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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 28

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もうピエロも真っ青なくらいに最高

「ヤバいは御前」

「どうしたの?」


 茶碗を持つ手を震わせた魔女が涙を溢れさせていた。


「鳥五目御飯が美味しいの」

「良かったわね」

「うん。うん。美味しいの~」


 洗面器茶わん蒸しから枕大のパンケーキを食し、そして魔女は御櫃に山と盛られている鳥五目を1人で抱えている。それだったら御櫃から直で食べれば良いのに、何気にこの魔女はその辺にこだわりがあるのかちゃんと茶碗に盛る。案外育ちの良いお嬢様だったのかもしれない。


 ただこの魔女が鳥五目で涙腺を崩壊させるのはおかしい。


「魔女ちゃん」

「うん?」

「また何か問題でも発生してるの?」


 そうに決まっている。つまりまた問題が発生し、この魔女は甘えん坊になっているに違いない。


 半裸でトロトロの表情を浮かべている猫だったモノを布団に寝かしつけ、鬼は軽い足取りで次なる玩具を小脇に抱えて戻って来る。

 幾分回復した赤毛の魔女だ。これはこれでたまらない存在だ。反応が可愛らしいから遊び甲斐がある。


「御前」

「なに?」


 ウルウルとその目に涙をためて魔女が見つめて来る。


「貴女の息子が最高に面白いの。もうピエロも真っ青なくらいに最高」

「匠君……」


 力無く鬼の口からため息が溢れた。


 本当にあの息子は……まあ基本的には悪い子ではない。むしろ良い子に育ってくれたと思う。

 自分が鬼の宿命でどんどん体を弱らせる中でもあの子はいつも明るく元気に、そして何よりも優しくしてくれた。

 あの頃のことを思い出すと今も目頭が熱くなってしまう。


 本当にあの子はとてもいい子に育ってくれて……ああ。あの子の母親になれて幸せだ。


 うん。気分が良いからアイルローゼのお尻を撫でる手にも熱を帯びる。


 ほれほれ、このプリッとした最高のお尻の持ち主よ。ここか? ここが良いの?


「くふっ……うふっ」


 そんな甘い声を出されたらオバサンのやる気が止まらなくなっちゃうんだから。


 このプリプリのお尻からの太ももへのラインは確かに最高ね。うん。我が息子ながら本当に良く分かっている。猫ちゃんのように青い果実……実はアイルローゼちゃんと2歳しか違わないという噂を耳にしたような気もするけど、女の子に年齢の話は禁句だから。それにオバサンは年齢とか気にしないから。可愛ければ何でも大丈夫だから。


「御前? 現実逃避している?」

「ん~。大丈夫よ。このお尻は良いモノだから」

「キシ○ア様に届ければ良いのかしら?」

「誰?」


 鬼に素でツッコまれたので魔女は鳥五目を茶碗に持って箸で沢庵を口に運ぶ。


「分かる人には分かるネタだからスルーしておいて」

「あら? オバサン、若い子のネタは良く分からないから」

「若くない子向けのネタなんだけどね」

「そうなの?」


 その通りだ。でもファーストネタは世代によっては通じないとか何とか。


「それでウチの匠君は何をしているのかしら?」

「うん。涙ながらに全力で土下座してる。五体投地も辞さない勢いで」

「……」


 目を閉じて鬼は顔を上へ向けた。


 大丈夫。溢れそうな涙はたぶん気のせいだ。何かしらの気の迷いだ。

 それにあの子が土下座をするなんて普通のことだ。まるで息をするかのように土下座をする。その姿に迷いがない。迷わず土下座をできるその精神も……あれ? どうして目頭が熱くなるのだろう? だから気のせいだと自分に言い聞かせたはずなのに。


 まず一度落ち着こう。こんな時は揉むに限る。


「ぬふっ……んっ」

「御前? そのお尻はパン生地じゃないんだから捏ねすぎ」

「ん。こんな時は揉んで心を落ち着けるのが一番だとオバサンは思うの」

「それでも揉み過ぎ」


 形が変わりでもしたらどうするのかと思う訳です。

 まあここなら例え削っても元に戻るけれど。


「それでウチの匠君はどうして土下座を?」

「ん~。たぶんこの世界で怒らせちゃいけない人物を怒らせたから?」

「怒らせちゃ……ノイエちゃん?」


 あのお嫁さんラブな息子が彼女を怒らせる姿が想像できない。

 もし怒らせるとしたら夜の営みでの意見の違いだろう。匠君は一回の内容にこだわる傾向があるが、ノイエちゃんはとにかく回数だ。回数をこなしつつも内容まで求める凄い人物だ。

 獣を上回るあの貪欲さは正直鬼の世界でもドン引きだ。


 鬼はそもそも荒々しい感じでガツガツ系だ。その上をいくほどのガツガツした存在とは? 思い浮かばない。何よりあの子は巫女と聖女の流れをくむとか何とか。もしかして聖女の『聖』の字が違う系の聖女なのだろうか?


