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貴方は私が読んだ人  作者: 黒森 冬炎
第六章 龍と魔物と人間と
104/247

104 ベルシエラたちは調査の準備をする

 ベルシエラはヴィセンテの状況を聞いてみることにした。


(お毒味役がお役目中に倒れたことはあった?)

(お毒見役は何ともなかった。摂取量が少ないからなのか、あるいは)

(解毒剤を飲んでるか、ね)

「きっとそうよ」

(毒味で安心させて、弱らせる毒やあの怪しい水薬を食事に入れているんだわ)


 ヴィセンテにとっては辛い現実だ。従者のトムはお毒味役を兼ねている。彼はヴィセンテが生まれた時に選ばれた、(にい)やであり付人なのである。


(トム。信頼していたのに)

「けどまだ証拠はないわね」


 ベルシエラは悔しそうにギュッと目を瞑った。ヴィセンテは薄い麦粥の入った銀椀に目を落とす。



 よしんば証拠があったとしても、現在この城の実権を握っているのはエンリケ一派だ。こちらが何かを掴んだと知れば、一周目のベルシエラにしたように毒や呪いで満たした部屋に監禁するかもしれない。


 そう考えた4人は、これからの計画を急ぐことにした。


(城内の勢力図を塗り替えるまでは、エンリケに警戒されないようにしなくちゃ)

(そうだね。まずは、誰が味方なのか調べないと)


 ベルシエラはテーブルナイフを操りながら、ヴィセンテを見た。心の整理はつかないようだが、エンリケ叔父の疑わしさを受け入れてはいるようだ。


(エンツォでも知らないの?)

(僕、寝たきりみたいなものだったからねぇ。たまに調子がいいとお散歩に出て、その時親切な人とそうでない人はいたんだけども)

(決め手にはならないかぁ)



 小説「愛をくれた貴方のために」の第二部で明かされたヴィセンテ派は分かっている。だが個人名まで登場したのは数人だけだ。一周目のベルシエラが、空気扱いなのをいいことに通りすがりのお喋りを聞いて判断したヴィセンテ派もいる。


 その人々と小説のヴィセンテ派で一致する人は2人。この2人は、高確率で今回も味方になってくれそうだ。


(1人目が帳簿係のフェルナンド。2人目は正確には中立派の郵便係アレホ)


 郵便係は無口なので情報を引き出しにくそうだ。一周目のベルシエラに味方はしなかった。だが、ベルシエラ宛の郵便物を廃棄処分しなかったのだ。放置しただけである。誰かが盗もうが、捨てようが、ベルシエラ本人が回収しようが、お構いなしに。



(まずはフェルナンドね)


 フェルナンドはセルバンテス家の夫人予算を割り当ててはくれなかった。しかし、王宮から下腸された婚姻支度金は自由に引き出させてくれたのである。


 一周目のベルシエラは思いつかなかったが、食費を要求すれば別途くれたかもしれない。あるいは予算は組まれていて、各部署が横領していたのかもしれない。そのあたりは、今後の調査で明らかになるだろう。


 何よりも今回は、現当主その人が味方なのである。一周目より遥かに有利だ。



 もう1人、ベルシエラが飢えるのを見兼ねて助けてくれたテレサ。一周目でも今回でも、ヴィセンテや先代を褒めているところを見かけた。彼女の影響力は未知数である。立場を悪くしないと約束した手前、テレサに勢力図を聞くのは憚られる。


 その点、立場も強い財務担当者なら仲間として申し分がないだろう。


お読みくださりありがとうございます

続きます

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