その熱量に引くわ
ユニバンス王国・王都郊外ドラグナイト邸
「命令です。回れ右してコロネの部屋に行って彼女を慰めなさい」
「……」
物凄く不満げな表情を浮かべる妹様が居る。
だが彼女の本質はメイドだ。ユニバンスのメイドは自分が主と認めた人物の命令には絶対服従らしい。もし自分の意に反する命令をされた時はご主人様の気の迷いだから、殴ってでも正気に戻すのが正しいとか。本当に絶対服従なのか悩んでしまうが。
そんなユニバンスメイドのポーラさんは……これこれ拳を握らない。僕は間違ったことは言っていません。間違っていないから考えを正す? 意味が分からないぞ?
渋るポーラを部屋から追い出し今夜は1人のんびりと過ごすことにする。
使う部屋がアイルローゼの部屋なのは深い意味は無い。何となく先生の残り香を嗅ぎたい気分だっただけだ。
ファシーの部屋は覗いてみたけどベッドが赤すぎて目が疲れた。まさか天蓋付きのベッドで天蓋が真っ赤なのは想像していなかった。
先生の部屋は綺麗に整理されている。ポーラが小まめに整理整頓をしていた成果らしい。
一体どこから仕入れたのか疑問の湧く魔法の本とかが本棚に並んでいる。この手の本って高額なんだけどいっぱいあるね。
部屋の隅には全部ガラクタな魔道具が大箱の中に積まれている。これはゴミでは無くて材料になるらしい。魔道具のリニューアルはしない先生だけど、リサイクルはする。
後は……タンスの中を覗いてみると下着が置かれていた。ブラの数は少ない。代わりにショーツの数が多い。何も言うまい。だが待て。
パンパンと手を叩いたら部屋の扉が開いた。
「呼んだ?」
「香ばしい立ちポーズを決めるな悪魔」
「ふっ」
何故か前髪を指先で払って妹の姿をした悪魔がやって来た。呼んだんだけどね。
「呼んでも来ないのにこういう場合は来るのね」
「当たり前でしょ? お兄様が愛人の下着を覗いてハァハァしているのよ? そこで呼ばれるってことは……」
ちょこちょこと移動して悪魔がベッドの上に横になった。
「バッチコーイ!」
腰を持ち上げて股間を叩くな。そのM字の意味は何だ? 君は馬鹿か? ポーラに手を出すとしたらお前じゃなくて本人に手を出すわ。
きっと消え去ってしまった初めての頃のようなファシー的な反応を見せてくれるはずさって何を期待している? ポーラは可愛い妹ですから。未成年には手を出しませんから。
「で、悪魔よ」
「突っ込んでよ!」
「どっちの意味だよ?」
体を起こして悪魔がやさぐれる。だから愛らしいポーラの姿でそんな恰好をするなと言いたい。
「ねえ悪魔エモン」
「な~に? 絶倫王」
「誰がだ?」
「自分の胸に手を当てて考えてみなさい」
「うん。普通。つかむしろ僕の周りに言って欲しい」
「あっそう。で、なに?」
だから投げやりになるなって。
「過去にストッキングって作らなかったの?」
「アンタ馬鹿?」
何処のアニメだ。映画だ。
あの映画……完結するまで見れなかったな。
「ちょっと日本に戻ってあの映画が完結したか知りたいんだけど?」
「面倒だから止めてよね。きっとあの監督の“ピー”な“ピー”を見せられて終わるわよ」
「辛口なっ!」
お前は全世界の何かを敵に回す気か?
「って始祖の馬鹿が言ってた」
「本当かよ?」
まあそれは良い。
「で、作ってないの?」
「だから馬鹿なの? ストッキングの原材料って知ってる?」
「知らない」
「ポリウレタン。で、それは何処にあるの?」
敵は科学かっ!
膝から崩れ落ちて絶望する。
そんな僕に悪魔が歩み寄って肩を叩いてくれた。
「アンタが考えそうなことをこの私が考えなかったと思うの?」
「師匠っ!」
「弟子よっ!」
ヒシっと抱き合い僕らは涙する。
異世界において科学力ほど厄介な敵は居ない。神様の力でも借りないと科学力は補えないのだ。
「ってお前たちが神殺しをしたから希望が無くなったのか!」
「とんだ言いがかり~!」
手を伸ばして悪魔の頬を左右に引っ張る。
この悪魔め……ポーラから出ていけ! ウチの妹を汚染しおって! 元に戻せ! 素質の無い人間は腐らない? ウチのポーラの悪口は許さんぞっ!
互いに頬を引っ張り合ってストレスを発散した。
「はぁはぁ……でも代わりにこれなら作ったわよ」
「何よ?」
「じゃじゃ~ん! 絹で作った網タイツとガーターベルト~!」
「師匠っ!」
やはりこの師匠は尊敬に値する人物だった。
もう一度ヒシッと抱きしめて相手の頬にキスをする。
「お兄様。その熱量に引くわ」
「気にするな。で、いくら?」
「非売品とぉっ!」
あん? 売らないだと? なに寝言を言っている? 君は黙ってそれを僕に渡せば良いのだよ。断るだと? だから理由を述べよ。納得しない限りお前の鼻の穴を広げ続けるぞ?
