第10話:お前だけに、限定公開
第10話をお読みいただきありがとうございます。
現場での騒動を経て、学校での二人の距離感に変化が……。 「183cmの帰宅部コンビ」としてクラスの注目を浴びながら、日高が墨染にだけ見せる本当の素顔。
日高の「お前にだけ」という言葉に、墨染の心拍数は上がりっぱなしです!
1. 教室での心地いい違和感
昼休み。
いつもならチャイムと同時に保健室へ消えるはずの日高が、珍しく墨染の席へと歩み寄ってきた。
「……おい。……飯、行くぞ」
その一言に、騒がしかった教室が一瞬だけ静まり返る。
「え、あの日高が自分から誘ってる……?」
「っていうか、あの二人いつの間にあんなに仲良くなったの?」
ひそひそと交わされるクラスメイトたちの声を背中に受けながら、墨染は「ああ、昨日の借りがあったな」と立ち上がる。
「まあ、同じ帰宅部コンビなもんでね。気が合うんだよ」
墨染が軽く周囲をいなすと、日高は無言のまま、でも当然のように墨染の隣をキープした。
183cmの二人が並んで歩く姿には、自分たちでも驚くほどの圧迫感と、そしてどこか誇らしいような「心地いい違和感」があった。
2. 特別なランチタイム
二人が向かったのは、屋上の端。
日高がおもむろに袋から出したのは、購買のパンと……あの予約の取れない二千円の高級メロンパンだった。
「え、またこれ!? 予約取れないやつだろ、どうしたんだよ」
「……別に。お前これ、好きだろ。用意しただけ」
わざわざ自分のために手間をかけてくれた日高のストレートな優しさに、墨染は少しだけ気圧される。
「……そりゃどうも。……そういやお前、現場で『好きじゃないやつとご飯行くとか無理』って言ってただろ。……俺と食べるのはいいのかよ」
日高はパンを齧りながら、迷いなく答えた。
「……お前は、無理じゃない」
3. 「限定公開」の笑顔と自爆
「……ふーん。でもさ、モデルモードの時はあんなにモテるのに、なんで学校ではその顔隠すんだ? もっとイケメンなの見せつければ、女子が放っておかないだろ」
すると、日高は少しだけ動きを止めて、前髪の隙間から、昨日見せた「ガク」とも違う、すごく穏やかで素の笑顔を墨染だけに向けた。
「……いや。俺は、お前にだけ知られていればそれでいいよ。……他のは、めんどくさいだけだし」
その言葉の破壊力に、墨染は心臓が跳ね上がる。
動揺を隠すように、「前髪長すぎなんだよ」と日高の髪を払おうとし――ふと、保健室でのあの「唇の熱」を思い出して、ピタリと手が止まった。
日高はそれを見逃さず、ふふっといたずらっぽく、でも可愛らしく笑う。
「……何? キス、思い出した?」
「っ、……からかうのも大概にしろ!」
4. 日高の牽制と秀才の嘘
そこへ、墨染を探しにいつめんたちがやってくる。
「おーい墨染! 午後、カラオケ行こうぜ!」
誘いに乗ろうとした墨染を遮るように、日高が即座に低い声で割って入った。
「……無理。こいつ、この後俺が勉強教えることになってるから」
「え、勉強? ああ、そうか。日高、学年トップだもんな。……墨染、赤点回避頑張れよ(笑)」
日高がクラス一番の秀才であることを誰もが知っているため、友人たちは納得して引き下がっていく。
5. 共犯者の昼下がり
周囲がいなくなり、再び二人きりの時間が戻る。
「……勉強なんて、約束してないだろ。嘘つくなよ」
「……嘘じゃない。お前、この前の小テスト、赤点ギリギリだったろ。……付きっきりで、教えてやる」
日高はどこか独占欲を隠さない瞳で墨染を見つめ、新しい飴を差し出した。
「……これやるから、逃げるなよ」
(……こいつ、絶対楽しんでる……。でも、やっぱりこの飴は甘いんだよな)
呆れながらも、墨染は日高が自分にだけ見せる「特別」を、どうしても拒絶できないでいた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
予約困難な高級メロンパンを用意し、「お前にだけ知られていればいい」と言い放ち、さらに勉強を口実に二人きりの時間を確保する……。 日高くん、不器用なインキャに見えて、実はかなり策士かもしれませんね。
「キス、思い出した?」と笑う日高に、墨染はいつまで「からかわれているだけ」だと言い聞かせられるのでしょうか。
次回の「放課後べんきょう会」もお楽しみに! 評価や感想で墨染の心臓を応援してあげてください!




