召喚聖女は二人の純愛に負けた
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今日は想い人の彼とお茶会。守護魔法しか使えない私と違い、複数の魔法が使える彼は魔法騎士。魔王討伐のために異世界から召喚したという聖女の護衛で暫く会えなかった。変わらぬ姿に目が潤む。
「おかえりなさい。お仕事大変だったでしょう」
「只今。仕事は大変だったけど大丈夫。君は会わなかった間は何をして過ごしていたの?」
「毎日散歩していましたわ」
彼に会えなくて安否を憂い病んだ私に医師が散歩を薦めた。だから体調不良や雨風の日以外は歩いていた。
「毎日?飽きなかった?」
「二つの散歩コースを交互に歩くの。楽しみを見つけたから飽きなかったわ」
1つ目のコースの楽しみは叢で見つけた少女の石像。汚れて可哀想だったから綺麗に磨いて汚れないように守護魔法をかけておいた。
2つ目のコースの楽しみは森の入口で見つけた金色の犬。初対面のとき襲ってきたから守護魔法で撃退したら主認定されてしまい、通るたびお腹を撫でろと甘えてくるようになった。
本当は3つ目のコースもあって、山の上にある花畑が楽しみだったのだけど、花畑の端にある崖が昼でも底が見えない程に深くて危険だと思い、柵代わりにと守護魔法を施したら麓の村人達に感謝され、気恥ずかしくて通るのを止めた。恥ずかしいから彼には内緒。
今日は想い人の彼女と茶会。異世界から召喚した聖女の護衛に任命され、彼女に暫く会えなかった。久しぶりに会った彼女は目を潤ませて俺を出迎えた。会えなかった間の彼女の話に癒やされながら聖女との日々を振り返る。
聖女は魔王討伐の供に熟練の騎士達を断り、魔法騎士の俺は兎も角、何故か戦闘の実践経験がない王子や宰相の息子といった若者ばかり指名し、皆に気があるように振舞うので俺達は内心毛嫌いしていた。
『魔法力の増強が出来ない!私よりも先に女神に加護を貰った奴がいる!?』
『聖獣まで主従契約が済まされてる!これじゃ攻略対象者達との逆ハールートに入れない!』
『魔界の入口が女神の永久結界で閉じられてる!嘘でしょ、イケメン達と恋愛イベントが何一つ起きないままエンドなんて……』
魔王が永久に現れないのなら聖女は不要。聖女は帰るのを拒んだが即座に元の世界に送還させた。
「褒美に爵位を賜ったんだ。結婚してこれからは二人で散歩に行こう」
伯爵家の庭師の息子と伯爵令嬢。彼が魔法騎士となっただけでは結婚は許されなかった。
「一緒に散歩しましょう」
ようやく一緒になれる。二人抱き合って喜んだ。
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