期待にしか応えないわよ!」


 矛先を向けられた赤毛の魔女は、肩を震わせつつも沈黙している。

 あれは笑いをこらえている感じではない。怒りを抑えてこっちの会話に加わらないようにしている感じだ。


 酷い裏切りだ。後で罰を与える。


「まあ良いわ。魔女ちゃん」

「はいはい」

「アイスおかわり」


 またパチッと指を鳴らして魔女は鬼の周りに大量にアイスを置いた。


「情緒が無いわね?」

「私も食べるので」


 畳の上に座り魔女も呼び出したアイスに手を伸ばす。

 スプーンでアイスを口に運ぶ。うん。美味しい。


「それで魔女ちゃん」

「はい?」


 冗談で出しておいたバケツサイズのアイスを抱えた鬼が頬を膨らませていた。


「何でウチの匠君が死んじゃったのかな?」


 あ~。そんな話もありましたね。


「確か母親の葬儀後に疲労困憊の意識朦朧な状態で、線香に火を点けておいたら事故って引火して焼死したはずですが?」

「それはあっちの死因でしょう。オバサンの心の傷を抉らないでくれるかしら?」


 まさか自分の息子がそんなことで亡くなるとは鬼は全く想定していなかったことだ。


「魔女ちゃんの試練って言ってたけど?」

「ま~厳密に言うと姉さまの試練の巻き添えですけどね」

「ノイエちゃんの?」

「そ」


 畳の上で足を延ばして魔女は背後に手を突いて天井を見つめる。


「今ではちゃんと自分の気持ちというか想いというか、そんな物を表に出してくれる姉さまだけど、最初の頃はその辺が凄く曖昧だったからね~」


 何を考えているのか分からない……むしろ何も考えていないような、本当の意味で人形のようで信用が出来なかった。


「でもそれってノイエちゃんに感情が無いからでしょう?」

「でも姉さまは『無』ではない」


 感情が無いだけだ。表情も無いだけだ。


「姉さまのここにはちゃんとハートはある」


 言って魔女は自分の胸の谷間に指先を当てた。


「最初の頃はそれが良く見えなかった。兄さまのことを本当に愛しているのか……ぶっちゃけ快楽を貪る相手なんじゃないのかなって疑りもしてたのよ」

「それは魔女ちゃんの目が曇っているだけよ」

「結果としてそうだったんだけどね」


 今でも覚えている。

 姉さまは力を取り戻し真っ直ぐ兄さまの元へ飛んで行った。

 ただその時点で色々と予定外が発生していたが……うん。結果オーライと言う言葉が示す通りだ。


「姉さまほど兄さまのことを愛している人は居ないのかもしれない」

「シャーっ!」

「んっ! んんっ!」


 外から猫の威嚇と赤毛の魔女が喉を鳴らす音が響いて来た。が、無視だ。


「文句があるなら鬼の傍まで来て文句を言いなさい」

「オバサンは愛しい娘たちの訪問をいつでも待っているわ」

「「……」」

「オバサン、ちょっと本当に泣きそうになったわ」


 呼称“愛しい娘たち”にスルーされた鬼が涙目でアイスを食する。


「でも魔女ちゃん」

「はい?」

「どうしてノイエちゃんの愛情を試したりしたの?」

「ん~」


 頬に指を当てて魔女の視線は天井に向いたままだ。


「結局バトル物って最終的に『友情愛情、最後に根性』だと思うのよね」

「……」


 抱えているアイスを膝の上に置き、鬼は魔女に何とも言えない視線を向けた。


「あの2人の絆が確りしたものじゃないと途中で力尽きちゃうかもしれないでしょう?」

「それって魔女ちゃんの経験則?」

「ナイショ」


 クスクスと笑い魔女はまたアイスに手を伸ばした。




© 2024 甲斐八雲

 鬼さんに対しての精神系魔法は自然回復しますw


 耐性持ちなので、鬼には毒も麻痺の攻撃もあまり効かないのです。

 まあその辺はオーガさんも同じなんですけどね。


 刻印さんは最終的に仲違いというか…まあそんな感じになっているんで

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