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貴方は私が読んだ人  作者: 黒森 冬炎
第十一章 魔法使いの末裔たち

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208/247

208 ベルシエラは突入の前に報告する

 ベルシエラは閃光が漏れて来た場所をまじまじと見た。そこに孔はなく、岩の魔物がうねうねと波打っている。


「さっきの光と岩の魔物の魔法は、性質が違うわね」

「はい、奥方様。光は黒い魔法ではありませんでした」


 カチアが答える。ベルシエラは続けて尋ねた。


「てことは、味方って可能性もあるのね?」

「そうですね。危険を犯して味方の存在を告げてくれたのかも知れません」



 飛竜が揃うと、ベルシエラは皆を壁から遠ざけた。


(エンツォ。ヒメネス邸は城砦だったわ)

(うわぁ、古い建物だからお城だとは思ったけど、砦かぁ)


 ヴィセンテは心配そうに言葉を返す。


(しかも建材は魔物よ)

(えっ、ベルシエラ?今、さらっと恐ろしいこと言わなかった?)


 ヴィセンテがギョッとする。今すぐにでもこちらへ飛んで来そうな気配だ。


(心配しないで。カチアとアイラがいるから)

(そりゃ、魔物討伐隊員なら対処の仕方は分かるだろうけど、お城全体が魔物で出来てるんじゃあ、12名は少なすぎるんじゃないの?)

(危なそうなら一旦退くわよ)

(本当にすぐ逃げるんだよ?シエリータ)


 ヒメネス海岸の洞窟では、奇襲に遭って海へと流された。ほんの数日前の話である。ヴィセンテが安心出来ないのは道理だ。



(エンツォ、魔法騎馬隊の荷物は調べた?)

(ああ、うん)

(見慣れない魔物は載せてなかったかしら)

(いや、食糧や武器の替えが積んであった)


 ベルシエラは安堵する。同時に、魔物の情報が得られず落胆もした。魔法騎馬隊の荷物に含まれていなかったからと言って、ヒメネス領に未知の魔物がいないとは限らないのだ。


(ただ、食糧の分析は終わってないんだ)

(魔物の毒が入っていたり、食糧に擬態した魔物がいたり、可能性は色々あるわね)

(そうなんだよね。僕は実物を見てないんだけど、杖神様とお母様が何か感じ取ってるらしいんだ)

(油断は禁物よ)


 今度はベルシエラが城に飛んで行きたくなった。


(シエリータ、こっちは大丈夫だから。黄金の太陽城の様子に気を取られて、不意打ちに遭わないか心配だよ)

(そうね。みんなの足を引っ張らないようにしないとね)

(頑張りすぎてもダメだよ?)

(エンツォこそ)


 互いを思い遣る心は募って行く。相手の安否が気になって仕方がないのだ。それは気を散らす原因にもなり得る。


 無事でいるのは相手のためだ。何かあったら相手に辛い思いをさせてしまう。ヴィセンテは魔物の毒で家族を暗殺されている。幼い日に両親と弟たちを見送った。つい昨日までは、自分自身も棺桶に片足を突っ込んでいる状態だった。


 ベルシエラは逆に、自分が熱中症で美空としての生を終えた。一周目ではエンリケ叔父に撲殺されている。ヴィセンテの慟哭も目撃した。


 先立つ心苦しさと先立たれる悲しみは、ふたりとも良く知っている。それだけは避けたかった。互いの為に怪我なく居られるよう、夫婦はそれぞれに気を引き締めた。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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― 新着の感想 ―
この夫婦の互いを想いあってるのが伝わってくる感じ、本当に素敵な物語。 テンポも良いし、話にどんどん惹き込まれる!!
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