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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 28

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2106/2335

僕の知り合いに鉄仮面さんは居ませんがっ!

 ユニバンス王国・王都郊外ノイエ小隊待機所



「それでアルグスタ? なぜわたくしに声をかけなかったのですか?」

「いえ……これはあくまでノイエ小隊の訓練の一環でして、見世物では無かったので」

「はぁ?」


 まさかキレていらっしゃいますか?


 口元を扇子で隠しているが叔母様の不機嫌そうな様子がありありと伝わって来る。


 もしかして自分、今日が命日になりますか?


 こんな時は『助けてノイエ~大作戦』なのだが、ウチのお嫁さんは叔母様が引き連れて来たメイドたちの攻撃により完全に買収されてしまった。つまり食べ物攻勢だ。言葉にしたら意味が分からないが、ノイエに対してはこれ以上ない攻撃でもある。


 次から次へと途中で買って来たのであろう屋台の食べ物をメイドさんたちから手渡され、ノイエは嬉しそうにアホ毛を揺らして食べている。上機嫌じゃないか?

 ノワールをメイドさんに預けてウチのお嫁さんは本気だ。あげくノワールも授乳を受け……いつの間に母乳の出るメイドさんを雇い入れたのかと? 否、ハルムント家は基本自前で何でも揃える。そう考えると結婚したメイドさんを現役復帰させた類か? 本当にやることに抜かりの無いメイド集団だな!


 こうなれば次なる防御方法、オーガさんの『早く始めようぜ!』に任せる予定でいたが、オーガさんへの買収も完璧だ。彼女は現在骨付き肉に嚙り付いて樽のワインを煽りつつ休憩中だ。


 羊か山羊の足をそのまま焼いたのか、生々しい形をしているがオーガさんは気にもしない。

 骨ごとバリバリと咀嚼してワインで流し込んでいる。


 つまり僕は今完全にピンチだ。


 あのおっぱいは無駄に胸を揺らして果物をはむはむしていやがるし……ノイエ小隊は食い意地の集団かっ!


「それでアルグスタ?」

「はは~」


 頭の位置はとても低く僕は叔母様のお言葉に耳を傾ける。


 ある意味でいつも通りだ。土下座スタイルに迷いがない僕もこれはこれで問題かと。


「わたくしが見れなかった分はどう補填すると?」

「……」


 何その無茶振り? 知らない。そんな無茶振りの回避方法なんて僕は知らない。


「最初の戦いはそれはそれで大変酷いモノばかり、とても叔母様が喜んでいただけるような戦いは無く」

「あん?」


 何故怒る? 事実ですよ?


「3敗して3失禁となる酷い戦いでした」

「……」


 流石の叔母様も3失禁は想定していなかった感じだ。


 負け犬たち……僕らから少し離れた場所で正座しているユリアとイーリナは、叔母様の睨みに対し僕を真似して土下座する。変態は何でも燃料に出来る人なので、1人でハァハァしている。


『失禁……私はお漏らしの女なのよ』とか口走っていたせいか、ハルムント家のメイドさんたちが気を利かせて変態の口を封じてくれた。

 ミシュも食した乾いた馬糞を口の中に押し込んでからの猿轡だ。


 あれでもまだハァハァできるのだからあの変態は本物の変態なのだろう。


「それで次はあれですか?」

「はい」


 次のあれは梨っぽい果実に舌鼓を打ちながらパイをポヨンと揺らしている。

 その破壊力に流石のハルムント系メイドさんたちも圧倒されている。自分たちの胸に手を当て……大丈夫。胸は大きさじゃない。ハリと形です。


「あれがオーガに勝てるのですか?」

「どうでしょう?」


 ウチの秘密兵器は不可能を可能にする系の運の良さを持っている気がします。

 何よりあのおっぱいにはまだ可能性が詰まっているかと。


「可能性ですか?」

「はい」


 つまりあの胸で机の上に置かれている空き缶を押し潰すようなそんな感じのあれです。


 日本に居た頃にそんな動画を見ました。あそこまで大きいと流石に引くけど、比率でいうとリグがまさにあんな感じなんですよね。大きすぎるのも大変なんだな。


「アルグスタ? わたくしを揶揄っているのですか?」

「違いますって」


 だから何度も申している通り、本日はノイエ小隊の訓練の一環です。

 数合わせでウチのユリアも参加させましたが、大したお笑いも生まずに早々に失禁しました。あれはしばらくハードな訓練をする予定です。


「問題は現役の隊員である変態とニートです」


 あの2人は酷い。特に変態は酷い。酷い変態です。あれです。漫画で言うところの最初の頃に期待して登場したはずなのに、気づけばお笑い要員に成り下がってしまったようなライバルキャラです。本当に酷い。


 それにあのニートもそう。結構やりそうに見せていつも負けてばかり。あれが勝つ場面が思い浮かびません。あれに負けたやつが居るのでしょうか? あっ居たな。ウチの残念チビメイドが。


 つまり我が家は負け犬の集まりか?


