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魔王の困惑

ぞくっ、


高校の入学式。俺は、新入生の挨拶のために、壇上へと上がり、無事、挨拶を終えた。


あの女は……、


壇上から見えた一人の女生徒。見覚えはない。しかし、


あれは、勇者だ。


本能で俺は感じ取っていた。


俺は、人族ではない。魔族の長、魔王と呼ばれる存在だ。

だが、今は人族に混じって、暮らしている。そして、この高校にも通っているのだ。

俺の人族の間で使用しているもう一つの名前は、一ノ瀬優斗という。


なぜ、俺が人族の高校に通っているかだって?

理由は、簡単なことだ。俺たち魔族は、人族と共存したいと思っていたからだ。これは魔族の総意と言ってもいい。


そのためには、まず、人族を理解しなければならない。そしてそれには、学校という、教育の場にいるのが一番だったのだ。

そういうわけで、俺は今高校という所に通っている。

ちなみに、その間の魔族の統制は、No.2に任せ、俺は、彼と『ホウレンソウ(人族の間では、報告・連絡・相談の事を略して言うんだって教わったが面白い言い方をする)』を密にし、必要であれば指示を飛ばすという方法をとっている。


しかし、なんだって、こんな所に、勇者なんているんだ? それもあの女、異世界から来ている臭いがする。


臭いというのは、その人独自のものであるが、世界独自の臭いと重なって出きる。しかし彼女からは、その世界独自のものがない。というよりも多くの世界の臭いが混ざっている。

その上、彼女からは死臭がする。多くの『何か』を殺めてきた怨嗟をを含んだ臭いがした。


それだけ、世界を渡り、『何か』を殺してきたのだろう。


そして一般的に世界を渡るには、二種類ある。

召喚されるか、自分で渡るか、である。だが、どちらにしても膨大な魔力を必要とする。だから、よほどの事がないと、世界を渡ることはしないし、できない。


召喚とは、誰か依頼主がいて、それに従うのだが、この国の者はわざわざ誰かを召喚することはしない。

必要がないのだ。

これだけは断言できる。

それだけの信頼関係を俺たちは築いてきた。

そして、この国の者達は、どんなに困難が立ちふさがっても、力を合わせて解決してきたのだ。俺がこの国に根を下ろしている理由の一つだ。


となれば、彼女が自分で渡ったと言うことか?

いや、だがそれだって強い意思がなければならない。膨大な魔力が必要とすることは、魔力を削ること。つまり、生命を削るということだ。

そんな危険をおかしてまで、世界を渡る理由が見つからない。


ああ、そう言えば、あの女は、勇者だったか?

それに死臭がしていたな。

……まさか、俺(魔王)を殺すために?……

いや、それこそ、まさかだよな。


昔と違って、人族を無差別に殺すこともしない(こういうことを人族の間では、無駄な殺生をしないって言うんだったかな?)し、攻撃もしない。というよりも、今のこの国では、俺(魔王)や魔族がいることが当たり前ですらあるのに。


厄介なことになったな。


やっと落ち着いたこの時期に、勇者が、出てきて引っ掻き回されるのが一番困る。


いや、今答えを出すな。答えを出すのは、まだ早い。

いつも言われているではないか。一人で解決するな、と。他の人の意見を聞けば、意外と簡単に解決することもある、と。



ちょうど入学式も終わったようだな。


一度、彼らに相談してみるか。

どうせ、今日は、朱音の入学祝いで食事に呼ばれている。祝い事だが、我が婚約者に注意を促すことも、必要だしな。



それにしても、あの女は、一人で何をしているんだ?

それも気持ち悪い笑みを浮かべて。

新入生は、もう教室に移動して誰もいないんだぞ?


勿論、あんなのに関わりたくないから、俺は声をかける気はないがな。

誰もいなくなっても気づかないとは、本当に勇者なのか?

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