表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴方は私が読んだ人  作者: 黒森 冬炎
第九章 一匹たりとも魔物を逃すな

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

161/247

161 雪龍山脈を越えて

 アルトゥールの姿がゆらめいて、巨大な純白の龍が現れた。彼はそのまま離陸した。広い岩棚に立っていた飛竜騎士団員6名もアルトゥールに倣って次々と変身を遂げた。翼竜はクライン一族そのものだったのだ。


(飛竜に乗る騎龍騎士団じゃなくて、自分たちが飛竜の騎士団てこと?騎士というからには本来騎馬部隊なのかしら?)


 ベルシエラは、この場ではどうでもいいことが気になった。目の前で、人間が馬より大きな飛竜に姿を変えたのだ。魔法のある世界とはいえ、変身は一周目でも見たことがない。驚きのあまり当面知らなくても良い事に考えを向けてしまった。



 6人の飛竜騎士たちがアルトゥールと違ったのは、ベルシエラたちをひとりずつ乗せてくれたことだ。翼竜騎士は1人ずつベルシエラたちに声をかけ、崖の先端まで行って詠唱した。



「ラウール・ブランです。黄金の太陽城までお送り致します、セルバンテス夫人。よろしくお願い致します」


 銀髪の青年がベルシエラに名乗る。礼儀正しく腰を折り頭を下げた。アルトゥールとは雲泥の差だ。


「よろしくお願いします」


 ベルシエラは丁寧にお辞儀をした。騎士団員たちは少し驚いた顔をした。ベルシエラは彼らにとって、魔法使いとしてもエルグランデ国民としても格上の存在である。美空だった頃の感覚で挨拶を返してしまい、ベルシエラは少し後悔した。


 先に浮かんでいたアルトゥールは、意外にも見下してはこなかった。彼はただ厄介ごとに巻き込まれて不快なだけらしい。



 イネスたちが飛竜に乗り込む間、ヴィセンテに心の会話を送る。


(エンツォ、起きてる?まだ夕方じゃないけど)


 反応はなかった。


(寝てるのかしら)


 ヴィセンテも連日心配事だらけで疲れているのだろう。病弱な身で、毎晩対策会議をしているのだ。気を張っているだけでなく、単純に体力も使っている。薄い麦粥だけでは持たないだろうに、身体がまだそれ以上は受け付けないのだ。



 ベルシエラたちの腰には、シャルル翁が持たせてくれた革袋がある。中には魔物の毒を消すクラインの花蜜茶が入っているのだ。


(この花蜜茶を飲めば、きっと良くなるわ)


 飛竜騎士ラウール・ブランの背中に乗ると、ベルシエラは炎の防壁をめぐらせた。飛竜騎士に自分の魔法がどんな影響を与えるのか解らないので、自分たちだけにかける。


「まだ若い方におぶっていただく歳でもないのに」

「ご厄介かけます」


 イネスとフィリパはしきりに恐縮している。しかし、男性3人からは高揚が見てとれた。


「これはなんともかっこいいですね」

「おお!勇壮ですねえ」


 騎士たちは素直に感心する。


「変身魔法かあ!最高にクールじゃないですか」


 エルナンは見習いとはいえ同じ魔法使いだ。飛竜のかっこよさではなく、変身そのものに心を惹かれたようである。



 ともあれ皆は飛び立った。クライン領はギラソル領の北東にある。ふたつの土地を隔てるのは、雪龍山脈という山々だ。飛竜の力強い飛行で進めば、お隣の領までなどひとっ飛びである。


 城のある森の上をぐるりと旋回し、海と逆方面へ飛ぶ。雪化粧の峰々を越えると、セルバンテスの城カステリャ・デル・ソル・ドラドが見えて来た。


「おい、なんだあれは?」


 先頭のアルトゥールが急に身を固くする。


お読みくださりありがとうございます

続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