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183cmの甘い境界線 ― 僕らは、糖分不足。 ―  作者: kobato.


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第19話:宣言の教室

第18話をお読みいただきありがとうございます。


前髪を上げ、隠すことをやめた日高。 彼は、クラス全員が待つ教室で、これまでの自分を塗り替えるような「ある決意」を口にします。


正体、そして想い。 逃げるのをやめた表現者・ガクの、本当の人生がここから始まります。

1. 前髪の向こう側の世界



文化祭が明け、最初の登校日。

下駄箱の前で待っていた墨染は、歩いてくる一人の生徒を見て、思わず息を呑んだ。


ずっと顔を隠していた長い前髪を潔く上げ、整った素顔を晒して歩いてくる日高。


「……お前、それで来たのか。いいの? イケメンだけどさ、めちゃくちゃ目立つぞ」

「いいんだ。もうバレたし……それに、隠すのはもうやめたんだ」


清々しく笑う日高を見て、墨染の胸には少しだけ寂しさがよぎった。

(……そっか。とうとう『ガク』だって隠さないことになったんだな)


今まで、自分だけが知っていたあいつの正体。

二人だけの秘密だったはずの「共犯者」という関係が、終わりを告げようとしている。


だが、墨染はすぐに思い直して前を向いた。

(いいさ。秘密じゃなくなったって、俺たちにはまだ飴もある。あの『挨拶』だってあるしな)



2. ご褒美と、小さな絆



教室へ向かう廊下。

並んで歩く二人の間には、昨日までの重苦しい空気は欠片もなかった。


「そういや日高。優勝した時のご褒美、まだだったよな。何がいい? 俺にできることなら何でも言うこと聞くぞ」


墨染がふっと思い出したように尋ねる。

日高は少しだけ立ち止まると、ポケットからスマホを取り出した。


「あ、忘れてた。……じゃあ、連絡先交換しよ。一番の友達として、ずっと繋がってたいから」

「なんだよ、そんなことでいいのか?」


笑い合いながら、二人の連絡先がようやく一つの線で繋がる。


だが、その時不意に担任から声がかかった。


「墨染、ちょっと職員室へ」 墨染は「悪い、先に行っててくれ」と、一人職員室へと向かった。



3. ガクとして、俺としての宣誓



一人で教室のドアを開けた日高。

その瞬間、喧騒に包まれていた教室内が、水を打ったように静まり返った。


あちこちから「……うそ、本物のガクだ」「顔、綺麗すぎ……」という、震えるような吐息が漏れる。


日高はいつもの席に着く前に、まっすぐに教壇の前へと立った。


「みんな、聞いてほしい。……隠しててごめん。俺が、ガクです。これからも、みんなに迷惑をかけるかもしれないけど……よろしくお願いします」


クラス中が息を呑み、言葉を失う。

だが、日高の言葉はそこで終わらなかった。


「……それと、もう一つ。もうバレてると思うけど、俺、墨染が好きなんだ。


今まで告白してくれた子たち、曖昧な態度で濁してごめん。


付き合えない理由は、これです。……墨染を好きな子たちにとっても、俺はライバルになると思う。


ほんとに、色々ごめんなさい」


静寂。日高は真っ直ぐに前を見据えていた。


「……だけど、いずれきっとこういうのバレてしまうんだ。だから隠すのはもうやめた。

正々堂々、自分らしく生きることにした」



4. 鳴り止まない拍手



一瞬の沈黙の後、パチパチと一人の手が叩かれ、それが瞬く間にクラス中へと広がった。

嘲笑でも、軽蔑でもない。勇気ある告白への、心からの拍手だった。


「……あはは! 恋のライバルがあの『ガク』なんて、光栄だよ!」

真っ先に駆け寄ってきたのは、有岡だった。


彼女は屈託のない笑顔で右手を差し出し、日高とグータッチを交わす。

「正々堂々、戦おうね!」

「……ありがとう、有岡さん」


日高は一度だけ、クラスのみんなに深々と頭を下げた。


「今日は、これを伝えに来ただけなんだ。

……この後、仕事があるから、お先に失礼します」


宣誓を終えた表現者・ガクの背中は、去り際までどこまでも凛としていた。



5. 置き去りの委員長



しばらくして、職員室から戻ってきた墨染は、教室の異様な空気を感じて足を止めた。


「……なんだ?」 クラスメイトたちの視線が、自分に集まっている。


それは、尊敬と、同情と、そして少しの嫉妬が混じった、言葉にできない熱い視線だった。


「墨染くん……おめでとう?」

「いや、お疲れ……? 頑張れよ、相棒!」


「……は?」


日高の姿はない。


空になった隣の席を見つめながら、墨染は自分だけが取り残された「謎の熱狂」に、ただ首を傾げることしかできなかった。

最後までお読みいただきありがとうございました。


日高くん、最高にカッコよかったですね……! 秘密を共有する関係から、一気に「公認のライバル」へと関係を塗り替える潔さ。墨染への愛が、彼をここまで強くしたんだと感じる回でした。


有岡さんの「ライバルがガクなら光栄」という返しも、物語に爽やかな風を吹かせてくれましたね。


さて、自分が「全校公認のガクの本命」になったとは露知らず、一人ポカンとしている墨染くん(笑)。


次回もぜひお楽しみに。評価や感想、お待ちしております!

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