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“with my bow and arrow.” -2-




 カナリアは目を見開いて立ち上がった。思い切りテーブルに手を叩きつけた痛みが、ジンと腕を伝う。

 その手にそっとオナガは触れた。温かく、柔らかかった。

「カナリア、君の気持ちも分かる。でも、当日の夜いなかった彼が一番怪しいとは思わないか」

 力いっぱい、それは首が取れるのではないかというぐらいに首を振った。


 フットがそんなことするもんか、絶対にするもんか。

 そんなカナリアに助け舟が現れた。

「わてはそやとは思えへん。彼ん悪い噂は聞おいやしたことがへん。それにツミさん、もっと怪しい人がおる…義賊スパロウや」


 義賊スパロウの噂はカナリアも聞いたことがある。きっとこの場にいた全員がその名を一度は耳にしているであろう、時の人だ。彼は豪邸に現れては、その家の金品を盗み、現金に換えて貧民に分け与えるという。しかしかて、とアオサギは言った。


「孤児院言うたて、カナリアが住んでたんは豪邸や。奴なら豪邸ならなんやて襲う…それこそ、手段は択ばへん。奴なら商い柄、森に近い豪邸に行きやすいんやないか?」

「なるほど。そっち方面でも考えることはできるな」

 ツミはまだ用心深く、フットを疑っているようだった。


「だが最重要課題として」ツミは言った。

「この件の代金は誰が払うんだ?」

 それには誰も答えない。そうだ、依頼するにはお金が必要だったなどと隣でカワウが呻いている。少し呆れてしまったカナリアは天井に視線をやる。そして嫌な空気が漂った。


「俺が払おう」


 空気を振り払ったのは、その一声だった。後ろを見るとドアが開いており、そこにトウテンコウが立っていた。

「俺の姉のことだ。俺が払う」

「コウ・コック。あんたがいくら払える?」

 皮肉のように歯を見せながらシロサギがそう言った。彼はトウテンコウをあまり好いていないらしい。

 トウテンコウはそれを無視して指を5本差し出した。

「50か?」

「いや、5,000ドル払おう。俺の全財産だ」

 シロサギは噴き出した。そしてこういう坊ちゃんは嫌いなんだとグチグチ呟く。そのわきでアオサギは爆笑、ツミは苦笑いをしていた。


「コック・ジュニア、その金額はありがたいが、うちは内容を聞いてからそれに見合った前金を貰う制度でね。一気に金は必要ない。最終的にはお客様が満足度によって料金を決めるんだ。しかし、まあ、そんな大金はいらないだろう」

「そうなのか」

 ツミにそう言われたトウテンコウは、不思議そうにウソの方を向いた。家庭教師がこの中で一番信用できると判断したのだろう。ウソは笑いをこらえながら頷いた。「それぞれ皆、副業でやってるので」。


 ツミがひとつ咳払いする。今回は子供の依頼だから前金はいらないと、そう彼は言った。

「…では、今は情報を集めよう。アオとシロは独自ルートで情報を集めてくれ。ウソは…」

 そう言ってツミはウソと視線を合わせた。

「わかっています、初心に帰れ、ですね」

「ああ頼む」




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