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黄金物語  作者: ちゆき
第一章 襲撃編
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第7話 そうぐう

〜あらすじ〜

新たに解明された謎。

そして新たに生まれた謎。

あきとを攫ったとされる人攫鬼の思惑とは───

「そういえば、謎な事がまだ1個残ってるぜ?」

集めた大量の葉っぱを袋に詰めながら、あきとが呟いた。

「何故ここに来たか⋯か?」

「そうそう!それ!俺って攫われたんだろ?じゃあその鬼とやらの所に連れていくもんじゃねえのか?」

「⋯それが分からぬのだ。本来であればあきとの言う通り自分の場所に連れ帰るはず⋯。しかしここに来てしまった。偶然なのか必然なのか⋯それすらも分からぬのだ。」

あきとの問に、わたしは目を伏せながら答えた。

そんなわたしを見て、あきとは慰めるように言った。

「そ、そんな落ち込むなよ!俺なんてなんも分かってなかったんだし!ちょっと気になっただけだからよ!」

⋯別に落ち込んでいた訳では無いのだが、あえて触れないでおく。

「まあ、偶然落とされたのかわざと落として行ったのか分かんねぇけどよ。ここに来れたのはそのおかげって事だもんな。」

「⋯?」

「ここに来てしまった」ではなく、「ここに来れた」⋯?

普通に人間として日常生活を送っている方が幸せな事だろうに。

首を傾げるわたしに、あきとは続ける。

「ここに来れたおかげで、まつに出会えた。そこだけは感謝だな!」

にっと歯を見せて笑うあきと。

そんな言葉に少し恥ずかしくなってわたしは目を逸らす。

そんなわたしを気にせずあきとは続ける。

「それに、神様に直に守ってもらえるなんて体験そうそう出来ないぜ?ついてねぇと思ったけど、案外ついてんのかもしれねぇな!」

「⋯そうだといいな。」

目を逸らしたまま、答える。

おもむろに山の方に目をやると、夕焼けの綺麗な朱色が広がっていて、山を染めあげてしまうかのようだった。

何年も何十年も、何百年も、独りで見ていた景色。

「⋯こんなに、綺麗だったかな。」

眩しさに目を細めながら、ぼんやりと見つめる。

「⋯神様、か⋯。」

呟いた言葉はあきとには聞こえていなかったようで、

振り向いた時には大量の葉っぱを担ぎ上げた所だった。

そのまま葉っぱを捨てに行こうと社の方に歩いて行っていたかが、捨てる場所が分からなかったらしく立ち止まってこっちに向き直してきた。

「なぁ、この葉っぱどこに捨てんだ?ゴミ捨て場とかあんのか?」

「ああ、それならその社の横の⋯」


言いかけて、言葉を止める。

あきとの奥に、悪意に満ちた、禍々しい、纏わりついてくるような気配を感じた。

人間のものでもない。獣のものでもない。

警戒心を写すかのように、わたしのしっぽが毛を逆立てて立ち上がった。

「⋯?どうした?」

そんな私の様子を見て、あきとが問う。

「⋯こちらへ来い、すぐに。」

絞り出すかのように私は答える。

あきとは気配を感じていないのか、不思議そうな顔を浮かべつつもこちらに歩み寄ってきた。

刹那──────




「あァ⋯やッパり守っテやがッタのかァ⋯⋯⋯。」




不意に聞こえてきた、どす黒い声。

声の出処は、先程気配を感じたあきとの後ろ。

あきともその声が聞こえたようで、驚愕の面持ちで振り返ろうとしていた。

「振り返るな!!!!こちらに走れ!!!!」

思わず叫んだ。

わたしの叫びに従い、あきとが一目散にこちらに駆け出す。

その瞬間、社の前の空間が裂け、腕が飛び出してきた。

振り返ろされた腕は、幸いにもあきとの持っている袋を掠めていった。

衝撃で裂け、ばらばらと大量の葉っぱを落とす。

あきとはなんとか、わたしの元へ辿り着いた。

「はえェなァ⋯足かラ狙ウべきだッタかなァ⋯?」

その葉っぱを踏みにじるかのように、声の主が姿を現した。

身長は3m近くあるだろうか。

全身に巻いた黒い布。

布の上からでもわかる筋骨隆々な身体。

手足に伸びる長く鋭い爪。

そして、頭に伸びる2本の角。

「⋯迂闊だった⋯!こうも早く⋯!」

その姿は紛うことなき、鬼の姿であった。



「⋯⋯人攫鬼⋯⋯!!」

「ほゥ⋯オレの正体ばれテんのか⋯。中々やルなァ⋯。」

睨み付けるわたしを気にも留めてず、鬼はケタケタと笑い出した。

鬼の姿を視界に捉え、怯えきっているあきとを背に画しながら、わたしは振り絞るように言葉を紡ぎ、鬼に問う。

「⋯獲物を、こいつを拾いに来たのか⋯?」

「あァ⋯?」

わたしの問いに、鬼はさらにニヤアと口角をあげ、答える。

「拾い二⋯?違うなァ⋯そいツを受ケ取りに来タんダ⋯。」

「受け取りに⋯だと⋯?」

「俺ハそいつヲここに()()()置いテいっタんダ⋯。それヲ受け取リに来た訳ダ⋯。」

言い終わると、鬼はまたケタケタと笑い出した。

そのおぞましい笑い声に、身の毛がよだつ。

わたしの恐怖に答えるかのように、膝がガクガクと震える。

だからと言ってはいそうですかと差し出す訳にはいかない。

元の世界に返すと、守ると「約束」したのだから。

震えそうになる声を何とか抑え、また問いかける。

「わざとだと⋯?一体どういう意図で⋯!」

鬼はわたしの事など気にもとめず、ただ楽しそうに答えた。





「お前二その人間ヲ殺しテ貰ウ為ダ⋯。過去二人間ヲ殺シ、玉藻ノ使い神かラ駄神へと成り下ガった「元」使い神⋯。天津ノ神ノ巫女二なァ⋯!」

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