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貴方は私が読んだ人  作者: 黒森 冬炎
第十章 黒い魔法使いたち

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177 ヴィセンテは花蜜茶の効能に驚く

 ヴィセンテを寝床に戻すと、ベルシエラは腰の水筒を外す。中には、クライン領で分けてもらった浄化の液体、花蜜茶が入っている。


「エンツォ、もう正面からエンリケとぶつかってみない?」


 水筒の中で花蜜茶がチャプンと音を立てる。


「うん。ここまで来たら、僕も全力でお城を守りたいからね。水薬、完全にやめてみるよ」

「ふふ、エンツォ、よく言ったわ!」


 ベルシエラの眼がきらりと光る。ヴィセンテはベッドの上で若干後ろにずり下がる。



「えっ、何?何か企んでない?」

「やあねぇ、企むなんて。エンツォにとって良い物よ?」


 ベルシエラは水筒をずいっと前に突き出した。


「それは何?薬?」

「花蜜茶よ!浄化と体力回復の効果があるの」


 ヴィセンテはそれを聞いてとても驚いた。


「ええっ、そんな貴重な物、一体どうやって手に入れたの?」


 同時にベルシエラが無茶をしたのではないか、と心配もした。


「クライン領主様にいただいたのよ」

「そうだったの。早く教えてくれたら、ブラン殿に運んでいただいた挨拶状に、お礼を書き添えられたのに」

「ごめんなさい。昨日は捕縛とか編成とか沢山のことがあって、伝えるタイミングが掴めなかったのよ」

「仕方ないか。ゆうべは、色々な事が起きたからねぇ」


 ヴィセンテも昨日体験した慌ただしい晩を思い返して納得した。



「ヒメネス領で見つけた植物の魔物について質問は書いたけど、まだその手紙を送る事も出来てないし」

「ああ、それもあったねぇ」


 王宮への報告として飛竜騎士に配達を頼むつもりだったが、昨夜から今朝にかけての状況はそれを許さなかった。人員が足りないのだ。


 気がかりは他にも残されていた。


「麓の森にある村はどうなったかしら」

「黒髪の戦士たちが、守ってくれていたら、良いんだけど」

「巡視隊も我武者羅に魔物と戦っていたから、どこをどう通ったのかも覚えてないって言ってたわね」

「そうだね。人は見かけなかったって、ことだけど、村に立ち寄ったとは、言ってなかった」

「村が壊滅したのか、元々村のあるところには行かなかったのか、どっちなのかしらね」


 後者であることを祈るばかりだ。



 ヴィセンテはベルシエラから受け取った花蜜茶を飲み下す。弱っているのでゆっくりと。少しずつ飲みながらぽつぽつ話を続ける。


「シエリータは、いつ発つの?」

「出来るだけ早く。お城のことは杖神様もいらっしゃることだし、エンツォが元気になれば困ること無いでしょ?」

「うん。心の会話で、相談も出来るしね」


 捕らえたエンリケの妻とテレサの尋問と見張りはこれからだ。エンリケ派の動向にも注意を払わなければならない。飛竜騎士たちと共に出陣した魔法使い達は、中立派から味方に傾いた者たちだ。エンリケ派に擬態していたヴィセンテ派も含まれていた。城にはエンリケ派が多く残っている。


「ユリウスにも話を聞きたいけど、まだ無理かな」

「そうだね。ユリウスの回復を待っていたら時間がだいぶ経っちゃいそうだよ」


 花蜜茶を飲み干す頃には、ヴィセンテの息継ぎは健康な人のようになっていた。


「このお茶凄いねぇ。流石に筋肉は戻らなかったけど」


 そこは地道な努力が必要なようだった。当分の間は歩行訓練を続けることになる。トムの支えがまだ欠かせないだろう。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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