第12話 なかま?
〜あらすじ〜
日差しが差し込む部屋で目覚めたまつが目にしたのは
自分の横で眠るあきとの姿だった。
そこから始まる久しぶりのほのぼの回でし
「ほのぼのしておらぬわ!!!!!!!!!!」
「神様に連絡!?!?」
「そ、そんなにびっくりすると思ってなかった⋯。」
響き渡るような声で驚きの声をあげるあきと。
耳に直接その声を喰らい、キーンとなる耳を抑えながらわたしは呟いた。
「だ、だって確かまつって神様の資格的なの剥奪されたんじゃ⋯?神力⋯だっけ、それもほとんどないって⋯。」
「剥奪されてなどおらぬ。神力を抑え込まれてるだけだ。
駄神に堕ちたとしても神には変わりない。人間も悪に染った奴の事を《悪人》と呼ぶだろう?でもそいつが人間である事には変わりない。そういう事だ。」
「はー⋯だから神様と連絡がとれる、と。⋯でもなんで神様なんだ?あいつをどうにか出来るのって陰陽師なんだろ?」
「⋯まあ知らぬのは無理もない。また説明してやる。」
向き直り、書斎の襖を開けて中に入る。
埃っぽい空気に咳き込みそうになるのを何とか堪え、四方に囲まれた本棚の西側へ歩く。
そして床に積まれた本を端に寄せ、本の下敷きになっていた地下収納の扉を開けた。
「ここに色々隠してあるんだ。通信用の神器はどこだったかな⋯。」
地下収納に頭を突っ込み、がさごそと物を出しては外に放り投げる。あきとが「ああ⋯片付け出来ない系女子か⋯。」と呟いたのは聞こえていない事にした。
「物が多すぎるな⋯と、あったぞ!これだ!」
ようやく目当ての物を見つけ出し、地下収納から頭を出す。
小脇に抱えていた黒い箱型の物を床に置くと、何故かあきとが怪訝そうな顔をした。
「⋯?なんだ?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯それが、神器?」
「ああ、この受話器を持ち上げてな、この数字が書いてあるボタンを押すと神界に繋がるんだ。肩紐をつけて肩から下げればどこからでも連絡できる優れものだ!どうだ?神の道具は素晴らしいだろう?」
「⋯⋯⋯肩掛け式携帯電話だなあ⋯⋯⋯。」
聞いた事のない単語を発しながら憐れむような目を向けてくるあきとは気にしない事にした。
「ああ、それとさっきの話だが。」
「え?ああ、なんで陰陽師じゃなくて神様に連絡すんの?って話?」
床に置いた神器の準備をしながら、あきとに説明する。
「そう、その話だ。まあ簡単に説明すると⋯陰陽師の使う術の名前をその名の通り陰陽術というのだが、その陰陽術は元々我々の神術を元にして作られた物なんだ。だからそういった封印系の類は我々の方が詳しいという事だな。」
「陰陽師の力が元々は神様の力⋯!?って事は、俺にも神様の力が⋯!?」
「と、思うだろうが残念ながら陰陽術は人間であるお前たちが作り上げたもので神術の類では無い。封印系の術式は近いところがあるがな。」
「なんだよ期待させやがって⋯。で?さっさと連絡しねぇの?」
「いや、まあ、その、心の準備というか⋯。」
「はぁ⋯?どういう⋯?」
歯切れ悪く答えるわたしに、あきとが怪訝な顔で聞いてくる。軽いため息をついて、わたしは神器(電話)に居直った。
「⋯まあ聞いてれば分かるよ。」
受話器を上げて耳に当て、重い指を動かしてボタンを押す。つーっという音の後に案外早く通信は繋がった。
「あー⋯申す、申す。こちら天津の神の巫女であるが⋯」
【ああ!?!?!?虎珀かお前!!!!!
お前こっちに通信寄越していい立場じゃねえだろ!!】
わたしが名乗りをあげるより早く、電話の主の声が鳴り響いた。
「な、なんだコイツ⋯てか虎珀って誰だよ⋯?」
「⋯すまん、後で説明するから⋯。」
本日二度目のキーンとなる耳に不快感を覚えながら、わたしは続ける。
「⋯貴様、わたしを旧名で呼ぶな。繋いで欲しい方が居るのだが繋げるか?」
【やだね!!!そもそも駄神になったお前がこっちに用がある訳ねぇだろ!!!】
「用が無ければわたしとて連絡したくなかったわ!」
【あーあーうるせーうるせー。⋯何の用だよ?寂しくなって声でも聞きたくなったか?】
「茶化すな!⋯少々面倒な事が起こってる。玉藻大神側近のヤシロ様に繋げるか。」
【あぁ!?!?!?!?!?】
わたしが言うやいなや、本日三度目の大声が響き渡った。
そろそろ耳が聞こえなくなってもおかしくない。
【出来るわけねぇだろ!!!!そもそもあの方は妖怪絡みか鬼絡みが専門なの知ってんだろ!!鬼も妖怪も封印され尽くしてる人間界でなんの用があんだよ!!!!!】
「⋯その鬼絡みだと言ったらどうする?」
わたしが問うと、先程の喧騒が嘘のように静かな声に変わった。
【⋯有り得ねぇな。近年で封印が解けちまうような奴らは居ねぇ筈だ。それにその辺に封印されてんのは人攫鬼だろ。安倍晴明の封印が解かれるとは考えにくいがな。】
「⋯実際起こってるのだ。先日その鬼に襲われてる。」
【仮にも神のお前がか?ますます有り得ねぇな。】
取り付く島もない、と言った感じであしらわれる。
喚きたい気持ちを堪え、静かにわたしは続ける。
「⋯頼む。事態は急を要するのだ。それにこんな事⋯わたしは貴様にしか頼めぬのだ。」
【⋯詳細は。】
「次いで貴様にも話すから。頼む、ヤシロ様に繋いでくれ。」
【⋯悪ぃが、ヤシロ様に繋げることは出来ねぇ。虎珀、お前からの連絡なら尚更な。】
そう言うと、少しの静寂が流れた。
やはりだめか、と思い俯いていると、電話の向こうからまた話しはじめた。
【⋯繋げは出来ねえが、話をさせてやる事は出来るぜ。】
「⋯何!?本当か!?!」
【まあ、こっちも怒られるからあんまやりたくねぇけどよ⋯。結構深刻みたいだしな。】
「すまぬ、ありがとう⋯。本当にありがとう。」
わたしは何度も礼を言った。
あの方になら何とか、助かる方法を導き出してもらえるかもしれない。
「しかし、この通信で話せないならどうやって?なにか方法があるのか?」
【ああ、それなら】
瞬間、通信が途切れ、わたしの後ろから「うぉあ!?!」というあきとの叫び声が聞こえた。
何事かと思い振り向くと、あきとが尻もちをついてある1点を見つめていた。
その視線の先、積み上げられた本の上に立つ存在が1つ。
「⋯ウチがお前を神界に連れていく。一緒に来い、虎珀。」
そう言いながら自分のことを親指で指さす彼女は、大きな八重歯を見せて笑った。