「このワンセットしかないのよっ!」
僕の腕を払って悪魔が吠えた。
「なら案ずるな。コリーさんに頼んでまた作らせる」
「こんな手の込んだのを作らせると大変よ。きっと凄い額の請求書が来ると思うし」
「あん? 金持ちっていうのはこんな所で放蕩する存在なんだよっ!」
「クズだわ~」
何とでも言え。僕は先生に網タイツを穿かせたいだけだ。そして踏まれたいだけだ。
「まあ良いわ。後で請求額を見て驚かないでよね」
告げて悪魔は荷物を片付けると部屋を出て行った。
実に楽しい時間を過ごした。後はゆっくりと寝て……とまた扉が開いた。
「何だよ? ってホリー?」
「ええ。どうかしたの?」
後ろ手で扉を閉じたホリーは薄着の寝間着姿だ。
スケスケで……って下着を身に着けていないだと?
「今日はノイエと一緒に寝るって言ってたよね?」
「ええ。でもノイエはもう眠ってしまったしね」
「へ~」
何だろう。あのノイエが大人しく寝ただと?
ただ意外とノイエは姉たちの前だと素直だからな。『もう寝なさい』と言われたら寝そうだ。
「それに全身を縛って逃げられないようにしてあるから大丈夫よ」
「……」
不思議な雑音が?
「最初は抵抗したけど無理に解こうとすると首の部分が絞まるように縛ったら、何度か気絶して危ない物と学んだみたいで大人しく寝たわ」
自慢げに語ることか? それは気絶しているのではなく死んでいるのは? ノイエなら窒息死してもしばらくすれば息を吹き返すけど、そんな酷いことをしたら後の姉たちが殺しに来るよ?
僕の視線にホリーがお姉さんっぽくクスクスと笑う。
「あら? 私がノイエに酷いことをするとでも思っているの?」
「いいえ全然」
「でしょ? ちゃんと首の髪は解いて来たから今は純粋に寝ているはずよ」
「そうですか~」
ならセーフなのか? 判定は残りの姉たちに一任だな。
「で、アルグちゃん」
「はい」
どうやら僕に安眠は無いらしい。知ってたよ。
スススとホリーが歩み寄って来て僕のことを抱きしめる。
「好きよ」
耳に唇を寄せてホリーが優しく囁いて来る。
「大好き」
ちゅっと耳に唇の感触がした。
「愛しているの」
「うん」
ホリーの愛の深さは知っている。
「でも分かってる。お姉ちゃんって愛情が深すぎてちょっと強引なところがあるから」
あれでちょっとなんだ。ホリーのちょっとじゃない強引ってどんな恐怖な出来事が起こるんだろう?
「前の時だって本当は外でしようだなんて思ってなかったの。ただアルグちゃんがノイエと仲良くしているだけでもお姉ちゃん嫉妬しちゃって……本当にダメだと思っているんだからね」
「そうですか」
反省だけなら猿でも……何でもありません。
優しく抱き着いて来るホリーが柔らかくて暖かい。何よりその胸のボリュームが半端ない。
「だからねアルグちゃん」
「はい」
「今日のお姉ちゃんは自制心を見せようと思うの」
「……」
自制心を見せると言うホリーが僕をベッドに誘う訳です。
貴女の自制心って何ですか? 僕を襲わないことですか? 誘うのはセーフなのですか?
僕を引き込むようにホリーがベッドに倒れ込んだ。
結果として僕が上だ。ホリーを組み敷いている。
「今日はアルグちやんの好きにしていいから……だからお姉ちゃんだけを見ててね」
しおらしいことをホリーも言えたんだね。
襲われないなら体力のセーブも出来るはずだ。悪くないのか?
それに大人しいホリーとするのは悪くないはずだ。美人だしエロい体をしているし。
流れるようにホリーを抱きしめて行為に及んでしまった。
良い感じで疲れた。気持ち良く微睡みを楽しむ。
ちょっと調子に乗って色々としてしまったが、ホリーは全て受け入れてくれた。
流石お姉ちゃんだ。懐が深い。
「……くふふ。アルグちゃんの扱い方が分かったわ」
ん? ホリーの声が? 夢かな?
「たまに甘えさせてあげれば良いのね。大丈夫。物足らなくても次の時に……クスクスクス……」
夢だよね? 人って夢でも冷や汗って出るのかな?
© 2022 甲斐八雲
悪魔が来りてエロアイテムを提示する。
過去の刻印さんって何をしていたのか…怖いわ~。
絞めつけてからの自由。それで制御を目論むホリーさんなのでしたwww




