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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 28

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2119/2460

冗談の範疇を越えていましたが?

 ユニバンス王国・北部ドラグナイト家別荘



「宜しいですか。ご主人さま? これで対象の動物を叩くなんてことは絶対にしません。してはいけないんです。動物だって痛みを知る生き物ですから、痛くした相手のことを決して忘れないのです。痛くすれば嫌われてしまいこちらの命令を聞いてくれません。ですから私たちの一族はこれで音を発して対象に合図を送ることで操る術を、」

「黙らっしゃい」

「えぇ~」


 懇切丁寧に説明しているユリアだが僕が聞きたいのはそれじゃない。


「ならば別に鞭の形でなくても宜しかろう? 何故鞭にした? それは決まっている。叩くためにだ」


 そうに決まっている。叩かないなら鞭の形である必要は無い。叩かない鞭はただの鞭だ。飛べない豚と同じ理論だ。飛べない豚はテーブルの上に直行なのだ。そしてノイエが美味しくいただきます。


「えっとですね? 我が家に伝わる話では、音を出しやすく持ち運びを簡単にするためにこの様な形状になったとも言われています」

「それは違う。騙されるな」

「えぇ~」


 現実を見るんだユリア。君の瞳は現実から意識を背けている。


「だったら別に鞭でなくても良いと言っている。楽器で良いじゃん。横笛とか竪琴とか、どうよ?」


 真っ直ぐな僕の指摘に彼女の目が泳ぐ。


「……私の一族って楽器に対しての相性が絶望的でして」

「だったら笛とかで良いやん」


 ホイッスル的なヤツなら誰でも吹ける。


 ちなみにこの世界にホイッスルはある。何せハリセンもメガホンもある世界だ。

 伝えたのは言うまでもない。三大魔女の1人だ。やらかし担当の刻印の魔女だろう。本当にあの馬鹿はこの世を汚染しまくっている気がする。


 酷い侵略者だな。


「ですから強弱を付けることで合図を送りますので」

「笛でも出来る」

「できますけど……」


 段々とユリアの声が弱くなる。


 意気消沈というか自分の一族の歴史を否定されまくって確固たる自信が無くなっているのだろう。

 こうなると人間とは大変に脆い。その脆さを突いて一気に決める。


「鞭である必要は?」

「それはご先祖様に聞いて頂ければ」

「つまり君の先祖は鞭である必要があった使い方をしていたんだよね?」

「……」


 僕の言葉にグルグルとユリアが目を回す。


 まだ伝わらないか? 僕のこの熱い気持ちが?


「だが良い機会だ。ここで君が君の一族の間違いを正せば良い」

「まちがい?」

「そうです。鞭は鞭らしく鞭のように使ってこそ鞭なのです。つまり豚を叩いてなんぼなのです」

「豚を?」

「その通り」


 瞳から光を失ったユリアが少し首を傾げつつも僕の言うことを否定しなくなった。


 素晴らしい。ようやく理解しましたか?


 そしてこれは決して洗脳とか誘導とかではありません。

 僕の熱い熱い熱意が彼女の心に伝わったのです。


「ですからそこに寝ている豚を叩いてみましょう。大丈夫。最初は抵抗があっても人は慣れます」

「なれます」


 フラフラと視線を彷徨わせたユリアがリボンを掴んで魔力を流す。


 何かに気づいた床の上の豚ことコロネが全身をくねらせて逃げ出そうとするが、とりあえず僕が彼女のスカートを踏んで逃走の妨害とする。


 何故そんな『裏切ったな!』的な視線を向けて来る? 君がノイエの晩ご飯前のご飯をつまみ食いした罪がこの程度で許されるとでも?


「さあユリアよ。最初は軽く……肉の多いお尻でもペチペチと」

「にくのおおいおしり」

「もがぁ~!」


 猿轡を噛ませてある豚が鳴いた。


 まだ叩いてもいないと言うのにこの豚は……欲しがりちゃんか?


 あっ違う。反応的に肉の多いお尻を否定している感じだ。


 確かにコロネは年齢の割に全体的に細い。保護した時のポーラほどではなかったが、ちゃんとした食事を与えて貰えてなかったのだろう。

 何より祝福持ちは良く食べるから余程の金持ちで無いと飼えきれないという難点もある。


 子供の頃はぽっちゃりぐらいで良いと思うのは僕だけでしょうか?


