“Who killed Cock Robin?” -3-
その秘密を教えてもらえる前に、カワセミは死んだ。
実際に死んだところは見ていないが、あの状況では絶望的だろう。
あの光景がまた目の前に蘇った。脳裏に焼き付いて離れないあの光景が。
焦げ臭いと気づいたのはちょうど真夜中で、全員が寝ていた。子供たちは2階にある4人ずつの子ども部屋が二部屋、そして1階にはロビン夫妻の一部屋。気づいたのはどうやらカナリア一人だったようで、他の孤児たちは起きていない。カワセミもいびきを立てて寝ていた。
何の臭いだ。
カナリアは一歩一歩階段を下りる。まずはミセス・ロビンに報告するべきだろう。ミセスなら臭いの原因を知っているかもしれない。彼女は時々わざと鍋を火にかけて寝ることがあった。彼女特製煮込みスープを作っている時だ。肉を骨ごと入れて柔らかく煮るためには、1晩煮るのが一番良いのだと彼女は言っていた。
今日は火加減が強くて焦げてしまったのかもしれない。ならばミセスを早く起こすべきだ。
そう思って彼女の部屋へ向かった。その時だ。
熱い。やけに熱い。そしてなぜか目の前が明るい。
「ミセス!」
一瞬最悪の事態が頭を横切って、思わず叫んだ。
「ミセス! ボクだよ、カナリアだよ! 返事して!」
走って彼女の元へ走った。しかし、彼女は部屋にいない。
一体どこに。
焦ったカナリアは、熱を感じる方へと急ぎ足で向かった。どうやら物置小屋が燃えていようだ。
だんだん息が辛くなってくる。目の前が見えにくくなったと思えば炎が見えた。
「ミセス、どこにいるの!」
返事はない。目を凝らしたが、どうやら炎が上がっている場所にはいないようだった。
どこ、ミセス、どこにいるの。
走る。足が火に触れた。ひどく熱く、痛い。構わない。とにかくミセスを探さないと。
子供は大人に頼るしかなかった。
この家は広い。階段は家の中央にあって、カナリアは一番奥にあるロビン夫妻の部屋に向かって、玄関とは逆の方向へ走った。そして今、また階段へと向かいながら、ひとつひとつの扉を開けてカナリアはミセスを探した。
いない。見つからない。
かなりの数の扉を開けてから、カナリアはハッと気づいた。
彼女はまた、今夜も泣いているのかもしれない。
急いで階段を駆け上がった。いつもなら一気に上まで駆け上がれなかったのに、今は自然と屋根裏部屋にまで駆け上がることができた。
「ミセス!」
「…カナ、リア?」
ミセス・ロビンはそこにいた。天窓から入ってくる月明かりに照らされて、彼女は泣いていた。
「ミセス、大変なんだ、火が…火が!」
すぐにミセスは立ち上がった。まだここまで焦げた臭いも熱さも届いていないが、彼女はカナリアの様子を見てすぐに気づいたようだ。
「どこから?」
「わかんない、でも、物置部屋の近くからだと思う」
「物置部屋…どうして」
ミセス・ロビンは一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに階段へと走った。
カナリアも後を追う。
すぐに焦げ臭さと煙がカナリアを包んだ。思った以上に火の回りが速い。今は冬だ、空気が乾燥している。おまけにこの地域は北風が吹いている。そのことが影響しているのだろう。
「カナリア、みんなは?」
「たぶんまだ寝てる」
「じゃあ、あなたは先に外へ行ってなさい。私はみんなを起こしてくるから」
彼女は言うや否や、急いで子ども部屋へ向かって走った。
カナリアは不安になった。どうしても追わなければならないような気がした。今彼女を見失うと一生彼女を見つけ出せない気がした。
「待って!」
子ども部屋もまた、奥まったところにあった。なぜかこの家は、大きな寝室が奥にある作りになっていた。もし火事があるかもしれないと思っていたらこんな逃げにくい作りにはしなかっただろうに。せめて非常口くらいはつけておけばよかったのに。