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貴方は私が読んだ人  作者: 黒森 冬炎
第十一章 魔法使いの末裔たち

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231 円塔を落とす

 ガヴェンたちはひたすら魔物で出来た壁を壊す。床を抜く時には飛竜騎士たちが素早く並んで足場を作った。飛ぶことが出来ない魔法使いと騎士たちが有り難くその足場を利用した。


 円塔で魔法や武器を使っていたヒメネス城砦軍は、突然足元が消滅して顔色を変えた。バランスを崩して周囲を巻き込み、1階部分へと落ちてゆく。


「うわわっ」

「ひぃ!」

「しがみつくな!」

「落ちるっ」


 2階のヒメネス城砦軍には、浮かべることが出来る魔法使いがいないようだ。一部の射手や魔法使いは落ちながらも攻撃を仕掛ける。



 ガヴェンは後ろの建物群から来る兵士の足元を狙う。フランツも居住地区へと続く扉の前にある床を優先的に消した。勢い余ったヒメネス城砦軍が扉から1階へと流れ落ちてゆく。


「叛乱軍は捕縛しろ!」


 剣を振るいながら隊長が叫ぶ。巡視隊は人間の犯罪者にも慣れていた。降りかかる矢の雨はエリザベスが魔法の光で防ぎ、突き出される槍の穂先はユリウスの剣が切り落とす。


「助けてください!」

「こちらへ!」


 カチアに近づく王国派の魔法使いや騎士たちは、ヒメネス旧紋のついたマントや盾を捨てて立場を明かす。カチアが手を貸して飛竜の背に引き上げると、数人を乗せた飛竜は外へと逃れる。運搬役の飛竜たちは麓の村と塔とを行き来していた。



 隊長は剣の腹を使ってヒメネス城砦軍を器用に壁の外へと落としていた。


「瓦礫の上に投げておけ!」

「了解、隊長!」


 フランツは本を構えて魔法の光を操作する。樹の皮に似た落ち着いた茶色の光弾を並べ、光のシートを作った。シートは塔から落ちてゆく叛逆者を受け止める。


「なんだこりゃ?」

「ぎゃああっ」


 シートにぐるぐると巻き取られ、叛乱軍はひとまとめにされた。ロールケーキ状の叛乱軍を飛竜たちは尻尾で打って瓦礫のほうへと飛ばす。



 ガヴェンは塔の内側にいる人間に対応する。魔法の光を使って敵の動きを封じて行く。黄金の光弾を繋げて縄と成し、無力化した叛乱軍の騎士や魔法使いを縛り上げた。


 ある程度人数が溜まると、捕縛した叛逆者たちを浮かべて塔の外へと移動させた。しかる後に飛竜騎士たちに向かって頼む。


「吹き飛ばしてください!」

「お任せを」


 間髪を入れず、外で待機していた飛竜騎士たちが瓦礫の山まで叛逆者を吹き飛ばす。



 エルナンは飛竜たちと連携して魔物退治にだけ勤しむ。エリザベスもこの班だ。カチアはもっぱら援護する。2階と1階の両方に気を配りながら、飛竜の背に乗り魔法媒体となる本を掲げていた。


 エルナンがまだらに空けた穴は、床材を少しずつ切り離す。元は壁際にいた弓兵は、床の崩落と共に階下へと落ちた。


「わああっ、人が降ってくる」

「痛ぇ!暴れるな」


 2階の壁が無くなると、エリザベスは1階の壁に手をつける。手慣れない様子を見て投槍や矢に狙われるが、ゲルダの剣と飛竜の風が全て叩き落とした。


 カッレは懐から取り出した錘付きの鎖を駆使して、叛乱軍の腕や足を文字通り引っ張る。遠隔で振り回す鎖と同時に、軽めの片手剣で近接の敵をあしらった。



「救出完了!」

「じゃあ四角いとこに取り掛かりましょう」

「そうだね、シエリータ」

「エンツォ、疲れてたら少し休んでていいわよ?」


 地下の作業も終了したようだ。ギラソル魔法公爵夫婦は、散歩でもしているような気楽さで塔の1階と後ろの建物とを隔てる壁をぱっと焼失させた。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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