この大陸に有名なドラゴンスレイヤーって何人居るの?
ユニバンス王国・北部ドラグナイト家別荘
「私は何てことを……」
自己嫌悪に襲われたユリアが膝を抱えて壁と友達になっている。
懐かしい光景だ。良くお城の執務室であんな姿を見たりしたり……うん。壁と大地は人類とは切っても切れない縁なのだと思う。そう思おう。
ただミニスカートで膝を抱えると色々とアウトな気がする。
あれは人に見せても良い下着なのだろうか? あの下にもう一枚穿いているの?
今見えているのもそこそこ布の面積は少ない気がする。つまり本体はあれよりも小さいと?
もう紐やん。ウチにも紐パンメイドが居るとは、
「どう思う? カボチャパンツ?」
「もががっ!」
怒れるコロネはまだ縛ったままで床の上に放置中だ。
何故かそうしているとノイエがちょくちょく様子を見に来るので観察したい気分とも言う。
あれか? 僕がコロネを助けようとすると妨害するパターンか?
軽く手を伸ばし掛けてみると姿を現したノイエの体が半ばまで部屋に入って来る。でもこれはフェイントです。起こしません。するとノイエは何もなかった感じで部屋を出て……食事中にそうたびたび席を立つのではありません。マナー違反ですよノイエ。
「させているアルグスタ様がマナーを語るのですか?」
「……」
流石メイド長だ。痛い所を突いて来る。
「まあ昔と違いテーブルごと移動して来ないだけマシですが」
「中々ハードな過去ですな」
想像できる自分にも問題がある気がする。
「そうだ。フレアさん」
「何か?」
何故かユリアの鞭を振るって音を確認しているメイド長が視線だけをこっちに向けてくる。
その見事な鞭さばきは何処かで練習したんですか? していないと?
そうだとしたら貴女には間違いなく天賦の才があると思うので、今度から馬鹿兄貴が悪さをしたらそれで罰でも与えてください。
というかその鞭ってフレアさんが使っている魔道具と似ているよね?
「根っこの部分は同じです。ただ先生の作品はより高度に作られていますが」
言って片手で彼女は自分の腰を叩く。片方だけスルスルとスカートが伸びて影が広がった。
「これはただ魔力を流して鞭ほどの硬さにする程度です。ですが先生の魔道具は」
ウネウネと伸びた影が意志を持った生き物のように動く。
うん。見てて怖いわ。
「この操縦性と攻撃強度が至宝とまで呼ばれる先生の真骨頂です」
「褒め過ぎるとアイルローゼが照れて悶え死ぬよ?」
何だかんだであれは恥ずかしがり屋さんだしね。
「先生なら鼻で笑ってから自室に戻りベッドに飛び込んでから悶えます」
伸ばしていた影を戻しフレアさんは手にしていたリボンも戻す。
ただこの場に居る人たちの視線は全て彼女に向けられていた。
当たり前だ。メイド長が持つ魔道具は国宝指定だ。それを見られるのって実はとても珍しい。コロネみたいにいつも見れるものではないしね。ただその扱いの複雑さと製作者の希望で所有者が固定されている。仮にフレアさんがお亡くなりになったらあの魔道具は国の宝物庫に入れられるだろう。引き継ぐ者が居なければだけど。
「あっそうだ。フレア先生」
「……」
物凄く複雑そうな視線を彼女が向けて来る。
言っても僕は彼女の生徒でもあった。彼女が始め、クレアが引き継いだ貴族の子供たちへの勉強会に毎回足を運んでこの世界の基礎知識を習得したのだ。
その辺のことに関してはチート的なあれは無いから真面目に勉強しました。
だから僕からすればフレアさんは間違いなく先生の1人である。
「聞きたいことが有るんだけど、質問しても?」
「アルグスタ様」
「ほい」
努めて真面目な声で彼女が口を開く。
「メイドに対しては『質問をする』のではなく『尋ねる』が正しいのです。そしてメイドは上の者が訪ねてきたら答える義務があります」
「つまり貴女の性癖とか尋ねたら答えてくれると?」
「はい。主に暴力や拷問を実行する時に激しい何かを感じ入ります」
「調子に乗りましたっ!」
笑っているのにゼロ感情の笑顔に全力で頭を下げて謝罪する。
「アルグスタ様? ドラグナイト家の御当主様がメイド相手に調子に乗って何か問題でも? 遠慮なさらずに“何でも”お尋ねください。私の口が軽くなる項目は『正しい拷問の仕方』や『正しい嬲り殺しの方法』や『正しい死体の隠ぺいの方法』などでございますが」
やべ~。マジでお怒りだ。良し起きろコロネ。そして僕の盾になれ。
大丈夫。ノイエは何かしらの空気を感じたのかお前に触れても顔を出さないぞ?
