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危ないヤツ

 ほらやっぱりね。共和国の人って僕から見ると天敵でしかないんだよ絶対。


「お戯れが過ぎますよ。マリスアン様」

「そうかしら? 私は魔女……ただの魔女。魔女の性分をご存じで?」

「いえ。全く」

「私たちは自己の欲求を満たすために活動をする」


 うふふと笑うその表情からして嫌な予感しかしない。


「……貴女の欲とは?」

「ええ。物欲も性欲も人並み以上にあります」


 以上かよっ!


「何よりもっとも欲するのは知識欲」

「知識?」

「ええ。私が欲しいのは……誰もが作れていない強力な魔法や術式です」

「……それを求める貴女はノイエが欲しいと?」

「ええ。是非に」


 それを作るのにノイエが必要……つまり材料とか実験動物とかで欲しいってことね。


「もし彼女を譲っていただけるのなら、私はこの国に亡命し……貴方の物となりましょう」


 妖艶に笑い見つめて来る相手にイラッとした。


 ふざけるなババア。誰がお前みたいな年増に満足など……あれ? 頭の中がグルグルとする。

 彼女を目を見ていたら……どうして僕はこんな良い話を聞いて悩んでいるんだろう?

 絶対に良い話だよね? 断る理由なんて全く無いんだから


 と、白い手が視界を遮った。


 あれ? 今僕ってば変なことを考えて無かった? ノイエを手放す話が良い訳無いのに……あれ?


 視界を遮る白い腕に視線を添わせ肩越しに振り返ったら、久しぶりにヤバいものを見た。


「……」


 頭の上に乗っているティアラがアホ毛に押されて浮きかけている。

 間違いなく完全に怒っている時の状態だ。


「アルグ様に、変なことをするなら……」


 ギュッと硬く手を握り、彼女が一歩踏み出そうとした。


 ノイエの気配にこっちに向けられる視線の数が半端無い。

 皆さま? もしかして殺気センサーとか搭載していらっしゃいますか?

 今なら僕にもそれが分かりそうな気がします。


「あら……失礼。少し酔いが回ったのかもしれないわね」


 笑いながら魔女は僕らから離れ、軽く会釈をして寄こす。


「今宵は旅の疲れが酷いので談笑に努めようと思います。明日からの案内……宜しくお願い致します」

「……はい」


 妖艶な笑みを見せて立ち去る魔女に僕は深く息を吐いた。

 一瞬頭の中がおかしな感じになった。絶対に何かされた。


「ノイエ」

「はい」

「ありがとう」

「……」


 彼女は何も言わず僕に寄り添うと、そっとその顔を耳元に寄せた。


「目を見たらダメ」

「目を?」

「はい。あれは……危ないヤツ」


 どう危ないとか、どんな仕掛けなのかは解説とか無いのね。流石ノイエだ。


 それから僕ら……僕が愛想笑いを振りまいて一度会場の端に移動して一息つく。

 一応お客さんである魔女を殴り殺そうとしたとかバレたら絶対にアウトだ。今ならからかわれて怒ったぐらいで問題にならないはず。むしろさせない。


 メイドさんから飲み物を受け取り一息ついて居ると、やはりチラチラとノイエが視線を集めている。

 面と向かって挨拶に来るような猛者はほとんど居ないけど……ハァハァと鼻息を荒くさせたキャミリーとクレアがノイエの前に来て、それぞれ保護者に確保されて強制退場して行った。


 ある意味あの二人は別次元の猛者だ。


「何してるんだろうね? あの二人は」

「はい」




 挨拶交じりの談笑の時間が終わり、踊る気のない人たちがボチボチ逃げ出しているっぽい。

 魔女の相手をしなくて済んだ僕としてはこのまま逃げたいんだけど、今日は少し用がある。ボチボチ大丈夫かな?


 ふと視線を横に向けると、隣で白い花のように光り輝くノイエがめっちゃ綺麗だ。

 こんなに綺麗で若くて優しいお嫁さんを手放そうと考えただなんて、絶対に操られたんだろうな。

 目を見るなってノイエが言ってるから、何かしらの魔法を目から出したのか?


「ん~。まあ良いか」

「はい?」

「ノイエ。ちょっと付き合って」

「はい」


 彼女の手を取って一度部屋の外に向かう扉へと進む。

 ただ出入り口として使われている大扉では無くて、城の奥へと向かう小さな方へ。


「アルグスタ様。本日こちらの扉は」

「知ってる。ただ執務室に明日使う資料を置いて来てね、それを取りに行くだけ」

「失礼しました」


 警護の為に立っている騎士が一礼して扉を開けてくれた。

 僕らはそこを抜けて会場を後にした。




「ん~」

「……」


 ノイエが居るから心配はないんだけどね。

 ただ彼女の腕に抱き付くぐらい許して欲しい訳です。

 会場にはこれでもかとランプがあったから、つい他の場所も明るいと思ってたんだよ。


 僕らは真っ暗な廊下を進んで行く。

 あ~怖い。真っ暗なお城とかマジ最悪だ。


「アルグ様」

「はい?」

「何を?」

「うん。ちょっと封印倉庫に行きたいんだ」

「倉庫?」

「前に行ったでしょ? 何たらの壺を持って来た所」

「……」


 彼女は小さく首を傾げて見せた。もう記憶に無いらしい。

 ドラゴンのこと以外覚えられないノイエっぽいけどね。


「頑張って早く探して戻ろう」

「……はい」


 ギュッと僕の腕にノイエのおぱいの感触を得ながら……そこそこ迷子になりつつも目的の場所に辿り着いた。




(c) 2018 甲斐八雲

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