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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 25

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1526/2417

姉とかじゃなくて?

 ユニバンス王国・西部エバーヘッケ家



「おうまさんです」

「うむ。長閑だね~」


 ここは本当に田舎って感じがして好きだ。

 とにかく頑丈で高い柵に囲まれているけれど、馬車の外には長閑な風景が広がっている。

 遠くに見えるこじんまりとした屋敷の外には柱のような物が天へと向かい立っていて、それに小さな蓑虫がぶら下がっているようにも見える。気のせいだろう。


 ゆっくりと視線を窓の外に向ける。


 対ドラゴンの為に柵と馬が逃げ込める小屋などにお金をかけているので、エバーヘッケ家は常に貧乏だ。ただこの家を中心にしてこの地域の下級貴族たちが踏ん張ってくれたおかげでユニバンスは大戦前から軍馬を最低数確保して来た。


 お馬さんってちゃんと育成しないと戦場なんかじゃ使えないらしい。

 その育成も……あっちで柱から降ろされた蓑虫が馬の尻に引きずられて走っているな。


 ほら見なさいノイエ。ちゃんと育成されているからあの馬は真っ直ぐ走れるんだよ。


「にいさま?」

「うむ。長閑だね~」


 それ以上に僕に何を言えと?




「これはアルグスタ様~!」


 停まった馬車から降りていると、農作業中ですって格好をしたオッサンが全力で走って来てこけた。頭からスライディングして……ルッテの足元で止まった。


「この度は我が息子の~! 何も見えない!」

「オッサンオッサン。息子の嫁のスカートの中を覗くのは早いぞ?」

「なんてことを~!」


 大きくのけ反り彼はルッテのスカートから抜け出した。


「申し訳ない。悪気は……嫁の顔が見えない~!」

「それは王都でも良くある事故だから仕方ない。もう数歩下がれば見えるさ」

「何ですとっ!」


 ジリジリとオッサンが後退して……何故か滂沱の如くに涙した。


「こんな美人な嫁が~!」

「今の角度で顔は見えないだろう?」


 テンションマックスだな~。そんなに嬉しいのか父親よ?


 確かに念願であったエバーヘッケ家の長男の嫁だ。

 どこかの娘のせいで結婚とは無縁になっていた一族に降って湧いた奇跡だからな。


「あはは~。あの~? 私がルッテです。宜しくお願いします」

「おお~! ルッテ様~!」


 すがるなすがるなオッサンよ。

 呆れ果てて表情を無にしているメッツェ君と、緊張が吹き飛んでどんな顔をすれば良いのか分からなくなっているルッテと……まあ良いんじゃないの? かたっ苦しい挨拶よりかはこっちの方が見てて笑える。


「挙句アルグスタ様~」


 テンション高めのオッサンがこっちを見た。


「あのミシュにあのような素晴らしい御仁の伴侶を~!」

「あ~。うん。そうだね」


 何度でも言おう。マツバさんは普通にしていれば真面目なんだ。普通にしていれば。


「貴方様こそ我が一族の恩人です~!」

「そこまで大げさに言わなくても」

「いいえ。メッツェにはまだ機会があったとしてもあのミシュはもう絶対に無理だと思っていました」


 おい父親。諦めが潔すぎるぞ?


「何たる奇跡! 流石奇跡の王子!」

「何だそれ?」


 知らない称号がまた増えている。


「知らないのですか? アルグスタ様はどんな無理な条件でも土壇場でひっくり返して勝ちを拾うと……息子の手紙にそう書いてありましたが」

「ん?」


 息子さんに視線を向けたら恥ずかしそうに視線を逸らした。

 まあ確かに僕は常に勝ちを拾ってきているから……誉め言葉だと思って受け取っておこう。


「取り合えずマルフィさん。落ち着いてお話を……って」


 パカラパカラと馬が走って来る。

 女性を背に乗せて走って来る馬の背後では軽い打撃音が。

 そう言えばミシュが喜び庭駆け回っていたな。それか。


「あら~。その御方が王子様~」

「……」


 二十歳ぐらいの女性だ。

 凄く落ち着いた感じの……ミシュを大きくして女性っぽくしたらこんな感じって見本のような女性だ。


「初めまして~。王子様~」

「はぁ」

「私が~。ミシュエラとメッツェの母親です。名前は~。アルパと申します~」


 馬上で挨拶して来る人があのミシュの母親らしい。


「姉とかじゃなくて?」

「あら~。お上手ですね~」


 おっとりとした声が響く。と言うか冗談じゃなくて結構本気の質問だったんだけどね。


「私が後3日ほど若かったら、夜伽の相手を務めて孕ませてもらったのに~」

「3日かいっ!」

「ええ。丁度月のあれが~」

「まだ終わってないのかいっ!」

「うふふ~。私はまだまだ現役です~」


 恐ろしいことを言いながらアルパさんは馬から降りると、ズタボロになった蓑虫を抱え上げた。


「代わりに~。この子とか~。どうですか~?」

「王都でも有数の売れ残りをお勧めしないで」

「あら~。大丈夫~。売れ残りでも~。穴は使えるから~」


 我が子なのに恐ろしいことを言う人だな。天然か?


