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「出てきちゃってよかったの?」
無言で先を歩く北條に問う。
繁華街を抜けて駅に向かう道は、明かりもさほどなく、静かな場所だ。
ここなら、天の川も見えるかもしれない。
「別に。」
「そっか。
まあ、ありがとうね。庇ってくれて。
でも、彼女をつくる機会、逃しちゃったね。」
急に立ち止った北條が振り向く。
その顔は、もはや苛立ちを隠そうとしていなかった。
「ふざけてんのか。」
「なにが…」
「勝手にいなくなりやがって。」
きっと、2年前のことを言っているのだろう。
だが、一方的に責められるのは心外だ。
「いなくなってないし!
そりゃあ、連絡先は変わったけど、住所も職場も変わってないから!」
「うるせえ。」
「はあ!?」
「そもそも、別れたつもりねえんだけど。
なに合コン参加してんだよ。」
突然距離を詰められる。
2年も接触してこなかったくせにとか、合コンはお互い様じゃないかとか、言いたいことは色々あるのに、口が動かない。
「なんか言うことねえの?」
居酒屋で、何度か口にした飲み物は、やはりノンアルコールだった。
ならば、先程から心臓がうるさいのは、酔っているからではない。
「やり直したいです…。」
「…だから、別れてねえって。」
初めて一緒に下校した時のように、手を繋いで歩き出す。
樹の表情が、やっと和らぐ。
何となく振り返ると、繁華街の明かりが横たわっていた。




