表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/19

“Funeral of Mrs. Robin.”




「で、結局手柄はウソせんせがとったんかー」

 そう言ってアオサギは大きく伸びをした。


「塗料ん入手先を調べ、さらにそん発火性を証明、最終的にミスター・ロビンを見つけはって報告したゆうて…まったく、そん情報網、わてにもらえへん?」

「情報網というものではないですというか…何といえばよいのか…」


 ウソは事務所でアフタヌーンティーを嗜んでいた。今日はアールグレイである。香りが素晴らしい。


「アオもいかがです、紅茶?」

「あー、わてはお神酒ん方がエエ」

「そのうち病気になってもしりませんからね」

 今、事務所にはアオサギとウソしかいなかった。事務所長であるツミとオナガ夫妻は上の階にいるが、今は夫婦の時間ということで、店番はしていなかった。シロサギは手に入れたいものがある、と言ってそれきり半日戻ってきていない。

「今頃、カナリアはお墓前に行っとる頃か…」

 柱時計を見て、ふとアオサギが呟いた。

 ウソは静かに紅茶を啜った。

「そうです。別れを告げている、ということでしょう」

「難儀やな」

「運命を背負った子。そう、カラスが言っていました」

「ますます難儀やわア」

 苦虫をかみつぶしたような顔をして、アオサギはソファに寝転がった。



 トウテンコウに連れられてきたのは、緑が映える草原の中にある墓地だった。

 謹慎が解けたこの日は、雨が強く降っていた。

 黒い蝙蝠傘に、トウテンコウとカナリアは並んで入り、歩いた。何もお互い喋らない。ただ、湿った芝生を踏む音と雨粒の音が響いているのみだった。


「ついたぞ」

 トウテンコウは、ある墓前で止まった。

「姉さんの墓だ」


 墓にはミセス・ロビンの名前が記されていた。そして、彼女の好きだった百合の花が彫られていた。

 トウテンコウはそこでしゃがみ、墓石を指で伝う。ざらざらとした感じが、今の心の中の雰囲気そのものだった。

「ほら、買って来た百合と勿忘草の花束、飾ろう」

 トウテンコウに促されて、カナリアは手に持っていた花束を墓前に置いた。


 本当に死んでしまったんだ。ミセス・ロビン。


 やっと実感がわくようになった。フットとカワセミに合って、そして事件の原因を聞いて。

 全てが分かって、やっと実感がわいた。



 そして、空と一緒にカナリアはただひたすらに泣き出した。




ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