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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 25

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1525/2418

にいさまにあやまるのです

 ユニバンス王国・西部街道



「アルグ様」

「遠くに行っちゃダメだよ?」

「はい」


 お嫁さんがお手洗いにでも行く感覚で姿を消した。

 姿を消すっていうのはちょっと違うかもだけど、ノイエ的にはお花摘み感覚だ。


 離れた場所からこの世の物とは思えない生き物の断末魔が響いてきた。


「なにっ? なにっ? なにっ?」


 突然の声に馬車の近くでぐったりとしていたコロネが慌てて辺りを見渡している。が、彼女以外で動じる者は、メッツェ君が少し顔を上げて『いつものか』と言った感じでまたルッテとの会話に戻る程度だ。後は誰一人として動じない。気にもしない。食事中に響いて来た救急車のサイレンぐらいにスルーだ。


「これこれ新入りよ。はよ慣れなさい」

「……」


 うりうりとコロネの頭を撫でてやる。


「今のは冬眠しきれていない哀れなドラゴンが天敵によって狩られた断末魔だ。たぶんもう何回か」


 告げている内に3度ほど響いた。


「ノイエさん絶好調だね」


 馬車移動のストレス発散を兼ねているのかもしれない。

 僕にずっと甘えられるから不満は無いのだろうが、ノイエとしては自分の足で動き回ることを好む。黙って椅子にでも腰かけていれば深窓の令嬢にしか見えないけど、基本ノイエは体育会系だ。体を動かすのが大好きっ子である。


「気安く触らないでよ」

「はいはい」


 相手が何も言わないからと頭を撫で続けていたらコロネが怒り出した。


「私はまだそこまで心の整理は出来てないんだから」

「はいはい」

「……そんな風に甘く考えると痛い目を見るんだから」

「ほいほい」

「っ!」


 僕に揶揄われているのかと思ったらしいコロネがスカートのエプロンの裏に両手を突っ込んだ。

 ただそこまでだ。彼女はそれ以上動けない。


「ちなみに余り冗談が過ぎると、僕は笑って許すけど周りの人たちが怒り出すから要注意ね」

「……ごめんなさい」

「うん。許してあげる。代表してポーラ。判決は?」

「……きょう、もういちどしたらしまつします」


 コロネと僕の間に立つポーラは全身から冷気を迸っている。コロネの背後にはミネルバさんが立ち、首に手をかけて捻れば脊髄を破壊しそうな感じにも見える。ルッテも弓を構えているし、ミシュも短剣を引き抜いている。

 何より僕の横にはドラゴンの返り血を浴びて戻って来たノイエが居る。


「ほらほらノイエさん。その汚れた服を着替えようね」

「はい」


 アホ毛をクルクルと回しているノイエは……そのアホ毛ってドラゴンレーダーとかじゃないよね? 探してますか? 探しているでしょう? ほら北の方を向いたらノイエが姿を消したよ。


 もう一度断末魔が上がり、ノイエが満足気に戻って来た。




「ごめんなさい」

「たましいがこもってません」

「ごめんなさい」


 お姉ちゃんによる妹分への教育がまだ続いている。


 ポーラさん。コロネもきっと馬車の運転で疲れてただけだから、そこまでイジメない方向でね。指導はイジメではない? 僕があっちに居た頃はもうその言葉は通じない世の中になっていたのだよ。お前が頷くな悪魔。お前は平成の次を知らない女だろう? 知っている? まだ思い出せないだけ? 言い訳ばかりだな……ちょっ! 土の塊を投げるのは禁止。


 師弟の指導から逃れ僕は焚火へと戻る。


 乗馬でなら1日で目的地に着くのだが、今回は馬車での移動となったので速度が遅い。

 結果として一泊してから明日エバーヘッケ家に到着することとなった。


『先走りしてくるわ』と言ってミシュが変態を連れて先ほど実家に向かったので、僕らはせっせと野営の準備だ。貴族様をしているせいかあれだけど、この街道沿いで焚火をして~と言う環境にワクワクしている僕が居る。焚火って昔からテンションが上がるんだよね。


