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貴方は私が読んだ人  作者: 黒森 冬炎
第十章 黒い魔法使いたち

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189 ヒメネス領の叛乱分子

 魔法騎馬隊は白ずくめである。馬にも白い布を被せていた。雪に紛れるつもりだったのだろうが、既に気づかれている。魔法騎馬隊の側からも飛竜に乗った一団が見えているのだ。彼らは最早隠れようともしなかった。


「旧領主?ギラソル領の海岸地区は元々セルバンテス家が領主でしたよね?」


 騎士の1人が聞いて来た。


「ヒメネス領は元々ギラソル領の一部だったけど、そこには渡来人が海を超えてやってくる港もあって」


 エルグランデ建国当時からギラソル領と定められた地域だ。だが、地域住民たちの中にはそれを認めない者がいた。彼等のリーダーが騎士としてセルバンテス家に仕えることになっても、従属をよしとはしなかった。



「狂信的な民族主義者たちにとっては、メガロ大陸原住民と手を組んで建国したエルグランデ王国は面白くなかったのよね」


 ヒメネス領は渡来人の作った港湾都市だったのである。彼らはかつて海の向こうで飢饉にあった。再興を諦めた領主は、領民を従えてメガロ大陸にやって来た。そのため、彼らは救世の領主を熱狂的に支持していた。子孫にも語り継ぐほどだった。


 この話は、黄金の太陽城にある書庫で見つけた地域史に記録されていた。


「渡来人に魔法は使えないから、魔物がうろつくメガロ大陸で生き延びるのは難しいわ。なんとか血を取り入れたり魔法使いを囲い込んだりして、力を蓄えてきたんでしょうね」



 断片的な記録を見る限り、ルシアの叔父マテオ・ヒメネスはまともな男だった。ヒメネス港のリーダーも、本来は建国の祖レウヴァやレオヴィヒルドに友好的だった。だからこそ、ギラソル領の魔法使いレウヴァに騎士として忠誠を誓ったのだ。


「ルシアの母ガブリエラが旧領主主義者と手を組んだんだと思うわ」


 ルシアに魔法使いの血が発現したことにより、独立から乗っ取りへと舵を切ったのだろう。奇妙な果実を手に入れたことも陰謀が始まる一因となったに違いない。


「彼等は元々、エルグランデ王国が気に入らないのよ。魔物の数をコントロールできる方法を見つけたなら、一度メガロ大陸をまっさらにして、自分たちだけのものにしようと企んでるのかも知れないわね」



 旧紋章を目にするまでは、そのことに思い至らなかった。古い騎士の一族である彼等が何故、森を魔物で埋め尽くそうとしたのかが分からなかった。一族のうちで狂的な勢力が領主一族を取り込んだとは、思い至らなかったのだ。


 魔物にギラソル領が埋め尽くされたなら、自分たちも死滅するだろう。そうまでしてセルバンテスを壊滅させたいほどの恨みが見当たらなかった。


 ベルシエラは、砦の地下では悠然と作業員が働いているのを目撃した。作業員たちは魔物の増殖に影響を受けないでいた。リスクが無いのなら、メガロ大陸を奪い取る行動にも納得ができる。



 ベルシエラはここまでの推論をヴィセンテに伝えた。


(エンツォ。ヒメネスにもしまともな人が残ってたら、どうにかして保護したいんだけど)

(それはそうだけど、今は魔法騎馬隊の捕縛だけにしておこうよ)


 ヴィセンテは、またベルシエラがひとりで解決しようとするのを警戒した。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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