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黄金物語  作者: ちゆき
第二章 天界編
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第15話 じじょう

〜あらすじ〜

2人の前に現れたヤシロ様こと、御社大神。

彼女は2人に対していい印象は抱いていないようで───

腰まで伸びた黄金色に輝く髪。

トレードマークとも言える片目かけの眼鏡。

そしてわたしより一際大きな尻尾が5本。

唖然とするわたし達の後ろに現れたのは、遠い昔、産みの親のように一緒に居てくれたあの時から、幾分も姿を変えぬ御社大神(おやしろのおおみかみ)の姿だった。


「や、ヤシロ⋯様⋯。」

「人間なんか連れて何しに戻ってきたのです〜?天津の⋯ああ、いけません。その戒名はもう剥奪されたのでしたね〜。」

「⋯っ!」

そう言うヤシロ様の目に、味方に向けられる優しさは微塵も無かった。

ただ、外部の者へ向けられるなんの関心もない冷たい目。

思わず怯んでしまったわたしの横へ、あきとが視線を遮るかのように寄り添い立った。

「⋯どうも、人間の安倍彰人、です。」

「存じてますよ〜。安倍家の末裔の人間ですね〜。」

「⋯俺がここに居るの、快く思わないのは分かってます。でもどうか、まつの話だけでも聞いてくれませんか。」


「はぁ⋯まつと言うのは⋯そこの堕神の事でしょうか〜?」

あきとの問に、にっこりと目だけを細め、ヤシロ様は冷たい声音で言い放った。

その言葉に、胸がズキンと痛む。

顔が見れない、目を見れない。

目に涙が溜まっていくのが分かる。

俯くことしか出来ないわたしとは真逆に、あきとは、その言葉に怒りの感情を顔に出し鋭い目でヤシロ様を睨む。

そして驚いたのは、怒りの気配が後ろからも感じられた事だった。

「⋯⋯⋯ヨミ⋯⋯⋯?」

「⋯どうしました〜?月詠?」

ぽけっとしているヤシロ様の元へ、ヨミが詰め寄る。

わたしの横を通る時に、ギンっと細められた目からヨミの怒りが垣間見えた。

「⋯さっきから、そんな言い方、ないんじゃないですか。」

「⋯おやぁ?」



「琥珀の事、ずっと可愛がってきて、神術も結界術も全部教えの親であるアンタが、琥珀を拒絶するような言い方してんじゃねえよ!」


ヤシロ様は、ゼロ距離で吠えるヨミに対して全く響いてませんと言わんばかりに、笑みを崩さず凛と対峙している。

「⋯あらあら〜。月詠、貴女⋯。」

1歩前に出て、ヨミとの距離をさらに詰めるヤシロ様。

その姿からは、確かな殺気が漏れ出ていた。


「⋯私にそのような口を聴くのは後500年は早いのではなくて〜?」


「っ⋯!?!」

押しつぶされるような重圧。

開けられたその眼に刺され、身体が強ばるヨミ。

そんなヨミを見て、ふっと殺気を収め、ヤシロ様はわたし達に背を向けた。

「⋯警護の子が月詠様がと泣きながら飛んできたものですから何事かと思い、出てきましたが〜⋯。」

ちらり、とわたしとあきとの方に視線をやり、また前に向き直る。

「⋯貴女達絡みとなれば手を貸す気はありません〜。どうぞ回れ右してお帰り下さいな〜。」

そう言い残し、御社様は姿を消した。

一気に緊張の糸が切れ、わたしは膝から崩れ落ちるように座り込んだ。

そしてそれは皆同じだったようで、各々が地面に腰を下ろし、天を見上げた。

「⋯なんつーか、取り付く島もねぇって感じだったな。」

ぽつりと、あきとが呟く。

その言葉にヨミが悔しそうに噛み締めながら地面を殴る。

「⋯くそっ!!ウチが悪ぃ⋯。つい敵に回すような事しちまった⋯!」

「⋯いや、ヨミは悪くない⋯。そんな顔しないでくれ。」

「でも⋯!」

「⋯とりあえず事情を話さん事には始まらない。鬼絡みだと知れば何かしら手を貸してもらえるやもしれん。」

ぽんぽん、と袴の土をはらいながら立ち上がる。

特に自信があるわけでも手がある訳でも無い。

でも、ここに座って天を見上げているよりはいいと思った。

また会うのが怖い。あの目で見られるのが怖い。

でも、何かしら動かねば、何も始まらぬ。

そう自分に言い聞かせ、2人の方に居直る。

「取り付く島は無いが⋯藻掻いて泳がねば先へも進めない。わたしはわたしの出来る事をやってみるよ。」

「⋯ふっ。そうだな。まだやれる事はある筈だ。

座っててもしゃあねえか。」

わたしの言葉に笑って、ヨミが立ち上がる。

2人であきとの方に居直り、そしてあきとが立ち上がる。

「⋯すまねぇな。俺のせいで。」

「⋯今更だ。それにお前を助けると言ったのはわたしだ。」

また、自分に言い聞かせるように、強く、




「約束、したからな。」








───守護塔の最上部、その一つ下の階層。

自室に戻り椅子に腰かけながら水晶に目をやる人物が1人。

「⋯月詠を介してまで戻ってきて、何を私に頼もうとしているのでしょうか〜。」

そう呟き、水晶に手を置く。

慈愛と悲壮の漂う目で、ただ1点、まつの事を見つめる目。

「⋯琥珀、貴女はまだ人間を助けようとしているのですか〜?」

遠い過去を思い出し、少し苦しくなる胸に気づかない振りをして、水晶への術式を閉ざす。

消え入るかのように、映像は黒く包まれた。

「⋯少し、冷たくしすぎましたかね〜?まあそれも、あの子が超えるべき試練のひとつですから〜。」

不敵な笑みを浮かべ椅子から立ち上がり、御社大神は自室を後にした。


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