「ノイエさん。薪は乾いた枝とか専用の物を使うから」

「むう」


 一気に火を起こしたくなったらしいノイエが、近くの立木を引き抜いて持って来た。

 生はダメです。煙ばかり出て燃えません。燃えませんがノイエさん。その辺の枝を払って……そうそう。で、そこに置いてくれますか? 椅子の完成です。


 ノイエと並んで椅子に座ると、払った枝をミネルバさんがすべて運んで行った。

 動じることなくさっさと片付ける辺り、ミネルバさんってやっぱりハルムント家のメイドなんだな。


「さあ、にいさまにあやまるのです」

「……ごめんなさい」


 ポーラに促されコロネが謝って来た。


 完璧な角度で頭を下げてくるコロネを見てて思う。魂はもうこもっていない。

 ポーラの圧で何かが折れかけ心ここにあらずと言った感じだ。


「ノイエ」

「はい」

「ちょっとコロネを捕まえてて」

「はい」


 ぴょんと椅子から立ち上がりノイエがコロネを抱えて戻って来る。

 ノイエに捕まっていればポーラもこれ以上コロネにきつく当たれまい。


 ぐったりしている少女を抱きしめ……ノイエのアホ毛が忙しなく動き出した。


「アルグ様」

「ほい?」

「この子、誰?」


 それを今聞く貴女が凄いです。


「妹の妹とか自分で言ってたでしょう?」

「……」


 首を傾げないの。もう忘れたの? 忘れるか。ノイエだし。


「コロネはウチで預かったポーラの弟子だね」

「弟子?」

「そうそう」


 クルンとアホ毛が回る。


「……妹弟子?」

「誰に習った?」

「朱色の人」


 レニーラか。ノイエを弟子扱いしているから間違いでは無いな。


「小さい子は弟子?」

「ポーラは妹でしょ?」

「むう」


 辺りを見渡しノイエが眼力でポーラを呼び寄せた。

 たぶん今のはアイコンタクトだろう。アホ毛が怪しく動いていたが。


 何故かポーラはスカートの裏から紙と羽根ペンを取り出す。たぶんあのスカートは悪魔印の何たらポケットに違いない。コロネも両手を突っ込んでいたが気にしない。きっとポーラと叔母様のだけが特殊なんだ。


「妹?」

「はい。ねえさま」


 ノイエが紙に『妹』と書いてポーラに手渡す。


「この子は?」

「でしです」


 ぐったりしているコロネに代わりポーラが答える。

 ノイエは『弟子』と書いてコロネの額に紙を張り付けた。


「ノイエさん。あっちのミネルバさんは?」

「格闘の人」


『格闘』と書いてミネルバさんに手渡す。

 どうして恭しく受け取るかな? 国の英雄から直接下賜された物? そうなるの?


 こうなると聞かないといけない。


「あっちの副隊長は?」

「おっぱい」

「たいちょ~!」


 メッツェ君と甘い空間を作ってこっちに加わろうとして居なかったルッテを巻き込む。

『おっぱい』と書かれた紙を額に張られたルッテがシクシクと泣いている。


「ちなみにメッツェ君は?」

「……」


『誰?』と紙に書き、それがメッツェ君の元へ。


「最後に僕は?」

「アルグ様」


 スラスラとノイエは紙に『アルグスタ様』と書いた。

 あれ? その紙くれないの?


「大好きな人」


『大好き』が追加された。


「消えちゃダメ」


『消えないで』も追加された。


「ずっと一緒」


『一緒』も追加された。


「……赤ちゃん」


『この後頑張る』と新しい紙に書かれた。

 そっちは回収して丸めて焚火の餌にする。


「む」

「今夜は頑張りません」

「大丈夫。紙はまだある」

「頑張らないの」


 ノイエの思考が変な方に入ったので、ポーラに夕飯を頼んでノイエを追いかける。

 うふふ。待ってノイエ。本気で逃げないで。捕まえそうなタイミングでフェイント入れないで。何より抱えているコロネは大丈夫か? だからコロネを宙に放り投げて回避とかしないで。


「意地でも捕まえる!」

「アルグ様には無理」

「言わせておけば~!」


 逃げるノイエを追い回していたら息が上がってしまった。

 汗もかいて……不快指数がマックスだ。


 確か奥の方に小川があるって言ってたよね? そっちに行って……ノイエさん? コロネを捨てて何故僕を抱える? 小川に行くって最初からそれを目論んでいたのかっ!


「誰か~! 本気で助けて~!」


 しかし誰も助けてくれない。


 そのままノイエに運ばれて……どうして人って野外だと元気になるんだろう?




© 2022 甲斐八雲

 次でエバーヘッケ家に到着します。

 それで前回の質問の答えですが…次回から大暴れするでしょう。だってミシュの母親ですからw


『間違ってミシュの母親殺してないよね?』と長期連載あるあるで不安に駆られている作者が居ます。初期は色々と設定が混ざってしまうのでやりがちなんですよね。個々のキャラを把握しきれてなくて。


 死んでいるのはミシュたちの姉だけのはずです。たぶん?

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