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第8話:反逆軍に敵国の王子が合流!? 恋と戦争のフラグが過積載すぎる

 ──カルナス砦・自由騎士団本陣。


 夜の帳が落ちる中、かつて帝国に仕えていた騎士たちは今、“反逆者”ではなく、“理想のための軍”として動き始めていた。


 そんな中、アメリアは一人、作戦室で地図を睨んでいた。


「帝国の動きが早い……物資路を一部潰しただけなのに、こんなに対応が迅速なんて」


「それだけ姐さんが“本物の脅威”になったってことですよ」


 レオンが飄々と笑いながら、報告書を渡す。


「そして──もう一つ、“招かれざる客”が来てます」


「……まさか、またリカルド?」


「違います。“敵国の王子”ですよ。例の、“あの”王子」


「……レオニス、来たのね」


 ──砦内・迎賓室。


 白と金の軍服に身を包んだレオニス=エル=ヴァルトリアは、相変わらずどこか人懐っこい微笑みをたたえていた。


「ようやく、また会えましたね。アメリア」


「“ようやく”って、戦場で会ってたじゃない」


「そういう意味じゃないですよ」


 彼の目は、真っ直ぐだった。


「僕は──貴女に、同盟を申し込みに来ました」


 アメリアは椅子に深く座り、視線を鋭く細めた。


「貴方は、敵国の王子。そして私は“帝国の反逆者”。どうして私たちが手を組むと思うの?」


「帝国が共通の“敵”だからです」


 レオニスは一枚の地図を差し出した。


 そこには、帝国の支配地域を示す赤い染みと、反乱軍・中立地域・他国の動きが色分けされていた。


「帝国は、ヴァルトリア王国にも侵略の構えを見せています。和平は建前。真の目的は“征服”です」


「……だからこそ、わたしが帝国に刃を向けた」


「そして、貴女の行動がきっかけで、多くの民と兵が目を覚まし始めた。

 僕はそれを“希望”と呼びたい」


 レオニスの声は、熱を帯びていた。


「君が掲げた“自由”と“責任”は、王国の民にも必要な理念です。

 ……だから、共に戦いませんか? “国の枠を超えて”」


 沈黙が流れる。


 アメリアは、ゆっくりと紅茶を口に含んだ。


「──貴方の言葉に嘘はない。でも、わたしは“理想家”にはならないわ。

 現実には、血と裏切りがつきまとう」


「……なら、その血と裏切りを、共に背負いましょう」


 その一言が、彼女の心を打った。


 そして──


「わかったわ。**“限定的な同盟”**を結びましょう」


 アメリアが差し出した手に、レオニスは静かに触れた。


 ──その数時間後、騎士団詰所。


「姐さん、本当にあの王子と組むんですか?」


「ええ。利用できるなら、使う。信じるのは最後でいい」


「冷静ですね」


「私はもう“誰かの言葉”で動くつもりはないの。

 ……でも、同じ未来を見る者とは、並んで戦える」


 アメリアの言葉に、レオンはわずかに目を細めた。


「じゃあ、その未来に……“内通者”がいたとしたら?」


「……なに?」


 彼は、静かに一枚の書簡をアメリアの前に置いた。


《“自由騎士団の位置が漏れている”

 “敵襲が妙に早い”

 “砦内に、帝国と繋がる者がいる”》


 ──裏切り者。


 翌朝。カルナス砦は騒然としていた。


「西方の斥候部隊が……壊滅!? まさか、帝国軍がもうそこまで……!」


「おかしい! 情報の早さが異常だ!」


 アメリアは歯を食いしばった。


「この中に……わたしたちの“歩み”を裏切ってる者がいる……!」


 レオニスが動いた。


「僕に調査を任せてくれ。ヴァルトリアの情報網を使えば、裏に誰がいるか見えるはず」


「……いいわ。でも動くなら早くして。帝国は待ってくれない」


 アメリアは剣を手に立ち上がる。


「この自由騎士団は、ただの理想じゃない。“行動”の軍よ」


 その背には、黒地に金の双剣が交差する新たな旗。

 かつての侯爵令嬢は今、“革命の先導者”として動き出した。


 そして──数日後。


 帝国が動いた。


 “叛旗の処理”を任されたのは、あの男──リカルド=アルセイン。


「まさか……俺が、“アメリアを討つ側”になるとはな……」


 彼の瞳は、複雑に揺れていた。


「命令だから、やるしかない。でも──今も、あいつが夢に出てくるんだよ」


 その独白は、帝国の正義と、かつての想いの狭間に揺れる、元婚約者のものだった。

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