プロローグ
夢を見た。
暗赤色の雲に覆われた空の下、草一つ存在しない荒野がどこまでも続いている。
自分がしばらくの間そんな景色を眺めていると、どこからともなく一匹の黒い蝶が飛んできた。
無意識のうちに蝶についていくと、平坦な土地の中に突然大きなクレーターのようなものが出現した。
クレーターを覗き込むと、中心には2つの影が見える。一つはどす黒いオーラに包まれており、一つは純白に輝くオーラに包まれている。
夢というのは不思議なもので、それが人であるか動物であるかどうかすら判別できないというのに、一目見てその2つの影のうち片方が自分なのだとわかった。
同時になぜ自分が?という思いもこみ上げてくる。自分が纏っているオーラの色は、自分が得意な系統の魔法の色とは似ても似つかない、むしろ反対の色だったからだ。
夢とはいえ、こんなことがありうるのだろうか。
夢というものは自分の脳に蓄積された情報を元に形成されるはずだ。ならば、見たこともないような純粋な色のオーラを、自分が纏っているのはおかしいのではないだろうか。
何か見落としている情報はないか目を凝らそうとするも、夢の中では思うように体を動かせない。
結局新たな情報は得られぬまま、世界がボロボロと崩壊し、自分は目を覚ました。