第16話 さくせん
〜あらすじ〜
御社大神の助力を得られなかった3人。
次なる手を打つためにまつには提案があるようで───
ヤシロ様の居なくなった主道で、わたし達は少しの間今後の事を話し合っていた。そして今回の話をどうやってヤシロ様に伝えるべきか、というところで話し合いは止まった。
「取り敢えず、御社様に話を聞いてもらわねぇ事には何も始まらねぇ。どうやって話を付けに行くかだけどな⋯。」
「わたしは守護塔の中までもは勝手には入れぬし、そこに関しては手塞がりだな⋯。」
うんうんと唸っていると、「あー⋯えっと」とあきとが右手をおずおずと上げた。
「あー、その、月詠さん?」
「月詠《様》だろうが人間。」
被せ気味にヨミが睨む。
こら、と窘めながら少し怯んだあきとに続けるよう目で促した。
「その、月詠さんは守護塔の中に入れねぇのか?あの御社様とかいう人、月詠さんの言葉は聞いてくれそうだったけど⋯。」
「⋯ケッ。出来たらそうしてる。」
「⋯?」
悪態をつき、守護等の方に目をやるヨミをあきとは不思議そうに見つめる。
「⋯あきと、守護塔にはな、最上級神の方達か、並びにその方達から許可札を頂いた者しか立ち入れぬようになってるのだ。」
「え、でも月詠さんって通信役の長なんだろ?この塔の中にも用がある事もあるんじゃ⋯。」
「⋯チッ。」
舌打ちをしながら、ヨミがこちらに居直る。
イライラとしているのか、しっぽの先が忙しなく左右に動いている。
「神々の階級も理解してねぇのに口挟んでくんじゃねえよ。ウチがお前を助けてやってんのは琥珀の顔に免じて、ってとこ忘れんじゃねえぞ。」
そう言ってあきとの方を睨むヨミ。
あきとも急な敵意に納得がいかないのか、戸惑いながらも突っかかって行った。
「なっ⋯。じゃあ教えてくれよ。俺の知らねぇ事。」
「知らねぇ事だらけだろうが。つか、知らねぇなら知らねぇままでいいんだよ。干渉してくるな。」
「んだと⋯!?」
一触即発の雰囲気が漂う2人。
喧嘩をするのは構わないがわたしを間に挟んでやるのは勘弁して欲しい。
「ヨミもあきともやめろ!今ここで言い争ってる場合では無かろうが!」
わたしの一際大きな声が響くと同時にあきととヨミはビクッと身体を跳ねさせ、こちらに向いた。
まずはヨミの方に居直り、諭すように声音を変える。
「ヨミ、あきとは人間だ。知らぬ事が罪では無かろう?そんな邪険な言い方をするでない。」
「⋯⋯⋯⋯⋯。」
ムスッと不満気なヨミは置いておいて、次はあきとに居直る。
「それからあきと。神々はわたしやヨミように心優しい者ばかりでは無い。あまり無礼を働くと存在ごと消されかねん。少なくともこの世界では大人しくしていろ。」
「⋯⋯⋯⋯分かった。」
こちらも不満気だったが取り敢えずは場が落ち着いたということで良しとしておいた。
──ふと、ここで背中に視線のような気配を感じた。
なんだか気持ちが悪く、ばっと振り返ったがそこには何も居なかった。
「⋯どうした?」
「⋯いや、何かの気配を感じた気がしたのだが⋯。」
「⋯?ウチ見てたけどそっちには何も居ねぇぞ。」
「⋯気の所為かな。どうも緊張で気配を上手く掴めていないようだ。」
気を取り直して、また2人の方に顔を向ける。
「⋯では、わたし達がこれからどう動くかだが。一旦中心部から出て《新羅の街》に行こうと思う。」
「⋯ああ、なるほどな。その手でいくかぁ。」
「あきとはわたし達に着いてきてくれ。至ってない説明はまた、行き道でわたしがしよう。」
「あ、ああ。分かった。」
取り敢えずの行き先が決まり、わたし達は主道を引き返す。
背中から感じていた視線のようなものはここで途切れた。
主道を引き返し、脇にある大門を抜けた先、木々が生い茂る山道の前に立つ。
ここもまた、懐かしさを感じる道だ。
「なあ、ここからどれくらいかかるんだ?遠いのか?」
あきとの問いに、珍しくヨミが答える。
「お前を置いて飛べば半刻。」
「⋯俺を連れて歩いたら?」
「1日あれば着くんじゃねえの?」
「1日⋯⋯っ?!?」
「ヨミ⋯わたしも今飛べぬこと忘れておらぬか⋯?」
あ、いけねとヨミがへらへらと笑う。
いつもの感じの会話がとても安心して胸が少し軽くなった気がした。
「すまぬな、少し長旅になるが⋯。大丈夫か?」
「あ、ああ、全然!陸上で鍛えてるしよ!」
「それなら、良かった。では向かおうか。」
「琥珀、ウチには?ウチに心配の言葉は無いの?」
「貴様は疲れたら飛べば良かろう。」
「琥珀が冷たい⋯。怒ってんのか⋯?」
冗談だよと笑いながら、3人で山道を歩き出す。
がさがさと揺れる木の音が、妙に心地よく聞こえた。




