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6.ロンドーテ三大突起戦力・ブリトー

 ブリトーは、ギリギリ視認できる速度で、次々とバッキーを切り裂いていく。他の兵士は、ショットガンを使う者、剣を使う者、それぞれの得意な武装で、一体一体、確実に獲物を仕留める。

 護衛軍は精鋭部隊だ。エンジェルベルトは理解した。ブリトーは自分たちだけで対処できるか分からないと不安がっていたが、とんだ謙遜だった。


「私、いります?」


 エンジェルベルトは、メリケンサックをはめ拳でバッキーを殴り倒すウェインに尋ねた。顔にはさんさんと血を浴びている。


「お前どころか、ブリトー軍長がいれば私たちさえいらないかもな。フンッ!」


 また一体バッキーが倒れる。


「ブリトー軍長がお前を招集した真意は、説得だ」

「説得?」

「国の上層部には、未だ魔法使いとの協力関係に反対している者もいる。ブリトー軍長は、お前が国にとって有益な存在だと知らしめるための絶好の機会だと、この機を捉えている」


 なるほど。そういうことだったのだ。つくづくブリトーは私のことが好きだな。エンジェルベルトは自分のすべきことが明確になった。


「なら私も頑張らなくちゃね」


 エンジェルベルトは地面をコンコンと蹴り、踏ん張れる固さであることを確認する。


「みんな、私の前には立たないで!」


 大声を出し、兵士を避難させる。右手の平をバッキーの大群に向けた。


「えーと、なんか技名とか考えときゃよかったな。まあいいや。マシンガンッ!!」


 ドドドドドド!


 ピンポン球ほどの、大量の鋭利な岩の欠片が放出される。音速より速く放たれたその岩の弾は、バッキーの体を貫通する威力だった。


「ギャウウウン」


 バタバタと倒れていく獣たち。少し心は痛むが、害獣指定されているのであれば致し方ないと自分に言い聞かせる。


「エンジェルベルトたん……」


 いつの間にかエンジェルベルトの背後にいたブリトーが、恍惚に満ちた声で話しかけてきた。


「小生はやると思っていたよ。エンジェルベルトたんは強さと美貌を兼ね備えた、最強の美少女戦士だ」


 美少女戦士……悪くないな。エンジェルベルトの口元が少し緩む。


「うわああああ」


 その時、ブリトーのさらに背後から、兵士の悲痛な叫びが聞こえた。振り返ると、通常のバッキーの五倍はあろう巨獣が、兵士を食いちぎっていた。


「なんなんだあれは!」

「近付くな! 体勢を立て直すぞ!」


 見たことのない大きさのバッキーの出現に慌てる兵士たち。ブリトーが大きく息を吸った。


「小生以外の兵士は退却! 全員小生の後ろまで下がれ!!!」


 ブリトーは体を屈ませ、戦闘態勢に入っている。


 ガルルルルル。巨大バッキーの赤く染まった牙が光る。


「エンジェルベルトたん、小生、キモいかもしれないけど、それが小生の全てじゃない。色んな側面があって、人間なんだ。見ててね。エンジェルベルトたん」


 やだなに。かっこいい。エンジェルベルトはつい顔を赤らめる。


富岳一閃ふがくいっせん


 スパパァァン。


 一瞬で獣の奥に移動したブリトーと、頭だけが宙に浮いた巨大バッキーがそこにあった。


「す、すごい……」


 エンジェルベルトの口からは思わず感嘆の声が漏れる。

 切った後しばらく動かなかったブリトーは、ふと魂が戻ってきたようにエンジェルベルトの元へ走ってきた。


「エンジェルベルトたぁぁん! どうだった!? 小生の技! かっこよかった!?」


 ああ、もう少しクールでいてくれれば、男として見れたのに。エンジェルベルトは「はいはい」と軽くいなした。




「今回の討伐任務、多少の犠牲は出たものの、無事成功ということで、はいみんな拍手!」


 王室に呼ばれた護衛軍上層部とエンジェルベルトは、賞賛の場にいた。


「ありがとうございます。メルピンは嬉しいです」

「お前は今回後方支援で、大して何もしてないだろ」


 ウェインがメルピンの頭をこつんと小突く。


「エンジェルベルト、話は聞いてるよ。能力を駆使し、存分に活躍してくれたそうじゃないか」


 上機嫌なクラウディオは笑顔でエンジェルベルトに語りかける。


「いえいえ、そんなことは。岩のマシンガンも、リカが思いついてくれたんです。リカがいなかったら、あの使い方は思いつきませんでした」

「そうかそうか。世話役につけてよかったよ。リカにも褒美を与えよう」


 クラウディオは従者に指示を出し、部屋の外へ出させた。おそらくリカの元へ向かわせたのだろう。


「そして、ブリトー、今回も君の強さをしっかりと示してくれた。ありがとう」

「ありがたきお言葉です」

「ブリトーには奨励金として、一万ソトを進呈するよ。なんでも好きなものを買っておくれ」

「いえ、貰えません」


 ブリトーは即答した。


「小生の不注意で、護衛軍に死人が出ました。不徳の致すところです。今回はお金ではなくお言葉だけで十分です」


 貰えるものは貰っとけばいいのに。エンジェルベルトは内心で呟いた。


「そうは言ってもね、活躍した人に褒美をあげないと、指揮が上がらないでしょう」

「であれば、その一万ソトは、エンジェルベルトたんに渡してあげてください」


 やだなにかっこいい!


「うーん。まあそれでもいいんだけど。エンジェルベルト、受け取ってくれる?」

「もちろん!」


 ブリトーと同じように、エンジェルベルトは即答した。

 やった! 嬉しすぎる! コスメでも買おうか。いや、まずは服か。ずっと国から支給された機能性しか取り柄のないダサい服だったからな。服を買おう。エンジェルベルトは自然と首が揺れた。


「さて、楽しい話はここまでとして」


 クラウディオの顔つきが変わる。


「ブリトー、今回の件、どう考える?」


 エンジェルベルトは、あまりの空気の一変に、口角の上がった顔を頭ごと下げて隠した。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!

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