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1時間もすれば、皆いい感じにできあがっていた。
席替えもして、今、北條は、私から一番遠い席で、私を誘った同僚と話している。
さっきは別の子と話していたし、結構人気みたいだ。
顔がいいのは認めよう。
出世コースのようだし、口の悪ささえ表に出さなければモテるだろう。
一方、私は誰にも話しかけられず、一人黙々と運ばれてくる料理を食べている。
お酒の席では料理が余りがちだから、私は大抵それらを食べる役目。
色気のない格好で、食い意地だけあったのでは、男は寄ってこないだろう。
寄ってこられても困るんだけれど。
「ねえ、舞ちゃんさー、なんでそんな格好なの?」
から揚げを頬張っていたら、
斜向かいに座る男(名前は忘れた)が訊いてきた。
舞は私のファーストネームだが、名前呼びを許可した覚えはない。
「化粧も全然だしさー…ってかスッピン!?
もしかして、男はスッピンが好きっていうあれ、信じちゃってる?」
信じてません、と脳内で反論する。
そもそも、仕事終わりなのに、スッピンの訳がないだろうに。一般的な社会人で、仕事にスッピンで行く女性は、存在するのだろうか。
笑いながら、結構大きな声で言うから、皆がこちらに注目する。
他の男性達も、嘲るような笑みを浮かべている。
北條は無表情だが、特に庇ってくれる様子もない。
それは別に良い。
問題は女性陣。
一緒になって、かわいそうだよー、なんて言いつつ笑っている。
そこは、急にお願いしたからと、フォローするところではないのか。
言い返すのも億劫なので、黙ってニコニコしていると、
「合コンなのに、男に媚びなくてどうすんだよー!」
と更に続けた。
皆、声を上げて笑っている。
さすがに、今の発言が癇に障った私は、場違いだから帰るね、と席を立った。
あくまで笑顔を貫いて。
靴を履きつつ、なんでお前らに媚びなきゃいけないんだ、こっちにも選ぶ権利があるんだよ、と心中毒づく。
「佐々木さんが帰るなら、俺も帰ろうかな。」
耳を疑う言葉に振り返ると、北條と目が合った。
腰をあげる彼を、何人か焦って引き留める。
「待ってよ、北條くん!」
幹事の子は本当に北條狙いだったようで、必死に引き留めている。
しかし北條は、
「俺、性格悪い奴、嫌いなんだよね。
あと、化粧も服装も派手で、股がゆるそうな女も。」
と言い放った。
北條の暴言に、皆が閉口する。
それもそうだ。
さっきまで、薫風のような空気を纏っていたイケメンから、 “股がゆるそうな女”なんて言葉が出るとは、誰も思わない。
私も初見なら、同じ反応だったろう。
とはいえ、こんなに怒った彼を見たのは、2年という空白期間を除いても、久しぶりだ。
高校の時、北條のことを好きだった女子数人から、私が嫌がらせを受けていると知ったとき以来かもしれない。
あの時も、同じことを言っていた気がする。
呆けていると手を引かれ、北條と一緒に店を出た。




