表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴方は私が読んだ人  作者: 黒森 冬炎
第六章 龍と魔物と人間と

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/247

112 砦の噂話



 ベルシエラは、自分のルーツを知るちょうど良い機会だと思った。


「私、小さな頃に春の狩場になる森で倒れていたらしいんです。この石だけが手掛かりで」

「ああ、なるほどそういう訳ですか」


 フェルナンドは納得してにっこり笑う。


「とても貴重な石ですから、もしかして、代々受け継がれた髪飾りかもしれませんね」

「ファージョン魔法公爵家に何か記録が残っているかしら?」

「ファージョンは語り部の一族だからな。伝承や伝来の品物の数は膨大だろう」

「杖神様も、そう思います?」

「今一度、ファージョン家をあたってみるのも良いのではないか」

「ええ、手紙を書いてみます」


 杖神様は少し考えるそぶりをみせて目を瞑る。ややあって目を開くと助言をしてくれた。


「手紙に詳しくは書かない方が良いぞ?」

「そうですね。見張られておりますから」


 ベルシエラも同意した。



「薬の件については、このくらいでしょうか」

「そうね。あとは郵便室を確かめてからね」

「はい。そこはお願い致します」

「ええ、任せて」


 一旦話を切ると、ベルシエラはまた幽霊たちを見回した。


「皆さんの中で、いちばん最近に幽霊になった方はどなたでしょうか」

「俺達です!」


 幽霊にしては元気の良い返事で、3人組が飛び降りてきた。茎付きのギラソル二輪を交差させたマークを鎧につけている。これはギラソル領の黄金の太陽騎士団のエンブレムだ。鎧はひしゃげて血の跡があり、髪と顔には焦げ跡もある。


「ひっ、何があったんですか?」


 明るい声と裏腹に凄惨な姿を見せた3人組に、ベルシエラは短く悲鳴を上げた。ノコギリ鳥やオレンジ色の獣を駆除した経験はある。だが、血塗れの騎士は初めて見たのだ。



 3人組は、小づきあいながら手短に語る。


「俺達、下の砦に詰めてたんすけど」


 先ずは、兜から薄茶色の髪が覗くヒョロリと長身(ノッポ)な男が口を切る。ずいぶんと庶民的な語り口だった。黄金の太陽騎士団には農民や狩人の出身者もいるのだ。


「たまに魔物が出ると退治に出かけんでさぁ」


 続けたのは、きょろりと愛嬌のある若草色の眼をした小柄な髭男だ。


「あの日も魔物が出たってんで、仲間と迎え撃ちに行ったんすよ」


 3番手は、声が低い小太り(コデブ)の男である。そしてまた、ノッポに戻る。


「けど一緒に行った魔法使い連中が、妙な動きをしてたんでさぁ」

「妙な動き?」


 ベルシエラが聞くと、3人はピッタリ同じタイミングで頷いた。


お読みくださりありがとうございます

続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