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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 28

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2108/2333

何処のバトル物っ!

 ユニバンス王国・王都郊外ノイエ小隊待機所



「お義母さんは本当に悲しいわ。アルグスタが私のことをそんな風に……何よりスィークの方が良いだなんて。どうしてっ!」

「……」


 その様な姿を見たら、たぶん大多数が叔母様の方を選ぶのでは?


 義母さんこと前王の妃であるラインリア義母さんは椅子に腰かけている。


 とある事情で虚弱となり普段は立って歩くのも辛いとのことだ。

 下手をすると吐血しながら歩き回り辺り一面阿鼻叫喚の地獄絵図になるとか何とか。


 そんな義母さんが使用している椅子は、メイドさんたちがパーツを取り出して組み立てたものだ。組み立て式の結構がっちりとした作りである。そして日差しを遮るために大きめなパラソルが開かれ、優雅に腰かけ、鉄仮面を顔にはめた人物は……お怒りの口調で我が家の一人娘を抱きしめて頬ずりしていた。


 鉄仮面がひんやりしているのか、それとも満腹で不満が無いのかノワールはされるがままだ。

 相変わらずの大物である。きっと将来はこの国を背負って立つ人物になろう。


 母親であるノイエはまだメイドさんたちから食べ物を貰っている。

 屋台系の食べ物が尽きたのだろう、次は野外厨房で作られた食事を得ていた。


 というかウチのお嫁さんは食べた料理に順位付けしていないか? 何々? 料理担当のメイドたちが意地になって料理バトルが始まった? ハルムント家のメイドは勝者を決めないとダメな性分なのですか?


 というかこんなにのんびりしてて大丈夫か? ドラゴン退治は? はい? この矢に……働けおっぱい!


「何ですか突然っ!」


 受け取った矢に祝福を与えて、果実をはむはむしているルッテに投げつけてやった。


「案ずるな。普通に八つ当たりだ」

「人として胸を張って自慢気に言うことではないと思うんですけど?」

「あん? それは巨乳自慢な君の貧乳たちに対する宣戦布告と受け取って良いのだな?」

「何でそんな壮大な話にっ!」


 だからさっきから言っておろう。八つ当たりだ。


 矢を拾い集めたルッテは渋々立ち上がると祝福を発動して矢を番いそして放つ。

 綺麗な放物線を描いて飛んでいく矢が凄い。


「その弓って近場を狙う時はどうするの?」

「上を狙います」

「……」


 なるほど。やはりか。つまりあの弓は遠距離狙撃に特化しているために近距離攻撃に適していない。そんな弓を手にしてあのオーガさんとバトルする気でいた君は早々に降参する予定だっただろう?


 こっちを見ろ。顔を逸らすな。寄せて持ち上げて色気で誤魔化そうとしてもそんな胸で買収される僕ではない。


「胸はハリと形だ!」


 ノイエの胸を独占している限り僕が他の胸に誘惑されるだなんて……たぶん無いかな? ちょっと無理かな? リグの胸もかなり良いし、ファナッテの柔らかいのも悪くない。

 つまり僕はこれからも各種色々なおっぱいを堪能し、ノイエが一番であることを確認してから、そのような宣言せねばいけないと言うことか。1つ学んだ。


「では僕はそろそろ」


 すちゃっと片手をあげて逃げ去ろうとした。


「何処に行くのですか? アルグスタ?」


 しかし叔母様が回りこんで来た。


 逃げられない。このラスボスからは絶対に逃げられない。


「あれです叔母様。少しトイレに」

「ほほう」


 冷笑した彼女は傍に居るメイドさんに『木桶を』と。


 はいごめんなさい。嘘です。ちょっと現実から逃避したくなる時間帯だっただけです。他意はありません。たぶん。


「それでアルグスタ」

「はい」


 正面に居る叔母様が何故かとても良い笑顔を見せてくる。


「実の母親よりも誰のことを慕っていると?」

「……」


 その言葉に何故か場の空気が文字通り下がった気がした。


 ポーラさんが帰って来て祝福でも使いましたか?


 違いますね。ノワールを抱きしめて頬ずりしている義母さまの方から大変恐ろしい気配を感じます。これはヤバそうな感じです。だってあのハルムント印のメイドさんたちがお子様ランチに突き刺せそうな小さなサイズの白旗を全員で振っているのですから。出来たら僕にもその旗を下さい。


 数に限りがあるの? 別に大きくても良いのよ?


 在庫がない。そうですか。ならば腹を括ろうか?


