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復讐魔王  作者: takAC
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第八話

 ケインのことをしつこく聞いてくるアメリアには、詳細を濁し、巻き込みたくないという意思表示を匂わせたうえで、魔物の正体がケインだと告げた。

 あの女は馬鹿だ。

 隠そうとする素振りを見せる俺を見たら、貸しを作ろうと必死になって首を突っ込んで来るだろう。

 そんなことをせずともアメリアには俺とケインとの決着に至るまでちゃんと働いてもらう。

 その真実を告げ、そしてアメリア自身の死によってケインを弱体化させるためのな……。



 

 バルムンクの邸宅で見たケインのスケルトンは凄まじかった。

 スケルトンの身体は異様な雰囲気を醸し出し、俺に向けられた殺意はこれまでの人生、数多の敵から向けられたそれを全て合わせても引けを取らないほどのものであった。

 やはりケインは死してなお戦士。

 片田舎で領地経営などしている器ではなかったのだ。

 何度も見てきたケインの斬撃を躱す。

 ケインの全てを知っているからこそ成せる回避だ。

 ましてや魔物の身体、その動きのキレはケインの全盛期を越えている。

 剣を振り切った体勢のケインに蹴りを入れ、距離をとる。

 追撃のため、さらにこちらに踏み込もうとしてきたケインを領民がクロスボウで牽制した。

 邪魔なことをする。この戦いは俺とケインだけのものだと言うのに。


「邪魔をするなっ!!」


 ケインが領民兵に対して叫んだ。


「ハンス様を殺させはしない!この方はおまえの悪政から我々領民を救ってくれたんだ!!」


「黙れ!こいつは手柄を掠め取っただけだ!俺の政策が結果になるその瞬間を見計らってだ!」


 そんなふうに俺を思っていたかケイン。

 そうなるように仕組んたかアメリア。

 しかしそれらはもうどうでもいい。

 今は俺とケイン、二人の決着さえ叶えば、全ては些細なことだ。


「俺達にとってはあの頃の苦しみとハンス様の差し伸べてくれた手だけが答えだ!ハンス様に統治された領地は豊かになりつつある!!」


「俺が行った尽力がないものとでも言うつもりか!!」


 ケインは踏み込み、領民に対して斬りかかる。


「させるかっ!!」


 そうだ、させない。

 ケインの刃は戦士にとっての名誉ある死だ。

 小鳥のように醜く口を開け、ただ施しを与えられることを待っている、愚かな領民共が、おいそれと簡単に受けていいものではないのだ。

 ケインに身体ごとぶつかり、体勢を崩した。


「邪魔くさい戦い方ばかりをするな!」


「貴様のような化け物を相手にするんだ、正面から戦うバカがどこに居る!!大人しくもう一度死ね!!」


 今は違う。

 ここでつけるものは決着ではない。

 真の決着とは、俺とケイン、たった二人、何者にも邪魔されることなく行われるものでなければならない。


「アメリアはどこだハンス!!」


「彼女をどうするつもりだ」


「無論、取り戻す!」


「諦めろ、彼女の心はすでに、お前のもとにはない」


「貴様!!」


 ケインはまだ、アメリアを愛しているのだろう。

 しかし、「すでに」ではなく「最初から」あの女の心はケインのもとにないのだ。

 アメリアの愛したものは権力だけだ。

 その後は火炎瓶を使った戦法でケインは退却を余儀なくされ、アメリアを追うようにフローレンフェルトへと俺は向かった。



 フローレンフェルトについたあとは領主のハインツに現状の報告、アメリアを匿ってもらったことへの礼を行う。

 ハインツもケイン討伐に私兵や傭兵を雇い、協力してくれるということだ。

 断れば怪しまれるため、特にそれに対しては何も異論は言わなかった。

 ケインであればハインツの私兵や傭兵など取るに足らず、せいぜい決着までケインを削ってくれとその場をあとにする。


 アメリアのもとに向かった。

 彼女は俺をみかけ、大丈夫であったか聞いてくる。

 適当に流しつつ、今後について話す。

 ケインはしばらくすれば姿を表すこと。

 宛がないはずなのでまずは領主邸で情報を得るはずだということ。

 そうすれば間違いなくここに来るということ。

 

 そのうえで俺はアメリアに告げた。


「ケインは戦士としては比類なき男だ。いかに人数を集めようとやつには敵わない。

 しかしやつにも弱点はある。

 アメリア、おまえだ。

 お前にはなんとしてもケインに隙をつくってほしいのだ」


「わたしは何をすればよいのでしょうか?」


「揺さぶってほしいのだ。ケインの悪政を彼に伝え、暗殺を計画したことも打ち明けろ」


「ケインは、彼は私を殺さないでしょうか?」


「大丈夫だ。俺が一番ケインを知っている。

 あいつは愛したお前には手を出せない。

 そうして弱らせたケインを排除したあとはアメリア。

 俺と結婚し、共にバルムンクを運営していこう」


 アメリアはぱっと顔を明るくした。

 概ね今度こそバルムンクが自分のものになるとでも思ったのであろう。売女が。

 どのみちケインがハインツのもとに行った時点でハインツは殺される。

 そうなれば俺は責任を取って絞首刑になるとも知らずにだ。


 こうして俺はアメリアの元をあとにし、ケインが現れるまで潜むこととした。


 予想通りケインは現れた。

 そして計画通りハインツを始末したようだ。

 そうだ、それでいい。

 ハインツの死にケインが関与したことにより俺は絞首刑を免れない。

 しかし復讐者としてのケインは直接俺にトドメを刺したいはずだ。

 だがこの場ではない。ここを決着の場とするには邪魔な物が多すぎる。

 なにか場所を変えるための要素はないか。

 そう考えているとケインから「アメリアを弔いたい」との申し出があった。

 願ってもないことであった。

 3日後、リヴ山にて決着をつける約束を交わし、俺はその場をあとにした。


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