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現実主義者と偽13番

脚の長さは遺伝か食生活か?

ある説によると、大昔に寒いところに生活していた人種は、体内の保温効果を高める為に胴長ずん胴になり、逆に暖かいところで生活していた人種は、体内の熱を効率よく放出するため表面積を多くする為に胴が短く足が長くなったとある。

つまり環境による遺伝で決定するとの説だ。

この説を信じ、なおかつこの世界にも適応されるのだとすれば、少なくとも偽13番の先祖は温かい国で生活をしていたということになるだろう。

何故か?

たった今この会場に到着した人物が、たった十秒程目を離しただけで、私の目の前に立っていたからだ。

これはもう、足の長さが尋常ではないと結論付けなければ説明がつかない。

あの場所からここまで、直線距離で数十メートルはあろうかというのに、気付いた時にはもうあの偽13番はこの場に立っていたのだ。

毎秒1mで直進しても、10秒以上は絶対にかかる距離だというのに。

それとも、この人ごみをかき分ける特別な方法があるというのだろうか?

あれば、ぜひ知りたい。

そして、その技を伝授してほしい。

その技は、バーゲンの時に大いに活躍することだろう。


「…んじゃないのか?」

「ああ。私も、そう聞いているが確証がまだだな。」

「そうか。まぁ、何とかなるだろ。協力はするぜ」

「ああ、その時は頼むかもしれん」

私がどうでもいいことを考えていたら、その間に団長と偽13番ことキョウキーニさんとが内々の話をしていた。

どうにも場が持たないので去ろうと心に決め、副団長にその事を話しかけようとしたら、どうやら2人の話にじっと耳を傾けている。

正直今話しかけるのは不味いと思ったので、私は話しかけるのをあきらめた。

その場を離れるタイミングを完全に逸した私は、ただ会場内を見渡していた。

「で、こんなつまらん話は置いておいて、アレイそろそろ紹介しろよ」

キョウキーニさんが団長に、私を紹介するように促す。

話が一段落ついたらしい。

「何をだ?」

団長が、一体何を言っているんだこいつ?とういうような顔をする。

「いや、何をって、そこの女性はお前の連れなんじゃないのか?」

キョウキーニさんは私の方を一瞬向いて、団長に紹介を促す。

どうやらまだキョウキーニさんは、昼間の16番が目の前にいる私だと気づいていないようだ。

だけど、それも時間の問題かもしれない。

話の流れからして。

「今日は誰も女性を伴っていないが」

「あ、じゃあローアムの連れ?」

今度は副団長に話を振る、キョウキーニさん。

話を振られた、副団長が少し困ったような顔をする。

「あ、いえ始めはうちの騎士と伴にしていましたが…少し今離れているようです」

歯切れの悪い返答に、訝しげな顔をするもキョウキーニさんは流すことにしたようだ。

「ふーん?ま、いっか。えーと始めまして、オウェインピア」

オウェインピアとは、隣国語で女性に呼び掛けるときの敬称だ。

「私はキョウキーニという。珍しくもアレイが女性を伴っているので少し興味を惹かれてね、よければ貴女の名前を教えてはもらえないだろうか?」

キョウキーニさんが胸に手を当てていう。

隣国の略礼だ。

本来はここで頭を下げるのだそうだが、そうしなかったのは理由がある。

実はこの人こう見えて、王子という役職についているみたいだ。

先程、ホールに響き渡っていたフルネームを聞いて、王子だと知った。

知りたくはなかったが。

一応今回の夜会に赴くにあたって、私は重要人物の名前を一通り頭にたたきこんでいた。

この国の重鎮から隣国の王子に至るまで。

だから、フルネームを聞いて判ってしまったのだ。

ナリアッテの情報によると、彼は第5王子であり、隣国では団長と同等の地位に当たる軍務司令に就いているとの事だ。

団長と仲がいい(?)のは、周辺諸国のサラブレッドたちが集まる超名門学校の同期で、どちらも軍職に就く為の学科を専攻していたかららしい。

まぁ、そんな事は置いておいて、胸に手を当てただけの略礼となったわけは、王子が簡単に公衆の面前で頭を下げるわけにはいかないからだ。

ともかく、王族に名を乞われて無視するわけにもいくまいて。

「始めまして、キョウキーニ様。私、琉生=多田と申します。お会いできて大変光栄にございます」

といって、わたしは王族に対する礼をとる。

一応その状態でキープ。

顔を見るのは失礼だからとかなんとか言う理由により。

もう、ものすごく手遅れだけどな。

はは。

「こちらこそ、会えてうれしく思う。どうか顔をあげてほしい」

そうい割れたので、顔をあげた。

キョウキーニさんはと言うと、少し屈み私の手を取り、何をするのかと思えば私の手の甲に口づけた。

それを見ていた団長が、微妙な表情でキョウキーニさんのこの一連の動作をを見ていた。

「キニー、一応言っておくが…」

団長がおもむろに口を開く。

「何だ?」

キョウキーニさんが団長に顔を向けた。

「そいつは男だ」


団長以外の三人が凍りつく。

それぞれ別の意味を伴って。


やっぱり早々にこの場を離れていればよかった。

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