 そんな逸材をお嫁さんにするだなんて……流石あの子は才能あふれる存在だ。たぶんきっと。


「でもノイエちゃんならそんな命乞い染みた土下座をしなくて許してくれるでしょう?」


 とにかく優しいお嫁さんだ。御姑目線で見る限り満点なお嫁さんだろう。

 何よりあの不可能を可能にしそうな勢いが素晴らしい。


「あ~。姉さまは捕まって頬ずりされてるわね」

「ん?」


 魔女の言葉に鬼は首を傾げる?


 捕まって? つまりノイエちゃんに謝っているのではないと言うことだ。


「あの怖いメイドの人?」


 あの怖いメイドさんならあり得る。村に居た長老もあんな感じだった。怒る姿を見せつけるのが仕事だと言わんばかりに怒っていた。余りにも煩いから殴り合いの喧嘩になって圧勝したけれど。

 確かあれは5歳ぐらいのことだろうか? 周りからは『容赦しない』と怒られたっけ。


「その人ならニートを椅子にしているわね」

「ん?」


 増々鬼は首を傾げる。


 そうなると残りの候補が居ない。


「誰なのかしら?」

「兄さまの義母さん」

「わたし?」


 首を傾げたままで鬼が自分を指さす。


「じゃなくて肉体の方ね」

「ああ。そっちね」


 鬼は納得した。


 鬼の息子である匠はあっちの世界で焼死しこっちの世界で新しい肉体を手に入れている。


 あっちの時は優しい感じの好青年(母親補正込み)だったが、こっちの肉体は何と言うかハリウッド映画とかに出て来そうな金髪碧眼の好青年だ。正直恰好良いし何より男性のあれ……シンボルがとてもハードだ。大ハードだ。やはり西洋系の人は大きいのだ。ビックでビックリだ。


 その肉体には実の母親以外に義理の母親が存在している。前国王の妃だという。そう考えると王子となった自分の息子にビックリだ。知らない間に自分の息子が白馬に乗らない王子様になっていた。乗っているのは牛のように巨躯な馬だ。それか良くお嫁さんに乗られている。


 昼間の息子は馬車馬のように働き、夜の息子は種馬のように働く代表例だ。


「御前? 捏ねすぎ」

「このプリップリのお尻が悪いのよ!」


 ハリ艶弾力全てにおいて完璧なお尻が悪い。だから現実逃避には持って来いなのだ。

『私は悪くない』と鬼は自分への言い訳を完璧に済ませた。


「ところでその王妃様って強いの?」

「御前?」


 鬼の問いに魔女は何とも言えない視線を向ける。


 その視線は『何を今更』と物語っていた。


「だってノイエちゃんってあの人のことを嫌っているからあまり見かけないし」

「あ~。まあ確かにね」


 魔女もその事実を素直に認めた。


 と言っても今の様に捕まればされたい放題だ。

 スリスリと頬ずりされても面倒臭そうな空気を醸しつつも抵抗はしない。まああの姉は心根が優しいから色々と我慢しているのだろう。


「何でノイエちゃんはあの人のことを避けるのかしら?」


 首を傾げる鬼に魔女は欠伸交じりで口を開く。


「あれよあれ。元王妃様は肉体に竜の因子が混ざっているから」

「因子? あの切手みたいな?」

「違うから。そのボケはツッコミしにくいから」

「オバサン、素で言ったのだけど?」

「ならなお悪い」

「シクシク」


 泣きながら赤毛の魔女の尻を揉まない。捏ねない。突っ込もうとしない。


「あれよあれ。簡単に言うとミックスジュースね」

「リンゴと蜂蜜?」

「それはカレーよ。まあ間違ってないけど」


 それはそれでジュースは作れるだろう。


「人と竜が混ざった存在だから姉さま的には攻撃対象にするべきか悩んでしまうのかもしれないわね」

「普段のノイエちゃんなら殴りそうだけど?」

「でも王妃様は兄さまの家族でしょう?」

「……そうね」


 納得した。


 本当にあの子は自分たちの家族に対しては愛情をもって接する。

 その愛情が深すぎるから色々と厄介なことになるが、それでもあの子は家族への愛を決して忘れない。


「まあそれ以外の要因もあって姉さまは避けるんだろうけど」

「それ以外?」


 鳥五目を終えた魔女が次いで何故か赤飯を取り出している。

 ごま塩も忘れずに準備万端だ。


「あの竜が問題なのよ。あの竜がね」


 今度は御櫃全体にごま塩を振りかけると大きなスプーンでバクバクと食べ始めた。




© 2024 甲斐八雲

 刻印さん 『もう兄さまのおかげで撮影に回す魔力が…ご飯よご飯。とにかくいっぱい姉さまの魔力を口にして乗り切るしかない!』


 そんな理由でバクバクと食べていますw


 つかこの2人…本当にのんびりしてるな~

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