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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 28

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2102/2335

どらごんすれいやーって何?

 ユニバンス王国・王都郊外ノイエ小隊待機所



 ノイエ小隊待機所と呼ばれるここは元々小さな丸太小屋が存在する更地だった。

 王都郊外に存在する対ドラゴンの最前線なのにも関わらず、壁も存在せず建物が1つというクレージーな環境だったのだ。


 それを直したのが僕である。


『ノイエに相応しくないじゃん』と言うことで頑張った。頑張り過ぎた。

 敷地は約5倍ほどに広がり外には丸太を地面に打ち込んで作った壁も存在する。ドラゴンが全速力で突進して来れば破壊される壁だが、助走が出来ない感じで立木が存在している。


 よって地を駆るドラゴンは壁を壊せない。

 ゲシゲシと壁を蹴ったり体当たりをしている間に無慈悲な矢が飛んで来て狩られてしまう。


 そう。現在ノイエ小隊でノイエに次いでドラゴンを狩っているのが副隊長のルッテだ。

 モミジさんもそれなりに狩っているが、移動に難があるのでどうしても後手に回る。固定砲台であるルッテの方が数を狩れたりするのだ。


 そしてこのおっぱいには“天眼”と呼ばれる祝福がある。

 上空に『目』を作り浮かべ全てを見つめる。チート中のチートだ。


 問題は建物の中に入られると見れない。それと『上空に浮かべる』という指定があるので、見れない角度も存在している。万能に見えて欠陥もあるが、それでもチートの祝福だ。羨ましい。


 それに比べれば僕の祝福なんて欠陥だらけだ。

 ただドラゴンに対してのみ最強とか芸が無い。


 なぜこんな話をするのかというと、中堅であるイーリナが負けて失禁……小川の源泉と化したのでちょっと会場の掃除が行われていて暇なのだ。


 3戦して3失禁とかどうなのよ? それで良いのかノイエ小隊?


「ユリアはノイエ小隊では無かったな」


 うんうんと頷き整地が進む会場を見る。


 トンボ掛けしている人たちはノイエ小隊所属の一般兵士だ。

 国軍からノイエ小隊に移籍し、今では完全にノイエ小隊の人となっている。


 国軍との違いは鎧の一部分に純白のパーツが取り付けられていることだ。

 純白はノイエ小隊と言うかノイエの象徴だ。ノイエの色だ。よって他者が使うことを僕が許さない。使おうとする奴はドラグナイト家と戦争だ。


 ただしメイドのエプロンとカチューシャが純白なのは問題無い。あれはそういうモノだ。決して叔母様が怖かったとかは無い。

 うん。違うから。平和的な話し合いで解決している。ホントウダヨ?


「アルグ様」

「ん?」


 ノワールを抱いたノイエが僕の横に来た。


 ぐっすり寝ている感じのノワールだが、コイツは意外と食えない性格をしている気がする。


 もしかしたら何かしらのチート持ちか? 作ったのがどうやらあの悪魔っぽいから間違いない。変な機能を上乗せし過ぎて大暴走しているパターンか?


 まあ良い。ノイエがこうして慈しんでいるから問題ない。

 今だってノワールを抱きかかえて……君はいつの間に鎧を脱いだ? まだお仕事の途中だと覚えていますか?


「平気」


 何が?


「おっぱいさんが居る」

「……」


 ノイエ的には固定砲台のルッテが居れば大丈夫だと言いたいらしい。ただあれが撃ち殺した死体はボロボロにするので商品にならない。よってあのおっぱいはノイエ小隊の秘密兵器なのだ。


 ただあのおっぱいがドラゴンスレイヤーと呼ばれないのには理由がある。ドラゴンスレイヤーは中型の個体を単機討伐が出来て初めて名乗れるのだ。


 ぶっちゃけ小型のドラゴンなら単機で討伐できる人はユニバンスにも居る。居るのだけれど、中型は現在2人だ。僕とノイエだけ。オーガさんとモミジさんはお客さんなのでウチのドラゴンスレイヤーとカウントできない。そしてその決まりのおかげであのおっぱいはドラゴンスレイヤーを名乗れないのだ。


「あっ忘れてた」

「なに?」


 ノワールの頬をプニプニしつつ、着ているワンピースの上を緩めているノイエが僕を見る。


 何故脱ごうとしている? ノワールにミルク? だから出ないでしょう? 今日は出そう?


 そんな訳でノイエがノワールの口を胸元に運んで……必死に抵抗しているノワールが踏み踏みしている猫のようだ。何処か見てて愛らしい。


「で、なに?」

「そうそう」


 実はこの大陸にドラゴンスレイヤーって何人居るのかな?