「その穴に突っ込むぐらいなら普通にお嫁さんを相手にします」

「あら~」


 ズタボロの我が子を放り捨てミシュママはノイエにへと近づいた。


「あら~。こんなに可愛い子。私、初めて見たわ~。触っても良いの~?

「お触りは厳禁です」

「残念。なら剥いて観察は~?」

「それも却下です」

「ならなら一緒にお風呂に入って隈なく洗うは~?」

「専属メイドが居るのでお構いなく~」

「え~!」


 何故かミシュママは地面の上に横たわった。


「嫌よ嫌よ。触らせて。撫でさせて。味わらせて~」

「味見は禁止です」

「え~」


 飛んだり跳ねたり転がったりで、彼女は不満を体現する。


「大丈夫よ~。ちゃんと味わう場所は事前に言うから~」

「言わんでよろしい」


 天然入り過ぎて、何か他の部分が溢れ出て事故っている感じの人だな。


「で、マルフィさん」

「何でしょうかアルグスタ様」


 妻は馬上で夫は地面に座り込んで……この家のパワーバランスを垣間見たような気がします。


「この人、本当にミシュの母親さん?」


 質問の1つもしたくなるだろう。言いたくないとけど、これだよ?




「改めまして~。私がアルパ・フォン・エバーヘッケに御座います~」


 ほわほわとした感じの美人さんが頭を下げて来る。

 場所はエバーヘッケ家のお屋敷だ。客間らしい場所に通された。

 メッツェ君とルッテはマルフィさんに捕まっている。と言うか余りの展開に緊張感を失いまくりのルッテが『馬に乗りたいです』とか言い出してそっちが優先された。


 ポーラも僕をことをジッと見つめて来るので『好きな馬を選びなさい。でもお世話できる頭数までだからね』と言っておいた。

 言わないでおくとポーラってば全部買うとか言い出しそうな気がしたからだ。


「初めましてアルパ夫人。自分がドラグナイト家当主のアルグスタに御座います」

「あらあら~。本物の王子様に見えるわ~」


 元が付くけど王子様だからね。


「で、こっちで半ば寝ているのがノイエです」

「はい」

「あらあら~。英雄様がお眠よ~。ベッドが良い? それとも私の膝枕が良いかしら~? もちろんベッドよね~? 添い寝もしてあげるわ~」

「お断りします」

「え~。そんなに可愛らしいのに~。独占はダメよ~」


 良いんです。独占しても。ノイエは僕のお嫁さんです。


「まあ冗談はこれくらいにして~」


 ミシュママは笑いながら僕らに椅子を勧めて来た。


「真面目なお話をしましょうか~」

「しても良いの?」

「良いのよ~」


 1人先にソファーに座ったママさんが僕らを見上げて来る。


「だって~。私は常に~。この貧乏一家の金策担当ですもの~」


 ニコリと笑いながらママさんが僕だけを見て来る。


「大切な太いお客様を逃すなんて出来ないわ~」

「うわ~。ぶっちゃけたよ」

「当り前よ~」


 うふふと笑うママさんの表情が若干怖い。


「いつも縁がなくて、私が金策で屋敷を離れていると貴方たち王子様が来るのよね~。本当に自分の縁の無さを今日まで何度も呪ったわ~」


 僕としては今日来てしまったことを若干後悔し始めていますけどね。


「でも~。ようやくアルグスタ様に会えたわ~」

「で?」


 おっとりとした口調のままにミシュママは、ソファーから立ち上がる姿勢のままで……僕の腰に抱き着いて来た。


「お願い~。今年は本当に危ないの~。具体的には金利が払えないほど危ないの~」

「……」

「望むのならこの体を好きにしても良いから~。どうか資金援助を~」


 生々しい話が……僕ってここに何しに来たんだっけ?




© 2022 甲斐八雲

 おっとりマイペースで天然の入った…それがミシュママです。

 普段は金策に走り回り、どうにか頑張って戻って来ると借金が増えて柵が強固になっています。


 今年は本格的にピンチです。

 今までの金利が重くのしかかって来ていて…で、主人公は何しにここに来たんだっけ?

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― 新着の感想 ―
[一言] お母様。。。。? なにすごいこといってるの。。。? シリアス先生早く起きてくれー
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