 色気づくならもう少し成長してからで良いんです。小さな頃は元気に遊んでお腹いっぱい食べてそしてたたき起こされるまで寝れば良いのです。

 元気に伸び伸びとが真っ直ぐな子供を育てる要因だと僕は信じて疑わない。


 ただあっちでシュッとした感じで佇んでいるスズネは別枠です。

 あれは細いと言うか締まっている。あの年齢で筋肉質って方が問題な気もするけど似合っているから文句は無い。将来はカミーラの姐さんのような宝塚系な美人さんになっていただければと思います。


「さあユリアよ。君が叩くものは?」

「にくのおおいおしり」

「もっがぁ~」


 怒りつつも逃げようとするコロネのスカートを継続的に踏みつけ逃がさない。


 さあ判決の時だよ。コロネくん。


 鞭を振り上げたユリアがコロネの尻を狙う。


 大丈夫。もし僕の考えがミスっていても、きっとコロネはMだからそのうちいい感じになるはずだ。

 そしてこのままユリアを立派な調教師に育ててユニバンスから変態を一掃する役目を与えよう。それか変態を全て管理する役目だな。


 とっちに転んでも完璧じゃないか!


「おにく」

「もっがぁ~」


 ユリアが鞭を振り下ろし……コロネはノーダメージだ。

 理由は簡単。ユリアの手をフレアさんが掴んでいた。


 何故だ? 何故貴女が邪魔をする?


「それではダメです。肉を抉ります」

「抉る?」


 メイド長の静かな言葉にユリアの瞳に冷静さが、知性が戻って来た。


「ああ。私は何をっ! なんてことをっ! 違うんですコロネ先輩。私は先輩を叩く気なんてっ」


 鞭を放り捨ててユリアがコロネの救出に……ちっ。正気に戻ってしまったか。


「アルグスタ様?」


 警告気味のメイド長の視線が。


 こういう時は素直に両手を上げておく。


「冗談の範疇を越えていましたが?」

「大丈夫。怪我をしたらリグを呼んだしね」

「……」


 ホントウダヨ?


 リグがコロネのお尻を舐めるシーンとか、きっと悪魔が大興奮して僕に感謝しつつ新たなる秘蔵映像を見せてくれるかもしれないじゃん。


 アイルローゼの秘蔵映像はお腹いっぱい見せてもらう約束をしているから次は……誰にしよう?


 あれだな。少し小盛より大盛りをガッツリ食べたい気分だから、レニーラとかホリーとかの秘蔵映像を……相手が僕だと引くな。自分が出演しているその手の映像は引くんだよな。


 まあネタがあれば交渉は出来る。


「それにフレアさんが止めなくても」


 僕の視線に彼女の目も動く。


 食堂で晩ご飯前の食事をしていたはずノイエが、両手に骨付き肉を持ってこのリビングの入口まで来ている。つまりフレアさんが動かなくてもノイエが動いていた。


 ある意味一番知りたかった反応でもある。


「ノイエってコロネのことを嫌っているのかと思ってちょっとした実験だっただけだよ」


 何かあるとノイエのコロネに対しての当たりが強いから心配していました。


 ただ僕とコロネの距離が近いからそれに嫉妬してとかも考えたんだけど、それにしても当たりが強すぎる。何よりノイエは好き嫌いを露骨に表に出さないから判断に困る。

 逆に露骨に表に出ている場合は本当に好きか嫌いかのどちらかだから要注意だ。


「……本当ですか?」


 建前はね。だからそう胡散臭そうな視線を向けて来ない。メイド長よ。


「それにここには義母さまも居るしね」


 小さな子の味方であるウチの義母さまが怪我するコロネを見捨てるとは思えない。

 たぶんユリアが鞭を振り下ろした時点で、


「あふ~ん。ノワールちゃ~ん。お婆ちゃんはね? 赤ちゃんのこのプニプニお腹を触るのが大好きなのよ~」

「……」


 うん。ノワールが赤子とは思えないほど冷めきった表情で自分のお腹に頬ずりする義母さまを見つめている。ある意味でノイエの娘かもしれない。何故ならその目にも表情にも一切の感情が宿っていない。


 無だ。完全なる無だ。


「大丈夫。ノイエかフレアさんが止めてくれると信じていたから!」

「……」


 あれ? フレアさんの視線からも表情からも感情を見つけられないぞ?




© 2024 甲斐八雲

 ノイエから見てコロネはまだ家族の枠の中に入ってません。

 でも片足ぐらいは入っているから何かあれば救いに動きます。


 コロネに対して当たりが強いのは、まだ家族認定していないので、アルグスタとの距離が近すぎてイラっとするからです。ポーラとのじゃれ合いなら野放しなのがそれが理由です。


 でもあまり自分をほったらかしにして遊んでいるとイラっとします。

 その時はイラッが無くなるまで当たりますw

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