「どらごんすれいやー?」


 ノイエさん? 何故ちょっと疑問形な片言なのですか? 自分の職業を忘れてませんか?


「大丈夫。後で思い出す」

「今思い出して。本当に」


 自分がドラゴンスレイヤーであることを忘れているよ。このお嫁さん。


「アルグ様」

「ほい?」

「どらごんすれいやーって何?」

「……」


 それは本気の質問ですか? それとも哲学的な問いですか?


「おっぱいさんもできる」

「そうだね~」


 僕の祝福を得た矢を飛ばしまくっていたルッテが目の前に居る。

 ノイエがここでサボっている……のんびりしている都合、代わりにウチの秘密兵器の出番って訳だ。


 彼女が使用している矢は僕が祝福を与えた物なので一撃で屠っている。

 確かに今の彼女ならドラゴンスレイヤーを名乗っても良いんじゃないの?


「でもあれは僕の祝福だし」

「でも小さいのは狩れる」


 ですね。


 爆裂系の矢を使うことになるが、それさえ使えばルッテはドラゴンを狩れる。問題は大きさだ。

 中型を狩れればドラゴンスレイヤーを名乗れるのであれば……あれ?


「アイルローゼも可能では?」

「アイ姉さん?」


 アイルローゼ~! 聞いているか? 聞いていたか? 喜びの余りにむせび泣いているか?


 あのノイエが自然とお前の名前を呼んだぞ。完璧じゃないけどね。

 でもノイエはこれが限界だ。つまりちゃんと名を呼んだと言っても過言ではないのだ。


「アイルローゼの魔法なら可能かなって」


 あの腐海はチート級の魔法だ。どんな生物も受ければ腐ってしまう。生物殺しのチート魔法だ。


「できる」


 出来るんだ。


 ノイエが断言しました。それはつまりアイルローゼも名乗れると言うことだ。


 ってノイエさん? ノワールを僕に預けて何処へ?


「ちょっと持って来る」

「何を?」


 お~いお嫁さん。だから何処へ?

 ぴょんと飛んで行ったノイエが荷物を抱えて持って来た。抱えては嘘か。頭上に掲げて持って来た。


「ん」


 ほいっと整地が終わった地面にノイエが放り投げたのは小型ドラゴンの死体だ。

 頭を狙えと言ったのに胴体に大きな穴が開いている。


 おいルッテ。これはどういうことだ?


「だから相手が動いているからで」


 言い訳をしながら祝福を使用しつつおっぱいが矢を放った。


 最近思うんだが、それって普通の長弓だよな? はい? 魔道具なの? 誰が作った? えっとウチの妹様が持って来たと?


 借りて確認したら『私作』と刻まれていた。それも日本語だ。普通の人が見たら角ばった謎の傷だ。つまり悪魔が作った物だ。あの悪魔め。


「凄く良く飛ぶんです」

「だろうね」


 だってそれは国宝以上の魔道具です。国宝級の上、伝説級の一品です。

 まあそんなことを言ったら、このおっぱいは扱えなくなるので言わないけどね。


「で、ノイエさん。その死体は?」

「ん」


 ドラゴンの前に立ったノイエが右手を掲げて……パチパチと左目を閉じたり開いたりする。


 時折見せるノイエの不思議動作だ。それは何を?


「ん」

「はい?」


 パチパチパチ……と瞬きし続けたノイエの瞼が止まった。


「これ」

「はい?」

「ん」


 掲げていたノイエの右手が振り下ろされる。死体に向けられた彼女の右手から迸った物は、伝説の攻撃魔法。アイルローゼの腐海だ。

 何とも言えない禍々しい色の煙がドラゴンの死体を覆い、一気に鼻を刺す嫌な臭いが広がる。腐臭だ。


 あっという間に骨も残さずドラゴンの死体が融けて液体となった。


 地面に腐臭を放つ染みを作ったノイエが、『お終い』と言いたげに僕の元へ来てノワールを回収して行く。


「ん」

「……」


 え~っとノイエさん? それはアイルローゼの魔法なら、ドラゴンスレイヤーを名乗れると言いたいのかな?


「うん」

「……」


 つまりそういうことらしい。


 ……ツッコミどころが多すぎるだろうがっ!




© 2024 甲斐八雲

 ついつい忘れがちですが、この大陸にはドラゴンスレイヤーがそれなりに居ます。

 ただサツキ家のように非公式な存在も居たりします。

 そしてドラゴンスレイヤーの決め方は国際的な決まりがあって…誰が作ったのかって?

 もちろん。みんなも知ってるあの人です。


 で、忘れられていますが、実はユニバンスにも非公式な存在が居ます。

 問題は騙されていて自分も認識していないんだすけどねw

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