表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴方は私が読んだ人  作者: 黒森 冬炎
第九章 一匹たりとも魔物を逃すな

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

152/247

152 ベルシエラは目を覚ます

 激流に翻弄されて、一同は次々に気絶した。どうにか皆をひとつの炎球に入れたのを最後に、ベルシエラも意識を手放した。皆を溺死から救ったものの、残念ながら乾かすことまでは出来なかった。


 ベルシエラが次に気がついたのは、遠くからの呼び声によるものだった。最初は暗闇に何か判別出来ない音がしていた。それからぼんやりと視界が開け、人声もはっきりと聞こえた。


(シエリータ!)

(エンツォ?)


 人声と思ったものは、ヴィセンテからの心の会話だった。



 ヴィセンテの憔悴しきった様子に気を取られて、ベルシエラは今いる場所が目に入らない。


(ああ、よかった。目が覚めたんだね!)

(確かに気が遠くなってたわ。心配かけてごめんなさい)

(生きた心地がしなかったよ!)


 ヴィセンテは恐らく、毎日の会話をしようとしてベルシエラに話しかけたのだろう。


(もしかして、しばらく返事がなかった?)

(なかったなんてもんじゃないよ、シエリータ。3日も心の声は聞こえないし、調査隊の消息も届かなくて)

(何ですって?調査隊が行方不明なの?)


 ベルシエラはがばと跳ね起きた。その時初めて、自分が柔らかなベッドで寝ていたことに気がついた。だが、それは後回しにする。



 カルロスには魔法の炎で危険を知らせた。その後、エンリケ派と争いになったのだろう。しかし、エンリケ派も戻っていないのは意外だった。


(ヒメネス領に残ってるのか、それとも黄金の太陽城の麓にある森で魔物にやられたのか)


 ベルシエラの気持ちが重くなる。


(分からない。全く足取りがつかめていないんだ。ヒメネス領に伝令を送るゆとりもないし)


 森の状況もかなり悪いようだ。


(お城は?エンツォは大丈夫なの?)

(うん。首都から援軍が来てくれたよ。最初に到着した人たちが森の様子を見て、魔物討伐の本隊を送ってくれることになった)

(本隊?フランツのお父様たちが?)


 それは朗報だった。



 フランツの父プフォルツ魔法公爵は魔物討伐隊の隊長である。こと魔物討伐に関しては、当代随一の人物だ。この人自らが率いる討伐隊の本隊が、増殖した棘の魔物に苦しむギラソル領に来てくれるという。


(頼もしい助けだわ)

(うん。もう少しだけ持ち堪えれば、なんとか逆転出来そうなんだ)

(持ち堪えられそうなのね?)

(そりゃ、希望が見えたら力も出るからね)


 エンリケ派に掌握された砦は当てにならない。巡視隊の仲間たちが唯一の防衛勢だ。


(魔物は?まだ増えてる?少しは減った?)

(増えてる。だけど、森で食い止めてはいるんだ)


 巡視隊の生存能力は、やはりずば抜けていた。


(援軍はどうしちゃったの?全員で本隊呼びに帰っちゃった?)

(うん、帰ったよ。もともと3人の先遣隊というか斥候でね)

(そんな悠長な!ソフィア王女様の報告もあったでしょうに)

(王女様からの親書には、謝罪と一緒にすごく丁寧な言葉で騎士団の甘さが書いてあったよ)


 考えてみれば、無理もない話だ。森で急に襲われて吹雪にまで遭ったのだ。実際より大きな被害だと感じてもおかしくはない。援軍を出す騎士団の上層部は相手にしなかったのだろう。ソフィア王女の報告だった為、建前上調査が必要で3人が派遣されたのだ。


お読みくださりありがとうございます

続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