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“Who killed Cock Robin?” -4-




 もうすでに2階は壁まで火に包まれつつあった。

 数メートル先から、悲鳴が聞こえる。紛れもなくミセス・ロビンの声だった。


 カナリアは力を込めて走った。また足が火に触れた。まるで蝕まれるかのような感覚を覚える。膝下まで、チリチリとした痛みが上がってきた。

 なんとかミセスの元へたどり着いた時には、子ども部屋は炎に包まれていた。部屋の中は見えない。ただパチパチと爆ぜる音がするだけだった。


「あ…ああ…なんてこと」

 ミセス・ロビンは膝から崩れるように座り込んだ。

 目は虚ろに炎を反射しており、肩は小刻みに震えていた。

「ミセス、逃げないと」

 カナリアは彼女の手を引いた。なぜか頭の中は冷静なままで、どう逃げれば一番良いのか一生懸命に考えていた。

「ミセス」

「あ…あ…カナリア…、私」

「逃げないと」


 ミセス・ロビンは弱々しく頷いた。カナリアはその手をしっかりと握って歩き出した。

 急がなければならない、カナリアはそう思って握った手を強く引っ張った。しかしミセス・ロビンは後ろ髪が引かれる思いなのだろう。ゆっくりとしか歩かない。

 カナリアは焦った。どうしよう、このままじゃあ炎に包まれてしまう。もうそう長く家は持たないだろう。


「ミセス、急ごう?」


 しびれを切らしたカナリアは声をかけた。彼女は頷いて決心したように急ぎ足になった。そうしてようやく玄関まであと一歩というところまで来たときには、2人とも顔は煤け、身体中に火傷が出来ていた。

息が苦しい、眩暈がする。

 カナリアの足が少しふらついた。まずいかも、と思った次の瞬間には世界が回っていた。

 目の前が真っ暗だ。しかし、薄らと聞こえたことを覚えている。激しく爆ぜる音を、再び聞こえたミセス・ロビンの悲鳴を、木が倒れながらあげる呻り声を。


 そして、名前を呼ばれて意識が戻った。

 呼吸を忘れていて、息を吸う。肺が焼けるようだ。

 そう感じた。






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