「そんなの決まっています」

「ほほう」


 ニタリと笑う叔母様と冷たい気配を発する義母さま。

 これが普通の異世界転移系の主人公であればどっちつかずの返答をするのだろう? だが僕は違う!


「叔母様に決まっているじゃないですか!」

「「……」」


 場の空気が増々冷たくなった。


「理由を聞いても?」


 少し驚いた感じで叔母様が問う。


 もしかして貴女も僕がどっちつかずの返答をすると思っていましたか?


「今まで受けた恩……どう考えても叔母様の方が多いので」

「「……」」


 そう。僕は恩や情を重んじる日本人ですので。あと義理と人情も大切にします。


「つまりわたくしとの縁が多かったからと?」


 そうと言えなくも無いかな?


「素晴らしいアルグスタ」


 何故かパチパチと叔母様が拍手を送って来る。


 いや~。そうですかね? ちょっと恥ずかしいかも?


「ええ。本当に凄いですとも」


 何故か叔母様の笑みが、その目が笑っていない感じに見えるんですけど?


「ただその理由を聞き、ラインリアが納得するとでも?」


 ですよね~。知ってます。先ほどから義母さまの方から危ない気配が止まらないことぐらい。

 格闘系のキャラでも無い僕がここまで感じるんです。現役バリバリの格闘キャラである叔母様たちには良く伝わっていることでしょう。


 でも相手は虚弱な前王妃。少し大きなチビ姫を相手するぐらいのことでしょうがっ!


 負けない算段も完璧です。だから僕は迷うことなく叔母様を、


「何よりこの王国で最も敵に回してはいけない強者を敵に回すその蛮勇。このスィーク、心底感服しました」

「はい?」


 この国で最も敵に回してはいけない強者? それってノイエじゃないの?


 ゆっくりと視線を巡らせると……ノイエが何故か両手に小さな白旗を。マジかっ!


「えっと……もしかして?」


 諦めて視線を最も向けてはいけない方向に向ける。


 うん。居た。修羅が居た。バトル世界の住人を思わせる禍々しきラスボスがそこに居た。


「オーガさん!」


 声の限り叫んでみる。


「おっぱいに代わり副将前王妃!」

「いや……あれは……」


 流石のオーガさんもあれは想定していなかったか? 案ずるな。もし勝てたらノイエと絶対に戦わせてやるから安心しなさい。


「安心できるかっ!」


 声を張り上げ立ち上がったオーガさんが片手を振るい棍棒を召喚する。厳密にいうと金棒だ。前に僕がプレゼントした彼女に相応しい武器である。つまり頑張れ赤鬼っ!


「試合開始っ!」

「お前っ!」


 だって義母さまが動き出したからね。うん。


 金棒を手に母様の前に飛び出したオーガさんが全力でスイングする。が、


「何処のバトル物っ!」


 まさか片手で掴んで止めたよ! というかノワールを抱いたままでやる気か? そのまま抱えて頬ずりしていやがる……あれは化け物かっ!


「ノイエ!」

「ん」


 瞬間移動を思わせる速度でノイエが横に来た。


「ノワールの回収を」

「無理」

「諦めが早すぎるでしょうがっ!」


 頑張れ母親。


「むぅ」


 拗ねながらノイエも義母さまに立ち向かう。


「おっぱい」

「はい?」


 まさか自分が呼ばれると思っていなかったルッテが間の抜けた返事を寄こす。


 気楽だな君は?


「援護射撃。炸裂系の使用も許す」

「え~っ!」


 顎が外れんばかりにルッテが大口を開いた。


「相手は前王妃様ですよ?」

「知ってる」


 だがルッテよ。君は忘れているだろう?


「あのまま放置したら僕らは間違いなく退治される。駆逐されるんだっ!」


 つまり生き残るには戦うしかない。


「こうなれば総力戦だ! 変態にニート! お前たちも働けっ!」


 片手でオーガさんを吹き飛ばしている義母さまは本物の化け物だ。あれに勝つには……こうなれば手当たり次第だ。使えるものは何でも使う!


「あれを止めた者には褒美は自由だ。好きなモノをくれてやるっ!」


 だから頑張れ皆の衆!


 って、僕ってば気づけば負けフラグの立った悪役チックなセリフを言っている気がします。


 ま、負けるもんか~!




© 2024 甲斐八雲

 もの○け姫を見ていて思った。

 大きな力で予定調和を破壊されるのも良いなってw


 そんな訳で最終戦はある種ラスボスとの戦いで終わります。

 有耶無耶という勿れ。まあオーガさんとノイエがバトルしても決着は決まってますしね。


 この決着は…どうなるんでしょう?

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実母と義母どっちが強いんだ!
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