だから今なら問題なくお前を盾に出来る。
大丈夫。共に国宝級の魔道具を持つ者同士じゃないか? 頑張れ!
「それを言うならアルグスタ様の剣も国宝級の魔剣だと伺っておりますが?」
藪蛇っ! 上乗せして良いなら僕の両腕にはアイルローゼ作のプレートが埋まってますけどね!
凄くない? 僕ってば普段から国宝クラスを3つも持ち歩いてるんだぜ?
「ノイエ様を隣に連れ置いている時点で個数は関係ないと思いますが」
ですね。いざとなればアイルローゼ本人を呼び出せるわけだし。
あれ? そういえばニクはどうした? 宝玉は常にノイエの傍に置いておかないとダメなんだぜ?
「兄さま。あれは“先生”が色々と弄り倒して遠隔でも魔力充填できるようにしたそうです」
「あっそう」
スタスタとやって来たポーラがそう述べてから何故か壁際に移動する。スズネの横だ。自分は空気です。壁の花ですと言わんばかりに気配を消す。どうした?
「良いんです。私は兄さまに嫌われてしまったから」
あ~。なるほどなるほど。
どうやら少し距離を取っていたらポーラさんも冷静になってくれたらしい。
「ならその調子であと3日ぐらい反省してて」
「3日もっ!」
一瞬にして化けの皮が剥がれたぞ? 大人しく沈んだ空気を見せれば僕が同情するとでも思ったか?
甘すぎるわ! 小童めっ! 僕はその辺の異世界転生系主人公とは違うのだよ! 主人公とはっ!
「もっと猛省しなさい」
「……」
何故かポーラは移動してユリアの横に行くと座り込んで膝を抱えた。
ここにもう1人、壁と仲良くなる者が生じたわけだ。壁は偉大だな。
「それでニクは?」
「もがが、もが」
僕の盾が騒ぎ出した。
安心しろ。君はそのまま盾役に徹すれば良い。RPGで言うところのタンクだよ。ただ僕が真面目にゲームしていた頃にはそんな役割とか存在していなかったんだけどね。
タンクのポジションって何処から湧いて来たんだろう?
まあ良い。ニクの存在を知っているのはコロネだけらしい。猿轡は外してやる。感謝しろ。
「このバカご主人っ! このうらみはぜったいに、」
「僕は君の暴言を決して忘れんぞ?」
「……ごしゅじんさま~」
一瞬で怒りを忘れてゴマを擂って来る君の切り替えの速さには感動すら覚えるよ。
「で、ニクは?」
「はい。ちかくの森にいるはずです」
「……少しは自然を思い出したか」
運動不足なのか図体ばかり大きくなっていたから、野山を駆け回りダイエットに勤しむのは良いことだ。
「あの~ごしゅじんさま?」
「君は盾役を継続で」
「ほんきでこわいんですけどっ!」
知ってる。あのゼロ感情の笑顔がめっちゃ怖いから君を盾にしているんだ。
あ~。コロネの後頭部に癒しを覚える日が来るなんてな。
「ばぁかぁ~!」
「うむ」
その暴言を僕は忘れんぞ?
具体的にはジリジリと姿を現しているノイエが黙っていない。
後で君は酷い罰を受けること間違いなしだ。
「まあ冗談はこれぐらいにして少し真面目に話をしたいかな」
コロネを床の上に戻してパンパンと手を叩く。
今までの暢気な空気が一変し、メイドさんたちがメイドに戻る。
普段からメイドなんだけどそれはあれです。ここに居る大半のメイドはハルムントは罰のメイドさんなので空気が一変するんですよ。
その長たるメイド長も悪ふざけモードから完全にメイド長に戻っているしね。
「おに~ちゃん。私たちは居ても良いです~?」
入り口に居るノイエの背後からチビ姫が顔を出す。
君はノイエを盾にしていたのか……何かムカつく。
「まあチビ姫と義母さまなら居ても問題無いかな? むしろ何か知っているネタがあったら教えて」
「は~いです~」
元気に答えてチビ姫も部屋に入って来ると使っていた椅子に腰かけた。
とりあえずスズネ。コロネの縄を解いておいて。
「さてと。ちょっとメイド長に問いたいんだけど」
「何でしょうか」
その立ち振る舞えは流石2代目だね。隙が全く無いです。
「この大陸に有名なドラゴンスレイヤーって何人居るの?」
無名なドラゴンスレイヤーが居るってことをサツキ一族から知ったからね。
あんなのは例外として有名どころをプリーズ。
© 2024 甲斐八雲
結構前から書きたかったネタがようやく書けるw
この大陸に有名なドラゴンスレイヤーは何人居るのか?
ノイエは確定です。オーガさんは帝国国内だと有名だったんですけどね。
鎖国をしていた神聖国は2人居るらしいって噂ぐらいで…で、後は?