 これはいかん。大問題だ。ここは将来性豊かなスズネの成長に期待しようと思います。

 あれはあそこの変態と違って変態臭を発しません。このまま真っ直ぐ育てれば……ちょっとそちらのメイドさんたち? スズネが一番危ないって単語が聞こえた気がしたのですが気のせいですか? はい? 気のせい? コロネの馬鹿の方が問題? あれはあれで馬鹿だけど意外と可愛い所もあります。あれです。自分の所のペットがどんなに馬鹿でも許せてしまうあの感覚です。


 で、スズネの何が問題ですと?


 おい。全員こっちを見ろ。何故目を逸らす? 僕も自分の背後から漂う禍々しい叔母様の気配が怖いんだ。だからこっちを見て確認してくれ。

 何故全員してスカートが汚れることを恐れずに土下座する? メイド服はメイドの命だろう? それを汚すだなんて僕は許さないぞ?


「ええ。わたくしもここまで蔑ろにする甥の存在が許せません」

「あはは。そんな蔑ろだなんて、僕は叔母様のことを実の母親と思うほどに慕っています」


 そう言えばウチの母親は何処に行った? うん。忘れておこう。あのマイペースな母親は基本人畜無害だし、野放しにしても悪さをするとは思えないしね。


「ほう。わたくしのことを実の母親のようにと?」

「はい」

「それは先代王妃と比べてですか?」

「是非も無し」


 その通りでございます。自分叔母様のことを実の母親のように、


 ミシッ!


 ……はい? ミシ?


 余りにも聞きなれていない音に視線を巡らせると、叔母様が乗って来た馬車の扉が変形していた。

 内側から物凄い力で押されたのか、『く』の字の見本とはこれですねと言いたくなるほど見事な曲線が?


「あるぐすた~!」


 そして聞こえる声は地を揺るがすほどの恐ろしいバリトンボイス。

 合っているかな? 音楽用語が良く分からない。ただ1つ分るのは地獄で閻魔が発する声ってこんな感じだろうな。


 ギシギシ……ガゴンッ!


 ゆっくり開こうとした馬車の扉が半ばで落ちた。


 頑張ったよ君は。僕はその雄姿を忘れない。だから大至急その扉に蘇生魔法を! そしてあの地獄の口を塞ぐのです。具体的に僕の命がヤバいから!


 だが遅かった。


 扉を失った枠に女性の手袋が姿を現しワシッと掴む。

 ゆっくりと姿を現したのはドレス姿の女性だ。ただいつもとは違いその顔は無機質な仮面が嵌められている。鉄仮面的なあんな感じだ。


「僕の知り合いに鉄仮面さんは居ませんがっ!」


 何故ここにお母様がっ!




 馬鹿兄貴の正妻、リチーナさんは現在妊娠中だ。それもまだ安定期と呼ばれる期間に届いていない。結果として体調を崩しやすく、また何かあると直ぐにイライラするそうだ。そのためお屋敷でいつも通りにじゃれ合っていたお母様と叔母様はリチーナさんの逆鱗に触れてとうとう追い出されたという。


 ここ最近体調が良いお母様は、お城に行ってそちらで過ごす予定だったとか。

 何でもチビ姫が『たまには遊びに来てくださいです~』と声をかけて呼んでいたとか。

 あのチビもちゃんと嫁姑をしていたことにビックリだ。


 そして2人は馬車でお城に向かう途中、僕の楽しみ……ノイエ小隊の強化訓練の事実を知り、急遽行き先を変更。ここに直行したらしい。


 で、パパンは? 先に馬車でお城に向かったと? あ~。確かにパパンに普通の馬車は辛いからね。専用の馬車で先に行かせて、それで嫁はこんな場所で寄り道かっ! 早く愛する夫が待つお城に、はい。裏切者の義理の息子を叱るのが優先されるんですね。知ってます。アルグスタさんは全部知ってます。


 そんな訳でまた安定の土下座スタイルに戻り僕はお母様と叔母様に対して深々と頭を下げているわけです。


 どうしてこうなった?




© 2024 甲斐八雲

 前王妃ラインリアさんも合流です。

 スィークはラインリアの専属メイドなので、ある意味でこれが正しいペアリングなんですけどね。


 そしてドンドン立場をヤバくしていく主人公…どうなる?

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