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プロローグ
けたたましく頭に響くような声。
蝉が大合唱を繰り広げている雑木林のその先。
古びた、けれどどこか奥ゆかしさを感じる佇まいをしている木造の神社の境内。
参拝客は居ない。
獣道を通って参拝に来る人間などこのご時世居やしない。
だからこそいい。
煩わしい人間など居なくていい。
自分達が知っている物と少しばかりでも姿形が違う物に奇異の目を、嫌悪の目を向けてくるものに近寄られたくは無い。
「わたし」は知っている。
世界の中心は人間であると。
だからこそ、人間に近寄られる訳にはいかない。
「わたし」は恐らくであるが
人間の知っている「わたし」ではない。
ならば「わたし」とはなんだ?
「わたし」はどうやって生まれた?
「わたし」はなんのために生まれた?
「わたし」はなんのために、今を生きてる?
·····そのどうしようもない困窮の答えは
あの日、わたしに答えをくれた
あの日、わたしを見つけてくれた
ただ唯一、わたしが心の底から愛した
「にんげん」が、教えてくれた。