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183cmの甘い境界線 ― 僕らは、糖分不足。 ―  作者: kobato.


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第7話:画面の向こうのあいつ

第7話をお読みいただきありがとうございます。


「共犯者」として、少しずつ距離を縮めた墨染と日高。 日高がドラマ撮影で学校を離れることになり、二人の間には物理的な距離が生まれます。


墨染を巡る周囲の喧騒と、画面の向こうで輝きを増していく日高。 隣にいない時間が、二人の心に予期せぬ「不協和音」を響かせます。


墨染が大切に握りしめる「お守り」はまた2人を繋いでくれるのでしょうか。

1. 共犯者の「留守番」



あの保健室での「答え合わせ」から数日。

二人の距離は急速に縮まっていた。


放課後の保健室で、他愛もない会話をするのがいつの間にか日課になっている。


そんな中、日高がドラマの準主役に決まったことを墨染に告げた。


「……しばらく、学校休みがちになる。ドラマの撮影が立て込むから」

「そっか。……頑張れよ、有名人。日高がいない間俺が代わりに保健委員やってやるからさ」


墨染の頼もしい「宣言」に、日高は少し照れくさそうに顔を背け、大きめのポーチを墨染に押し付けた。

中には、あの銀色の飴がこれでもかと詰め込まれている。


「……これ、俺がいない間の分。……働きすぎるなよ。わかったか」

「あはは、すげー量! 了解、お守り代わりにするわ」


二人の間には、穏やかで温かい空気が流れていた。



2. 鈍感な拒絶



日高が不在の学校。墨染は宣言通り、代理の保健委員をこなしていた。

そんな時、クラスメイトの有岡世那から呼び出される。


「墨染くんの、みんなのために一生懸命なところ……ずっと見てました。好きです」

真っ直ぐな好意。


けれど、連日のバイトと学校生活で疲れ果てていた墨染にとって、恋愛はあまりにも遠い世界のことに思えた。

「ごめん。今は…恋愛のことを考える余裕がないんだ」


有岡世那を傷つけないための正直な言葉だったが、彼女はそれを「今は忙しいだけ」と前向きに解釈してしまう。

さらに、この様子を実は密かに結成されていた「墨染隠れファンクラブ」の子たちが目撃。


「世那ちゃんが告白した!? 抜け駆け禁止!」と騒ぎ立てるうちに、事態は思わぬ方向へ加速していくのだった。



3. 雑音と想像



翌日から、墨染の周りは異様な熱気に包まれた。

「世那に続け」と言わんばかりに、女子たちが必死にアプローチを仕掛けてきたのだ。


「墨染くん! これ、家庭科で余ったから食べて!」

「墨染くんにぴったりだと思って、買ってきたの!」


次々と差し出される華やかなお菓子。

「おい墨染、お前モテすぎじゃん!」といつメンに茶化され、墨染は苦笑いしながらそれを受け取る。


けれど、これだけ多くの好意に囲まれていても、不思議と誰かを「特別」にしたいとは思えなかった。


(みんな、俺のどこを見てるんだろ……)

ラッピングされたお菓子よりも、ポケットに入った銀色の飴の方が、ずっと温かく感じてしまう。


(あいつ、今頃ガクとして撮影してんだよな。共演者たちと、どんな風に笑ってるんだろ……)

目の前にいる女子たちの顔よりも、見ることができない「現場での日高の顔」ばかりが、墨染の頭を占めていた。



4. 選び放題の焦燥感



放課後。プリントを取りに来た日高は、廊下で女子たちの噂話を耳にする。


「墨染くん、有岡さんとのことがあってから、さらにモテモテだよね」

「お菓子、両手いっぱいに貰ってたよ」


日高は一瞬で表情を凍りつかせ、衝動的に墨染のいる教室を覗きに行く。

そこには、大勢の女子に囲まれて笑顔でお菓子を受け取る墨染の姿があった。


(……なんだよ、これ。選び放題じゃねえか)


自分は男で、今はそばにいることもできない。

焦燥感が、日高の胸をどろどろとかき乱す。


「……なんだよ。今日は飴、いらなさそうだな」

「あ、日高! いや、これは……」

前髪で隠れた日高の瞳は見えない。


けれど、その低く冷え切った声は、墨染の胸に鋭く突き刺さる。

そして、日高はそのまま、一言も交わさず背を向けて立ち去ってしまった。



5. 画面越しの距離



「……せっかく会えたのに、何も話せなかった……」

日高の不機嫌な顔が脳裏に焼き付いて離れない。


けれど墨染は、「あいつ、慣れない撮影で疲れてるんだ。

共犯者として、ちゃんとドラマ見て応援しなきゃ」と自分を奮い立たせ、テレビの前に座った。


画面の中には、自分の知らない、圧倒的な輝きを放つ「ガク」がいた。

その演技に引き込まれ、誇らしい気持ちになったのも束の間。


ラストシーンで、「ガク」はヒロインを抱き寄せ、深く唇を重ねた。

(……仕事だって、わかってる。応援しなきゃいけないのに)


画面の中の彼は、あまりにも美しく、そしてあまりにも遠かった。


(俺が学校でみんなにチヤホヤされてる間に……あいつは、あんなに綺麗な人と、遠いところに行っちゃったじゃねえか)


自分の「モテ」なんて、日高が生きる世界の輝きに比べれば、ただの雑音に過ぎないことを思い知らされる。

墨染はポーチから飴を取り出し、口に含んだ。


あんなに甘かったはずの銀色の飴が、今日は少しだけ苦い気がした。


最後までお読みいただきありがとうございました。


せっかく会えたのに、すれ違ってしまった二人。 自分の知らない場所で「ガク」として生きる日高を必死に応援しようとする墨染が、最後には圧倒的な「世界の差」を見せつけられてしまう……。


どんなに学校でチヤホヤされても、墨染が本当に欲しかったのは、あの日高の不器用な優しさだけだったのかもしれません。


「苦い飴」の味が、皆さんの胸にも届いていたら嬉しいです。


次回、このギクシャクした関係はどうなってしまうのか。 応援してくださる方は、ぜひ評価や感想で墨染(と、ちょっと荒れ気味の日高)を支えてあげてください!

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