勇者の妄想
くすくすくす、
見つけた、見つけたわ。こんな所にいたのね、私の獲物。
私のサーチ能力は、100%。やっぱり頼りになるわね。
今日は高校の入学式。今は、その式の最中だけど笑いが止まらない。
周りの生徒は、少し気味悪そうに見ているけれど、なんと言っても入学式よ。『高校入学おめでとう』で、多少おかしな行動でも、入学できて嬉しさのあまり、で済ませられるはずだわ。
私、こと相沢百合が、この学校に入ったのは、本当に偶然だったのよ。それなのに、そこに目当ての奴がいたの。多少笑ったとしても、誰も文句は言えないよね。いや、誰にも言わせはしないわ。
もともと、勉強嫌いで高校にいる必要もない私が、こんな高校に入学したのには、もちろん理由があるわ。
この世界で生活する名目が必要だったからだ。
周りの人間は、私の催眠術で元からいたように、取り繕うことはできるけど、何をしているか分からなければ、どう取り繕っても、不信に思われる。
その点、高校生という隠れ蓑は、最適なの。年齢もあっているしね。
勿論、高校に通う気はないけど、どうせなら入学式だけはって思ったのよね。
そ・し・て、
その高校の入学式で、私の獲物が見つかるなんて、ついているとしかいいようがないわ。
ふっふっふっ、
今からが楽しみでならないわ。
そう、そうよ。私は勇者なのよ。魔王を倒すために、こことは別の世界から来たんだから。
魔王をイタブって、楽しまなくっちゃ。
ああ、楽しみ、楽しみよ。
あの男が、魔王が、私に命乞いをするの。
私は、それを慈悲で持って受け入れようかしら?
それとも、突っぱねて一思いに殺そうかしら?
いいえ、それよりもゆっくり、じっくりイタブって、殺していくのもいいかもしれないわね。
ああ、そうだわ。私を女神のように崇めてもらおうかしら。それとも、私の気まぐれで絶望に顔を歪めてもらうのも面白そうだわ。
想像するだけで、ゾクゾクするわね。
あ、あの男が出てきたわ。
え? あらそういえば何で、出てくるのかしら?
せいとかいちょうのあいさつ? って、生徒会長!?
何で? どうして魔王が生徒会長なのよ?
そもそも、何で高校なんて(こんなところに)いるのかしら?
あ、そうか。催眠術ね。
それに魅了の魔法でも使っているんだわ。
そうね、そうよ。じゃなければあんな男、人気がある訳がないじゃないの。
魔王よ、魔王。よく考えれば、魔法を使って、生徒を騙しているに決まっているわ。
あら? そう言えば、なんでこんな高校に魔王なんているのかしら?
単に、高校に通いたかった?
なぁんて、あるわけないわよね? 何か、良からぬ事たくらんでいるに決まっている。
いいわ、見ていなさい。わたくしは、勇者よ。魔王の企みなんて潰してあ・げ・る。
そして、そして、
魔王を倒した暁には、
私は、この国の王に会うのよ。そして、感謝されるの。
それから、この国の英雄として称えられるんだわ。
そして、国王から、『あなたのためにパレードをしたい』って、乞われるんだわ。
あ、初めは、一度断ってもいいわね。そして、『どうしてもと言うのなら』って言って、パレードをしてもらうの。
だって、そっちの方が、私の謙虚さが栄えるし。
そして、私は『勇敢で謙虚な心を持つ女性』として、国中の人に望まれて、パレードをするの。
ああ、その光景が目に浮かぶわね。
あの、私を見る名もなき人々の称賛と嫉妬の視線。そしてその快感。
それが、ここでも味わえるんだわ。
ああ、早くあの視線が欲しい。そのためには、早く魔王をどうにかしなければ。
くっ、くっ、くっ。待っていなさい、魔王。私があなたに絶望を与えてあげるわ。
ガーン。
嫌なこと思い出しちゃった。
魔王が、ここにいるってことは、私も高校に通わなければいけないってこと?
ってことは授業に出なきゃいけないの?
勉強なんてしたくないのに。
早く、魔王をどうにかしなきゃ。
…
……
………
…………
って、あら。みなさん、どこへ行ったのかしら?
誰もいないんですけれど?
え?、ま、まさか、置いていかれたっていうの?
ちょっと、私はどこへ行けばいいのよ~~。
この勇者、実をいうと重大なミスをしております。