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貴方は私が読んだ人  作者: 黒森 冬炎
第二章 夢の貴方を救いたい
21/247

21 病気を治す手がかり

 隊長は、思い当たる点を挙げる。


「参考になるかはわからないが、先代ご夫婦は歴代の中でも発病が遅かったんだ。世代を経て体質が変わってきたのかと、皆期待していたのだがな」

「エンリケ様だけいまだご健勝なのは、何か理由がありそうです」


 ベルシエラは重ねて言った。皆も同じことを考えているようだ。


「他の直系の方々と違う点はございませんか?」


 ベルシエラの質問に、隊長はしばし目を閉じて記憶を探っていた。やがてゆっくりと目を開く。


「そういえば、むしろ幼い頃は真っ先に発病して、分家に預けられたと聞いたことがある」

「分家に?」


 ベルシエラは、謎が解明できる期待に胸を弾ませた。



「おお、そうだった。ベルシエラに賜ったルシア・ヒメネス、その方が起こした元ヒメネスのセルバンテス分家だ」


 ベルシエラは、かなり重要な手掛かりを得たように感じた。


「元ヒメネスのセルバンテス分家には、病気を治す手掛かりがあるかもしれませんね」


 勢い込んで今にも飛び出しそうなベルシエラを、隊長が片手で制する。


「まあ待て、ベルシエラ。まずは、国王陛下からのお沙汰をお待ち申し上げなければならぬぞ」

「ああ、そうでした」


 今のところ、結婚せよとしか言われていない。詳しい時期も条件も不明だ。森番の娘を突然歴史ある大貴族に嫁がせるのは、いくらなんでも乱暴なことだ。おそらくは、それなりの教育を施してくれるのだろう。



 はっきりと覚えているわけではないが、こうした一連の情報は、小説にはなかったことだ。


(森番や巡視隊なんて、そもそも登場してないし)


 第一部で妻の遺体が発見され、第二部で主人公ヴィセンテが調査をする。第三部ではいよいよ叔父を追い詰めて復讐を果たし、ヴィセンテが絶命する。


(だけど、それだけなのかしら)


 主人公はヴィセンテである。三人称で語りは進むが、主にヴィセンテの行動や心情に焦点が当たるのは当然だ。妻は突然王命で嫁いできた厄介者として初登場する。第二部で明かされる亡き妻についての情報も、もっぱらギラソル領に来てからのことだ。


(なんか、すっきりしないのよねぇ)


 勢いよく扉を閉めすぎて、反動で隙間が開いてしまったような、嫌ぁな違和感が残るのだ。



「デイム・ルシア・ヒメネスの記録を探して見ましょうか?」


 洒落者のガヴェンが申し出た。


女卿(デイム)?」


 ベルシエラは意外に思った。


「あれ?ルシア・ヒメネス様って、騎士なんですか?魔法使いじゃなかったっけ?」

「ルシア・ヒメネスは特別な方だったんだ」

「どんなところが?」


 ガヴェンの話に、皆が注目する。隊長もよく知らない逸話のようだ。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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