表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴方は私が読んだ人  作者: 黒森 冬炎
第十一章 魔法使いの末裔たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

222/247

222 ギラソル公ヴィセンテの到着

 飛竜騎士団の龍馬隊は、飛行班と騎馬班と交替しながらヒメネス城砦魔法騎馬隊と交戦している。ヴィセンテたちは飛竜に乗せて貰い、交戦地点を避けて飛ぶ。ラウール・ブランたちの予想通り、巡視隊を拾った後はまっすぐにヒメネス城砦を目指して来た。


「あれ?あの金髪は」


 ひとりの飛竜騎士が、近づくヴィセンテたちの中からひとりの青年を見分けた。


「来る時に見かけたディエゴさんだな」


 別の飛竜騎士も気がついた。


「一人で乗ってるみたいだぞ?」

「エリザベス様は別の剣士と乗ってるな?」

「巡視隊の騎士(デイム)ゲルダ・ベルイマン隊員だな」

「エリザベス様、巡視隊と仲が良かったのか?」

「女性同士で組んだんじゃないか?」


 屋上の飛竜たちは、とやかくと勝手な憶測を言い交わす。


「こらこら、無駄口はその辺にしとけ」


 ラウール・ブランが苦笑した。



 屋上には雪がなかった。周囲の丘や森へと続く雪原には、一面の銀世界が広がっている。岩の魔物はなんでも取り込んでしまう。魔法で保護されていないものは全て、波打つ黒い表面に巻き込まれて消えるのだ。


 そうこうするうちに、ヴィセンテたちがついに到着した。現場の指揮は巡視隊長アレッサンドロ・ホセ・マルケス伯爵が任されている。幼少のみぎりから病床にあったヴィセンテには難しいからだ。



 力強い龍の翼を青白く染めた飛竜に乗って、ヴィセンテたちは塔に飛来した。


「ギラソル公、ベルシエラのところへ。いちばん魔法が必要でしょうから」


 巡視隊長が屋上の様子を観察しながら言った。ベルシエラのところは被害者の救出作業だ。今までは単独で行っていた。ヴィセンテなら手助けが出来るだろう。


「そうだね。そうさせてもらうよ」


 ヴィセンテも賛同した。



「ここにはガヴェン、フランツ、エルナンさんの3人を置いていこう」

「えっ、隊長、巡視隊の魔法使いはどうするんですか」


 ガヴェンが驚いて聞いた。


「塔にはカチア様も到着済みだし、王国派の魔法使いたちも共闘していると言うではないか」

「そりゃそうですけど、連携ってもんが」

「魔物にとどめを刺せるのは魔法使いだけなんだ。無人部分の破壊を速やかに終わらせて、交戦区域で合流するように。以上!」

「はあ、仕方がない。分かりましたよ」


 ガヴェンは戯けた垂れ目で隊長を見た後、渋々命令に従った。ヴィセンテは塔の外側から一階まで降りてゆく。隊長は残りの巡視隊員とギラソル領の騎士2名、そしてディエゴを引き連れて屋上の真ん中辺りに待機した。



「下りる。ガヴェン、穴開けてくれ」

「へいへい、お安い御用です」


 ガヴェンは気取った仕草で手袋を片方外す。外した手袋はベルトに挟んで、指輪に嵌った赤い石に口付けた。光は溢れて岩の魔物が消えてゆく。ベルシエラの三分の一程度の威力だが、飛竜の尻尾よりは効率が良い。


 無事階下への穴が空くと、下からカチアが見上げて来た。隊長は軽く手を挙げて挨拶をする。その後、カチアのいる3階まで降りて行った。ガヴェンが上から覗いていると、魔法使いを連れているカチア隊が塔の外側に出た。外から魔法、内では飛竜に乗ってのヒットアンドアウェイを選んだようである。


お読みくださりありがとうございます

続きます


閑話

月明かり


魔法物語に欠かせない演出といえば、月夜のシーン

ロマンスでも戦場でも、月夜の情景はよく出てきます


満月の明るさは実際どのくらいなのでしょうか

ウェザーニュースのコラムによれば、満月の光は0.25lx

月光写真家石川賢治さんを取り上げた記事では、太陽光の465,000分の1と紹介されております


読書をするには暗すぎる

けれども色が分からないほどでもない

特に白はかなりくっきりと見えるようです


他の色はどうでしょうか。

街灯のない道で夜桜を見ると、青みがかった神秘的な色に見えます。日本画家には満月と夜桜を描いたものも少なくありません。

ですが、案外満月光だけをテーマにした名作は少ないようです。曖昧で儚い物を愛する日本人の感性が生み出した美なのでしょう。


例えば菱田春草筆「夜桜」は朧月夜ということもあり、白く滲んだような姿で桜の花が描かれております。

横山大観の屏風絵「夜桜」は篝火の風景なので単純な満月光ではありません。

森山観月の「三日月夜桜」は、三日月ですが月光に浮かび上がるほとんど白とも言える薄紅の桜花が美しい

東山魁夷「花明かり」は満月ですがやはり朧月夜、この作品は白よりも桜色が強く描かれております


花色は光源の色だけではなく、桜の品種によっても変わりますから、一概に満月夜桜は何色、とは言えません

ですが、どの絵を見ても周囲の色と違った、ぼんやりと浮かび上がる白または桜色が表現されています

やはり満月光でも、ある程度色の見分けが付くということでしょう


参照


ウェザーニュース「満月の明るさって、どのくらい?」(最終閲覧2024/4/7 19:25)

https://weathernews.jp/s/topics/201809/200105/amp.html


サライ.jp

「世界でただ一人の月光写真家・石川賢治さん新刊『月夜の晩に』発売記念イベント開催!」

(最終閲覧2024/4/7 19:31)

https://serai.jp/kajin/1127876

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