18話:夜明けの救済
第18話をお読みいただきありがとうございます。
大切な「挨拶」を脅迫の道具にされ、一人で傷ついていた日高。 墨染は、そんな彼の弱さも後悔も、すべてを包み込むような大きな愛で寄り添います。
二人きりの夜を越えて、日高が取り戻した「本当の笑顔」をぜひ見届けてください。
1. 救済のハグ
「……日高、」
保健室で泣きじゃくる日高を、墨染は何も言わずに強く抱きしめ続けた。
大きな手で、震える日高の頭をゆっくりと、何度も撫でる。
その体温と一定のリズムに、日高の激しい呼吸もようやく少しずつ落ち着きを取り戻していった。
「今日はもう帰ろう。明日は休みだし、前みたいにずっと一緒にいよう。……いいな?」
墨染の問いかけに、日高は縋るように小さく頷いた。
2. 友情の呪縛
静まり返った日高の部屋。
明日は休みだが、祝祭の気配はない。
日高は無意識に、汚されたと感じている自分の唇を何度も袖で強く拭った。
(……あんな奴とキスして、俺の唇は汚れちゃった。
墨染とキスしてるのをバラされたくない、自分がガクだと知られたくない……。
自分の保身のために、あいつの要求に屈しちゃうなんて。
本当は、友達としてじゃなくて、もっと別の……恋愛として、いつか墨染と特別なキスがしたかったのに。
こんな俺じゃ、もう一生叶わない……)
友情の証であるはずの「挨拶」さえ守りきれなかった自分に、恋愛としての幸せを願う資格なんてない。
日高は絶望の深淵に沈み込んでいく。
3. 墨染の献身
墨染は日高の隣に座り、真っ直ぐに彼を見つめた。
「なあ日高、何かしてほしいことはないか?
お前のために俺ができることなら、なんだってやる。
モデルだって、お前がいてくれたから優勝できたんだ。
今度は俺にお前のために何でもさせてくれ。恩返しさせてくれよ」
墨染は、日高が一人で恐怖と戦っていたことを労るように、ありったけの言葉を投げかけ続ける。
4. 上書きの儀式
墨染の揺るぎない眼差しに、日高はぽつりぽつりと本音を漏らし始めた。
「……俺、墨染とキスしてる動画をバラすって脅されて。
自分がガクだってバレるのも怖くて……保身のために、あいつとキスしちゃったんだ。
それが、どうしても許せなくて。汚れたまま、墨染とまた『挨拶』なんて、できないと思って……」
「お前は、俺たちのことを守ろうとしただけだろ? 何も悪くない。……どうしても気になるなら、全部上書きしよう。
お前がもう思い出せなくなるくらい、俺がいっぱいしてやるから」
「……」
日高は何も答えず、ただ真っ直ぐに墨染を見つめ返した。
潤んだ瞳に映る熱。墨染はそれを「いい」という同意だと受け取った。
墨染の手が日高の頬を包み込み、まずは額、そしてまぶた、頬へと、羽が触れるような優しいキスを何度も落としていく。
「……ん、」 最後に重なった唇。
嫌な記憶が墨染の熱で溶かされていく。
一度、二度……何度も繰り返される「挨拶」に、日高の指先から力が抜け、次第に心が満たされていった。
5. 静かな夜明け
翌朝。
窓から差し込む柔らかな光で、日高は目を覚ました。
隣を見れば、穏やかな寝顔の墨染がいる。
その存在を感じるだけで、昨夜までの絶望が嘘のように消えていた。
(……墨染がいる。それだけで、俺は……)
墨染が目を覚ますと、日高は自分からそっと顔を寄せた。
迷いのない、柔らかな「挨拶」。
「……おはよう。……もう、大丈夫。墨染のおかげ。……ありがとう」
日高は少し照れくさそうに、けれど今までで一番晴れやかな笑顔を浮かべた。
二人で迎えた朝。
汚れた記憶は、墨染の温もりによって完全に塗り替えられていた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
自分の保身のために屈してしまったという日高くんの自責の念……とても切なかったですが、墨染の「お前は何も悪くない」という言葉でようやく救われましたね。
言葉ではなく見つめ合うことで交わされた「上書きの儀式」。 そして翌朝、日高くんの方から「挨拶」ができたシーンには、私も思わず胸が熱くなりました。
さあ、自分自身を取り戻した日高くんと、彼を守り抜いた墨染。
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