邂逅
ーその日は、見事な明月だったー
椿青領・領城、東門にて、襲撃あり。
明るい月の夜、それは突然起こった。
祭の当日、彼は弟と2人、並んだぼんぼりに灯を灯しながら、宴の食卓はどんなものが出るだろうと話しつつ、これからの決意を述べる緊張を隠しながら楽しみに準備を手伝っていた。
宴が始まり、上座に居る父と母に拝礼し、口上を述べたあと、皆 揃って祝い膳を囲みながら舞いを観ていた。その時、駆け込んできた門兵が逃げろと叫んだと同時に爆発音が聞こえたのだった。
そこからあっという間の瞬間。
逃げる最中、父と母に抱えられ西門に差し掛かるとき、背後からの攻撃で両親が自分と弟を庇うまでは覚えている。
その一瞬の時間を思い出し、彼はもう一度、ゆっくりと瞬きをした。
目の前には赤黒く濁った瘴気と炎に埋もれ、倒れる両親の姿。
傍らには、すがり付く弟。
そして、この襲撃の主犯であり、自分と年が変わらないであろう少年が1人。
紅の目に射貫かれ、それが頭にこびりつく。
『またね。青龍の転生さん♪』
そう一言、にこやかに言って、たなびく一筋の紅の髪が瘴気の闇に消えていく。
その背中を青白い月が照す。
襲われた彼、青龍 累晏は追おうと手を伸ばすが、体は意識を手放した。