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貴方は私が読んだ人  作者: 黒森 冬炎
第十一章 魔法使いの末裔たち

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207 一筋の閃光

 投影が終わる。太陽は水平線へと降りて行く。ヒメネス城砦に人の気配はなかった。


「もうすぐ粘液の魔物が出る時間ね」


 ベルシエラは気を引き締めた。


「どうします?入りますか?」


 カチアがベルシエラに指示を仰いだ。


「入りましょう。私の魔法で包めば、岩の魔物に呑み込まれることはないと思うわ」



 アルトゥールは鋭い目つきで城砦を見上げる。


「我々が偵察して参りましょう。あまりにも人の気配がなさすぎる」


 相手は魔物を積み上げて築いた城の中で暮らしてきた者共だ。他の魔物や魔法の罠が仕掛けてあるに違いない。気配を隠す魔法も幾重にもかけてありそうだった。


 アイラの思い出見える君3号は、場所の記憶を映し出す。ベルシエラたちが立っている場所からは、城の内部の記憶を映すことが出来ない。


「いい考えだと思います」


 カチアが腕を組んで頷いた。


「空から見て下さると助かるわ」


 ベルシエラも賛同する。魔物がいた時の為に、知識が豊富なカチアがアルトゥールに乗せてもらうことになった。



 城砦に空いた小さな孔を警戒しながら、アルトゥールとカチアはヒメネス城砦をぐるりと周って行く。ベルシエラたちは固唾を飲んで見守っていた。


 裏手も偵察して飛竜が戻って来た時、壁の一部から閃光が走った。


「あっ」


 ベルシエラは叫ぶと同時に跳び上がる。


「みんなはもう少しそこにいて」


 続こうとするふたりの飛竜騎士を押し留め、ベルシエラはひとり炎を纏ってアルトゥールに近づく。



 閃光は一瞬だった。黒い魔物の壁から一筋光って空を横切った。


「クライン殿、カチア様、お怪我はありませんか?」

「大丈夫です」

「攻撃ではありませんでした」


 上空のふたりは落ち着いていた。


「じゃあ、威嚇?」


 ベルシエラは警戒を解かない。


「いえ、害意は無かったんです」

「むしろ信号のような気がします」

「侵入者を知らせるためでしょうか」

「そうかも知れませんね」



 アルトゥールは軽く尻尾を揺らして、地上の部下に合図を送る。


「ここで待っているのは危険です。いっそ窓から乗り込みましょう」

「えっ、でも人が潜れる大きさじゃないわよ」

「どのみち壁は魔物でしょう?」


 アルトゥールは合理的な提案をした。


「入れる大きさに窓を広げても構わないと思いませんか?」

「えっ、そうね」


 ベルシエラは一瞬たじろいだが、それは美空の感覚である。いくら壁が魔物で作られていても、人様の邸宅を壊すことに抵抗があったのだ。


「そうするのが良さそうですね」


 カチアは力強く頷くと、懐から本を取り出した。プフォルツ魔法侯爵家の魔法媒体である。


 合図を受けた地上の飛竜は、3人と4人に分けてギラソル領の騎士と魔法使いを乗せて上昇する。


「カチア様、外にも待機させますか?」


 ベルシエラの問いかけには、カチアもアルトゥールも否定的だった。洞窟の時にも皆で移動したのだ。その上、まもなく蚊柱のような魔物が海から上がって来る。人数も少ないことだし、ひと塊りで行動する方が安全だろうという判断だった。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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