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183cmの甘い境界線 ― 僕らは、糖分不足。 ―  作者: kobato.


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第11話:青春の追試

第11話をお読みいただきありがとうございます。


日高に強引に連れ出された先は、勉強とは無縁のゲームセンター。 お金はあるけれど「思い出」がない日高と、日々の生活に追われて「余裕」がない墨染。


そんな二人が、不器用にボールを追いかけ、一つの布団で夜を明かします。


普段は冷徹なモデル「ガク」として生きる日高が、墨染の前でだけ見せる、一人の高校生としての素顔。 そして、夜の静寂の中で交わされる「特別な時間」を、ぜひ見届けてください。

1. 勉強会の開始



放課後、日高が「勉強教える」と言って墨染を連れ出したのは、駅前の静かなカフェ……ではなく、賑やかなゲームセンターだった。


「おい、ここ勉強する場所じゃねーだろ。っていうか、俺バイトあんだけど」


「……休み、取らせた。チーフには俺が電話して、モデルの仕事の付き添いだって言っといたから。……時給分は、俺が払う」


「はぁ!? お前……!」

日高は強引だが、墨染の事情を無視せずに「時間」を買い取るという彼なりのやり方で、無理やり放課後を奪っていった。



2. 形に残る「思い出」



UFOキャッチャーの筐体の中で、不格好なクマのぬいぐるみがこちらを見ている。

「……お前、こういうの得意なんだな」

墨染が持ち前の器用さでアームを操り、二つ同時に仕留めると、日高は驚いたように目を丸くした。


「バイトで培った集中力だよ。ほら、やるよ。……今日の思い出に」


墨染がぶっきらぼうに渡すと、日高は双子のようなクマの片方を「……サンキュ」と大事そうに抱きしめた。


「……名前、つけないとな。こっちが墨染で、こっちが俺」

ボソッと呟いた日高の顔は、無機質なスタジオで見せる「ガク」とは正反対の、幼い高校生の顔をしていた。



3. 河川敷でのパス回し



ゲーセンを出た後、日高が指差したのは、墨染がいつも自主練をしていた河川敷だった。


「……お前がサッカーしてるの、いつも見てた。……一回くらい、お前とやってみたかった」


日高は運動能力は高いが、誰かとスポーツを楽しむ経験がない。

墨染は呆れながらも、ぎこちない日高にボールの蹴り方を教える。


夕暮れの中、183cmの二人が不器用にボールを追いかける時間は、どんな豪華なセットよりも輝いて見えた。



4. 青春の成績表



息を切らして座り込む二人。

日高が自販機で買ったスポーツドリンクを墨染に差し出す。


「……お前、勉強教えるって言ったくせに。結局、俺が遊び方教えてんじゃねーか。これじゃどっちが先生かわかんねーよ」


「いいだろ。……俺、こういう勉強は初めてだから」

「なんだよそれ。何の単位だよ」


墨染が笑い飛ばすと、日高は前髪の隙間からふっと穏やかに、見たこともないような笑みを浮かべた。


「……しいていうなら、青春?」

「……柄じゃねーよ」


墨染は笑いながら、日高と過ごす「無駄な時間」が、どのバイト代よりも価値があることに気づき始めていた。



5. 手料理と、日高の孤独



「……もう遅いし。今日、お前の家泊まる。……これも勉強になるだろ」

日高の提案に驚きつつも、墨染は自分の狭いアパートへ彼を招き入れた。


冷蔵庫の余り物で作った、茶色くて簡単な肉野菜炒めを並べる。

「……手料理だ、久しぶり……おおぉ」 日高は箸を止めて、信じられないものを見るように料理を見つめた。


「大袈裟だな。……そんな料理くらいで喜ぶか? 普段もっといいもん食ってんだろ」


「……俺の家、親はデザイナーとモデルで、食事はいつも外食か用意されたもの。


仲が悪いわけじゃないけど、二人とも自分の世界で生きてる。


……この仕事も、親の付き合いで始めただけだし。俺自身のことなんて、誰も見てない」


豪華な暮らしの裏にあった、日高の孤独。墨染は、自分も一人暮らしで人がいるのが嬉しいのもあり、静かに日高の話に耳を傾けた。



6. おやすみの、特別な合図



結局、狭いシングル布団に背中合わせで二人丸まって寝ることに。


「おい、くっつくなよ」

「……狭いんだから、しょうがないだろ」


伝わってくる確かな体温。

眠りに落ちる直前、日高が「……なあ」と墨染を呼んだ。


「……何だよ」 振り返った墨染に、日高は「じゃあ、これだけ」と、迷いなくその唇を重ねた。


「……おやすみのキス……」

「っ、……ふざけんな。……寝るぞ!」


墨染はそう吐き捨ててそっぽを向くと、無理やりいびきをかいて寝たふりをした。

でも、高鳴る鼓動だけは、どうしても静まってくれなかった。

最後までお読みいただきありがとうございました。


ゲーセンで獲った二つのぬいぐるみ。 日高が「こっちが墨染で、こっちが俺」と名付けた瞬間に、彼にとってのこの日がどれだけ大切なものになったかが伝わってきて、胸が熱くなりました。


豪華な食事よりも、墨染が作ったありふれた手料理に感動し、「青春」だと微笑む日高。 彼の孤独を少しずつ溶かしていく墨染の存在は、もう「友人」以上の何かになりつつあるのかもしれません。


最後の「おやすみのキス」。 寝たふりをして必死に動揺を隠す墨染と、淡々と、でも情熱を込めて攻める日高。 二人の「青春の成績」は、文句なしの満点ですね!


次回、朝を迎えた二人がお出かけ……? ぜひ【☆☆☆☆☆】や感想で応援していただけると嬉しいです!

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