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183cmの甘い境界線 ― 僕らは、糖分不足。 ―  作者: kobato.


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第3話:境界線と甘い独占欲

第3話をお読みいただきありがとうございます。


前回のラストで「素顔」を見られてしまった日高。 墨染を遠ざけようと必死にバリアを張るものの、体が勝手に動いてしまい……。


日高が自分でも気づかないうちに抱き始めた、小さな「独占欲」の行方に注目してください!

1. 保健室の境界線



「……昨日言ったこと、誰にも言わないでほしいんだ。家のことと、低血糖のことは」

放課後の保健室。

西日が差し込む静かな部屋で、墨染が少し真剣な顔で俺を見た。


「……了解。他人のことに首突っ込む趣味はないから」

俺は淡々と返し、視線を窓の外へ逃がした。


あの日、至近距離で素顔を見られた時の衝撃が、まだ心臓の奥にこびりついて離れない。


これ以上、墨染を自分の領域に踏み込ませてはいけない。

俺は必死に自分に言い聞かせ、分厚いバリアを張り直した。


「相変わらず愛想ねーな」 墨染は苦笑いして肩をすくめる。


「でも、他のやつらと同じように距離感あるお前と、もうちょっと仲良くなってみたいんだけどな……なんてね」


(……仲良く?) そんな軽い好奇心で、俺の平穏を乱さないでほしい。

俺は返事もせず、カーテンの奥へと身を隠した。



2. 最速の救出



数日後、校内美化清掃が行われた。

俺は保健委員の特権を盾に、保健室の窓際でサボりつつ、花壇で働く墨染を眺めていた。


炎天下の中、墨染はクラスメイトたちの分まで一人で引き受けたのか、たった一人で重い肥料袋を運んでいる。

(……お前、またそうやって無理すんのか)


見て見ぬふりをしようと目を閉じても、墨染のあの危うい足取りが脳裏に焼き付いて離れない。


肥料を運んでいた墨染の足が、ふらりと止まった。

彼が膝に手を突いた瞬間、俺は考えるより先に窓枠を蹴って走り出していた。


「……日高? なんで……」

物陰で膝をつき、肩で息をする墨染を、俺は無言で支える。


最短ルートで駆けつけた俺に、墨染は驚いたように目を丸くした。

「……仕事。倒れられると報告書を書くのが面倒だから」

「あはは……。意外と周り見てるんだな」


力なく笑う墨染の体温が、俺の腕を通して伝わってくる。

俺は何も答えず、墨染が落ち着くのを待った。



3. 「保健委員」という名の飴



それ以来、俺のカバンには常に一袋のブドウ糖の飴が常備されるようになった。


教室で墨染が少しでも眉間に皺を寄せたり、顔色が悪くなったりすると、俺は無言で墨染の机に一粒の飴を置き、そのまま背を向けて去る。


「……なあ墨染、日高ってお前にだけなんか優しくないか?」

「え、そうか?」 いつめんの問いかけに、墨染は首を傾げて答えていた。


「いや、俺はむしろ嫌われてると思うよ。いつも一言二言で終わらされるし」


離れた席でそれを聞いていた俺は、机の下で握った拳に力を込める。

(……嫌ってない。ただ、どう接すればいいか分からないだけだ)


こんな不器用な叫びは、喉の奥に張り付いたままでいい。

そう自分に言い聞かせた。



4. 甘い独占欲



放課後、校門前に止まった高級車の後部座席に乗り込む。

誰にも言っていないが俺は今人気のモデルらしい。


その仕事で今日はマネージャーに迎えにきてもらっていたのだ。

俺はポケットから飴を一粒取り出し、墨染のことを思いながら口に放り込んだ。


「ガク! お疲れ様。……あら、美味しそうな飴。一個ちょうだい?」

綺麗に整えられた眉を上げた、中性的な外見をしたマネージャーが、俺の手元にある飴に目を留めた。


普段なら「どうぞ……」と無関心に差し出すはずだった。

けれど、俺は咄嗟にポケットの残りを片手で守っていた。


「……いやです」 一言だけ。

俺は飴を握りしめ、窓の外を見た。

「えっ、ケチねぇ。岳陽ちゃん、誰かさんのための特別?」


マネージャーの茶化すような言葉を無視して、俺は口の中でゆっくりと溶けていく甘さを感じていた。

(……あいつにあげるやつなんだ。)



5. 笑顔の余韻



翌日の休み時間、墨染が俺の席にやってきた。

「日高、昨日はありがとな。あの飴、マジで助かった。」

墨染が、いつものあの眩しい笑顔で礼を言う。


あいつが俺の渡した飴を食べて、少しだけ顔色が良くなる。

たったそれだけのことなのに。


その後、墨染が自分の席に戻ってからも、あの笑顔がずっと心から離れなくて。


……おかしいな。 誰かのために何かを用意するなんて、俺の人生には必要なかったはずなのに。


「春の嵐」に巻き込まれて、俺の日常が少しずつ、心地よく乱されていく。

そんな自分に戸惑いながらも、俺は明日用の飴をそっとポケットに忍ばせた。


最後までお読みいただきありがとうございました!


誰かのための備品なんて一つもなかった日高のカバンに、墨染のための「飴」が増えていく。 その一粒一粒が、二人の境界線を少しずつ溶かしているようです。


さて、次回第4話。ついに物語が大きく動き出します! 墨染がバイト先で目撃してしまったのは、学校の「保健委員」とは正反対の姿をした……?


面白い!続きが読みたい!と思ったら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援をお願いします。ひょまれの執筆エネルギーになります!

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